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公的年金制度の仕組み・手続き等【20】マクロ経済スライドは年金受給者から孫・ひ孫への仕送り


 一般社団法人 企業年金・個人年金教育者協会という団体のwebサイトに公的年金保険研究会というページがあり、すばらしい内容ですので1つずつご紹介しています。

 公的年金保険研究会

 前回はこちら → 公的年金制度の仕組み・手続き等【19】低年金化を防ぐための追納と言うのは簡単だけれど

 第14回目から「公的年金制度の仕組み・手続き等」編です。
 第20回目もいつも通りいくつか抜粋して紹介しコメントを書きます。

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■公的年金制度の仕組み・手続き等
20.年金額改定の仕組み

・通常の社会経済であれば、現役世代の購買力を維持するために、企業も配慮して賃金の伸びが物価の伸びを上回るように賃金を上げる(実質賃金がプラス)。日本でも平成後半は賃金が物価の伸びを下回る逆転現象(実質賃金がマイナス)が起きているが、戦後の長い経済の中では、賃金が物価を上回っているのが通例であった。この場合には、基本どおり、年金額は物価にあわせて改定されることになる p1

・しかしながら、逆転現象が起きている社会経済のもとでは、負担する現役の賃金が実質的に下がっているのに、給付を受け取る年金受給者の年金額だけを増やすわけにはいかない。このため、賃金が物価より低い場合には、賃金の伸びにあわせて年金額を改定 することにしている p1

・賃金の実質的なマイナスが続いてきた現役に比べて、年金額が相対的に高止まりし、現役の負担と年金額のバランスが崩れてしまってきている。この結果、将来世代のための原資が減り、将来世代の給付水準も下がってしまっている。このため、令和3年度からは、現役の賃金が実質マイナスの場合には、賃金のマイナスに合わせて、年金額もマイナスすることになる p1

・世代間の支え合い・分かち合いの仕組みである公的年金保険であるから、孫やひ孫世代のために、今の年金受給者にも、現役と一緒に痛みを分かち合って頂く必要がある p2

・概ね100年間にわたるこの収入総額を、今と近い将来の年金受給世代と、その孫やひ孫との間で、どのように分配していくかという問題になっている。今の受給世代が少しでも我慢していけば、孫・ひ孫の世代により多くの原資を残せ、今の年金受給世代が先に使ってしまい、いわば「先食い」してしまえば、孫・ひ孫の世代には十分な原資を残せないことになる p4

・マクロ経済スライドの調整が行われない事態がずっと継続すると、結局のところ、孫やひ孫の世代につけを回してしまうことになる p6

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 シラバス20はA4サイズで9ページ分です。ボリュームたっぷりで難易度も高いと思います。
 結論。マクロ経済スライドとは「年金受給者から孫・ひ孫への仕送り」、これです。

 働いている人たちの収入(平均賃金)が下がれば仕送りする側の日々の生活もしんどいわけですから、仕送りを受ける側も一定がまんしてくださいという仕組みです。だって仕送りなのですから無い袖は振れません。
 しかもここで我慢してもらえた結果は将来の孫・ひ孫の受給額が下がらなくて済むということを意味します。本文では「先食い」という表現が使われています。


 高齢者いじめだ!という人は公的年金保険だけを見過ぎです。公的年金保険の老齢年金は社会保障の1つでしかありません。受給額が減ることで生活が立ち行かなくなってしまう人がいるとすれば、それは他の仕組みで保障する必要があります。現在でいえば低年金の方々に対する給付金(年金生活者支援給付金)です。これで十分かどうかはまた人それぞれ違ってきますが、カバーする仕組みはあるんです。
 繰り返しますが、公的年金保険の老齢年金だけをピンポイントで見るのではなく、社会全体の公的な保障全体で考えてほしいんです。

 そしてこれも私はいつも書くのですけれど、マクロ経済スライドによって受給額が調整されるのは高齢者(老齢年金受給者)だけではありません。障害年金・遺族年金を受け取っている人たちも対象です。若い世代も含まれます。
 なので、マクロ経済スライドのことを「高齢者から孫・ひ孫への仕送り」とは書いていません。「年金受給者から孫・ひ孫への仕送り」なんです。

 皆さま、どうぞよろしくお願いいたします。


<過去参照記事>
 ・2016年12月 痛みを分かち合う
 ・2018年12月 後者では読まれませんし、買われませんし、提案できません / 公的年金についてのまとまった記事のご紹介
 ・2019年1月 各家計に置き換えると考えやすい

 次回はシラバス21.「年金を受け取るための要件と年金額計算の仕組み(老齢・障害・遺族)」です。


公務員・私学共済の加入者が40万人を超え、加入率も9%超に! / iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入者数と比率<2021年1月末時点>


 確定拠出年金の施行状況等 厚生労働省web

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 今回の記事で書き出すiDeCo(個人型確定拠出年金)の内容は2021年1月末時点のものです。

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■まず企業型

 2020年12月末の速報値で約751.3万人です。
 企業型DCの新規加入者は3万0075人、全体では約4000人減です。差の約3.4万人が脱退者・60歳到達者と思われます。明らかに伸びが鈍化しています。


■次に個人型

 2021年1月末時点で185万0781人。今月の新規加入者は38739人。これまで全49月で上から9番目です。良い増え方です。
 なお、純増は33485人ですので差の5254名は60歳到達者・企業型DCへの移管かと思います。


 新規加入者の年単位平均(人)です。【かっこ】の数字は順位です。
 ・2017年 38197【2】計45.8万人
 ・2018年 34397【3】計41.3万人
 ・2019年 32463【5】計39.0万人
 ・2020年 34227【4】計41.1万人
 ・2021年 38739【1】→ 暫定です
 ・49月平均 34901

 新規加入者の月単位平均(人)、【かっこ】の数字は順位です。
 ・ 1月 32,849 【9】
 ・ 2月 40,812 【3】
 ・ 3月 41,688 【2】
 ・ 4月 41,932 【1】
 ・ 5月 24,311 【12】
 ・ 6月 32,570 【10】
 ・ 7月 34,879 【6】
 ・ 8月 37,466 【4】
 ・ 9月 34,546 【8】
 ・10月 35,405 【5】
 ・11月 29,025 【11】
 ・12月 34,840 【7】
 ※ 1月と6月の順位が入れ替わりました。
 ※ 2~4月は1年目の大量新規加入により平均が上がっています。


■新規加入者の内訳

 ・第1号被保険者 4123人 2.0%増
 ・第2号被保険者 24814人 2.2%増(会社員)
 ・第2号被保険者 7901人 2.0%増(公務員・私学共済)
 ・第3号被保険者 1901人 2.9%増

 先月に引き続き良い増え方です。

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■公的年金の被保険者の数
 
 2020年12月に発表された「厚生年金保険・国民年金事業の概況」令和元年度版の人数を前回2020年12月末版から使っています。

 ・第1号被保険者 約1434万人
  ※ 任意継続(約19万人)は除外しています。
  ※ 免除・猶予者はiDeCoを使えませんが含めています。
 ・第2号被保険者 約4037万人(会社員)
  ※ このうち企業型加入者が約751.4万人なので
    iDeCoを利用できるのは単純に約3285.7万人として計算しています。
 ・第2号被保険者 約 450万人(公務員・私学共済)
 ・第3号被保険者 約 820万人


■新規iDeCo加入者数/公的年金の被保険者数

 ・第1号被保険者 0.051%
 ・第2号被保険者 0.076%(会社員)
 ・第2号被保険者 0.176%(公務員・私学共済)
 ・第3号被保険者 0.023%


■iDeCo加入者数/公的年金の被保険者数

 ・第1号被保険者 1.428%
  ※ 免除・猶予者を除外すると、2.527%
 ・第2号被保険者 3.569%(会社員)
 ・第2号被保険者 9.006%(公務員・私学共済)
 ・第3号被保険者 0.830%

 免除・猶予者を除外した第1号被保険者が40人に1人、公務員・私学共済が100人に9人へ達しました。
 何度でも何回でも書きますが、加入の優先度が高いのは企業年金の導入されていない会社にお勤めの会社員であり、もっと言えば厚生年金適用になっていない第1号被保険者の給与所得者の方々です。


■iDeCo加入者の総数、185万0781人の内訳

 ・第1号被保険者 204713人
 ・第2号被保険者 1172719人(会社員)
 ・第2号被保険者 405289人(公務員・私学共済)
 ・第3号被保険者  68060人

 公務員・私学共済の加入者が40万人を超えました。
 全体のペースが上がっています。今年5~6月には200万人を突破できそうな勢いを感じます。


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 国民年金基金連合会の業務状況
 (厚生労働省のページからもリンクが張られています)

運用指図者 69万2144人(前月より+5884人)
 運用指図者には60歳到達者で受け取る手続きをしていない人も含まれています。

自動移換者 98万4596人(前月より+6235人)
 いよいよ100万人に迫ってきてしまいました。自動移換者の皆さま、ほったらかしにせずぜひ手続きを…(リンク先をご参照ください)


■2018年から開始した年単位拠出

  1月20日時点 56451人(2021年)
  12月20日時点 54917人
  11月20日時点 56220人
  10月20日時点 54903人
  9月20日時点 53305人
  8月20日時点 51447人
  7月20日時点 49658人
  6月20日時点 48253人
  5月20日時点 47024人
  4月20日時点 46155人
  3月23日時点 44907人
  2月20日時点 43264人
  1月20日時点 41147人(2020年)
  7月20日時点 31819人
  1月20日時点 21143人(2019年)
  7月20日時点 11035人
  1月22日時点  187人(2018年)

 1ヶ月で元に戻りました。前月は何だったのでしょうか。全体では3.05%の人が選んでいます。公務員・私学共済5.08%、企業年金あり会社員3.09%です。
 「よくわからないけど定期預金を選んでも所得税・住民税は減るんでしょ?」という定期預金100%で年1回拠出のスタンスである所得帯の高い方々(特に公務員・私学共済)という傾向でないことを願うばかりです。


「iDeCo+」イデコプラス(中小事業主掛金納付制度:従業員が加入するiDeCoに、企業が追加で掛金を拠出できる制度)

 2018年12月末から発表の始まっているデータです。
 2020年12月 15648人 / 2460事業主 ≒ 6.4人
 2020年11月 14901人 / 2343事業主 ≒ 6.4人
 2020年11月 14497人 / 2253事業主 ≒ 6.4人
 2020年10月 13986人 / 2157事業主 ≒ 6.5人
 2020年 9月 13124人 / 2009事業主 ≒ 6.5人
 2020年 8月 12389人 / 1850事業主 ≒ 6.5人
 2020年 7月 12119人 / 1850事業主 ≒ 6.6人
 2020年 6月 11683人 / 1785事業主 ≒ 6.5人
 2020年 5月 10600人 / 1587事業主 ≒ 6.7人
 2020年 4月 10429人 / 1569事業主 ≒ 6.7人
 2020年 3月 9586人 / 1462事業主 ≒ 6.6人
 2020年 2月 8522人 / 1306事業主 ≒ 6.5人
 2020年 1月 8132人 / 1240事業主 ≒ 6.6人
 2019年12月 7476人 / 1131事業主 ≒ 6.6人
 2019年11月 7038人 / 1049事業主 ≒ 6.7人
 2019年10月 6669人 / 967事業主 ≒ 6.9人
 2019年 9月 5748人 / 836事業主 ≒ 6.9人
 2019年 8月 4999人 / 730事業主 ≒ 6.9人
 2019年 7月 4527人 / 647事業主 ≒ 7.0人
 2019年 6月 3972人 / 567事業主 ≒ 7.0人
 2019年 5月 3516人 / 504事業主 ≒ 7.0人
 2019年 4月 3004人 / 415事業主 ≒ 7.2人
 2019年 3月 2038人 / 300事業主 ≒ 6.8人
 2019年 2月 1453人 / 232事業主 ≒ 6.3人
 2019年 1月 1287人 / 200事業主 ≒ 6.4人
 2018年12月 1077人 / 160事業主 ≒ 6.7人

 今回の純増は747人です。イデコプラスを積極的に提案しておられるのはどういった立場の専門家(金融機関)なのでしょうか。本当に不思議です。

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 現役の勤労世代が数十年先の資産形成として将来資金を積み上げていく手段の第一候補は間違いなくiDeCo(個人型確定拠出年金)です。適切に知る機会・適切に学べる場が継続的に存在することが本当にたいせつだと信じている次第です。私も地道にがんばります。

 <参照ブログカテゴリー> 確定拠出年金


 相談はもちろんいつでもお受けしていますので、ご紹介しておきます。ぜひご参照ください。
 <京極・出町FP相談> 確定拠出年金相談
 


損害保険は生命保険以上にもっとわからないことになっていないでしょうか / 2021年5月検定向けFP3級資格取得講座<第6回目>



 3(水)、京都リビング新聞カルチャー倶楽部主催2021年5月検定向け「FP3級資格取得講座」第6回目の講師を務めました。

 今回で17シーズン目(計25回目)、水曜10時20分~12時20分の115分(休憩5分)の講座で、4月下旬まで計14回の長丁場です。

 <第6回目の項目>
 リスク管理②
 ・火災保険・失火責任法と地震保険
 ・自動車保険と自賠責保険
 ・個人賠償責任保険と傷害保険・自転車保険
 ・生命保険・損害保険と税金
 ・保険契約者の保護
 ・【番外編】生命保険の実務

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 最近は地震や台風・水害などの自然災害を身近に感じる機会が増え、関心度も高まっているように思います。特に身近な火災保険・地震保険や自動車保険には実務上のチェックポイントはいくつもありますので、まずは仕組みの基本を把握することがたいせつです。

 話題の自「転」車保険は加入の義務化が進み、質問をよくいただきます。相手にケガをさせてしまったときなどを補償する個人賠償責任保険と、自分がケガをしたときの傷害保険を理解できれば複雑に感じることはなくなります。
 <過去参照コラム>京都市では平成30年4月1日から自転車に乗る場合、保険の加入が必要です。

 自分自身の加入している保険商品の内容を把握していない人は(残念ながら)少なくないと感じていますが、生命保険は熱心に提案したり見直しを勧める営業担当さんや無料相談の広告なども多いので考える機会はそれなりにあるかなと感じます。損害保険は生命保険以上にもっとわからないことになっていないでしょうか。最低限のポイントは把握しておきたいものです。

 損害保険について、これまでたくさん記事を書いています。
 <参照blogカテゴリ>損害保険
 ご参考になりましたら幸いです。


 そして、税金の面の把握もたいせつです。保険料と控除、保険金と各種税金の関係は保険商品と深く関わりますので、たいせつなポイントです。
 所得と控除の関係は4つ目の課目のタックスで、生命保険金などによる相続や贈与は6つ目の課目の相続で詳細に取り上げますので、まずはイメージをつかむところが大事です。

 皆さま、ありがとうございます。
 次回は3つめの課目、金融資産運用に入ります。
 次回もよろしくお願いします!

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 4(木)打ち合わせ1件と個別相談1件お受けします。

 ご参照ください。
 【特別対応】初回相談からSkypeでお受けできます<第2版>


「使ってもらって大丈夫ですよ」


 先月中旬の相談対応のまとめ(抜粋)です。

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 大阪某所にお住まいのKさんご夫妻が事務所へお越しくださいました。

 とあるご紹介がご縁で、住宅購入資金計画相談です。物件はほぼ確定しておられまして最後のひと押し、キャッシュフロー(CF)表の作成を依頼くださいました。
 前提として住宅ローン金利と返済期間の考え方、他の支出との優先順位の考え方、貯蓄情報の夫婦間の共有方法、ローン控除・教育費・繰上返済の考え方をお伝えしました。

 家族観は多様な時代です。家族のあり方、働き方、子どもの視点、私もさまざまに経験させていただいていると感じます。

 Kさん、奥さま、ありがとうございました!!
 引き続きよろしくお願いします!! 


 <京極・出町FP相談オフィシャルサイト> 住宅購入・住宅ローン相談
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 奈良にお住まいのSさんご夫妻の相談をオンラインでお受けしました。

 毎年の定期面談も今回で7年目です。早いものです。いわゆるリタイア後世代のご夫婦でして、お子さん家族への支援や自分たちのお金の使い方、予算立てなどを毎年資産額をチェックさせてもらいながらの対応です。

 こんな状況になってしまい、旅行好きのご夫婦は本当に残念そうです。ただ、その分ご自宅でできることに取り組まれたプチリフォームをお聞かせいただき、私もとても笑顔になれました。全体像を第三者の専門家(今回でいえば私)が客観的に把握し、「使ってもらって大丈夫ですよ」とひと声かけさせてもらうことで安心してくださっている印象です。

 Sさん、奥さま、ありがとうございました!!
 引き続きよろしくお願いします!! 


 <京極・出町FP相談オフィシャルサイト> 継続フォロー(相談完了後)
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 さあ、早いもので2021年も6分の1が終わってしまいました。

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 事務所の中からお向かいさんを撮りました。
 陽射しが春です。


 1(月)終日事務所で資料作成没頭日です。
 2(火)個別相談2件お受けします。
 3(水)午前中は京都リビング新聞社カルチャー倶楽部「FP3級資格取得講座」の6回目です。

 ご参照ください。
 【特別対応】初回相談からSkypeでお受けできます<第2版>



公的年金制度の仕組み・手続き等【19】低年金化を防ぐための追納と言うのは簡単だけれど


 一般社団法人 企業年金・個人年金教育者協会という団体のwebサイトに公的年金保険研究会というページがあり、すばらしい内容ですので1つずつご紹介しています。

 公的年金保険研究会

 前回はこちら → 公的年金制度の仕組み・手続き等【18】学生さん、未納は絶対あかん

 第14回目から「公的年金制度の仕組み・手続き等」編です。
 第19回目もいつも通りいくつか抜粋して紹介しコメントを書きます。

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■公的年金制度の仕組み・手続き等
19.保険料免除・(若年者)納付猶予・学生納付特例の違い

・国民皆年金を掲げ、国庫負担を基礎年金財源に投入している公的年金制度ゆえに実現 可能な仕組み p1

・産前産後期間に該当する者は、申請することにより保険料の全額が免除され、産前産後期間の老齢基礎年金は満額保障される。 p3

・保険料免除や納付猶予・学生納付特例を利用せず、保険料を未納にしている者は、納付義務に違反しているのみならず、どのような点で本人にとって損をしているのか p5

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 シラバス19はA4サイズで5ページ分です。

 会社員・公務員などお勤めの人(国民年金の第2号被保険者)と第2号に扶養されている配偶者(国民年金の第3号被保険者)以外、国民年金の第1号被保険者の方々にとって、とても大事な仕組みの解説です。

 この免除・猶予・特例は文章にすると、途端に難易度が上がるように思います。例えばFP資格を学ぼうと思うような人は文章を読んで理解できるレベルが求められますが、一般にはそうではありません。
 日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度「1.保険料免除・納付猶予制度とは」の「手続きをするメリット」一覧表がわかりやすくて良いと思っています。

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 誤りを指摘します。
 

p1 国民年金の納付猶予・学生納付特例は、世帯主や配偶者の所得要件がなく、対象者本人の所得要件のみである
p3 納付猶予・学生納付特例のメリットは、所得要件について、本人所得のみで判定 し、世帯主や配偶者の所得要件がない点である。したがって、実家住まいの者や共働きの者であっても、本人の年間所得が一定額以下であれば、納付猶予・学生納付特例を受けることができる


 日本年金機構 国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度「1.保険料免除・納付猶予制度とは」の「イ)保険料納付猶予制度とは」をご参照ください。

 納付猶予は「本人・配偶者の前年所得(1月から6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合」です。本人の所得要件のみではありません。p4で掲載のある厚生労働省資料にも「本人・配偶者の所得の応じ」と書かれているのに、これは執筆者の思い込みでしょうか。全体を考えると極めて珍しいチェック漏れかと思います。

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 もう1つ引用です。
 

p4-5 年金の減額、低年金化を防ぐためには、保険料免除・納付猶予・学生納付特例を受けてから10年以内に追納を行うことが重要(中略)保険料を納付することが難しい者については、一旦その納付義務を免除したうえで、後から自身の老齢基礎年金額の増額のチャンスがある制度設計 となっている点は、民間保険とは異なる、公的年金保険だからこそできる特徴といえる


 中略以降の文章はその通りです。でも前半は書くのは易く行うは難しです。

 免除や猶予を利用するような低所得の状態(さまざまな事情が考えられます)から抜け出し、しっかりとした収入を得られるようになったとしても、最大10年分もの追納は総額が大きすぎます。
 単純な計算で2020年度の月額保険料は16540円。1年で19万8480円、10年分の総額は198万4800円です。元々納付できなかったような収入と貯蓄の状況だったんです。20~40代の若い期間、住居費・教育費を始めとした費用負担を考えると、長期に渡る追納は優先度が下がってしまいます。

 追納した保険料は全額が所得控除の対象ですからしっかりとした収入を得られるようになり、貯蓄もある程度できるくらいの方々は問題ないでしょう。若い時期の追納ではなく、60~65歳の任意加入や60歳以降も厚生年金適用で働くこと(経過的加算)を優先することで大きな問題にはならないことも選択肢に入れてもらいたいです。
 実際に猶予を長く使うことになる方々がどれだけの人数がわかりませんし、非常にレアなケースなのだとは思います。「低年金化を防ぐための追納」と言うのは簡単ですし確かにその通りですし、もちろんケースバイケースですから一概には言えませんが、前半の文章はもう少し年金以外の視点による配慮があってほしいと感じました次第です。


<過去参照記事>
 ・2016年8月 国民年金保険料の若年者納付猶予制度が2016年7月以降は納付猶予制度へ
 ・2015年3月 国民年金保険料の産前産後免除【案】の報道について
 ・2019年9月 公的年金保険への要望(私案)

 次回はシラバス20.「年金額改定の仕組み」です。