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調査結果で発信される「貯蓄額の平均」はその項目・内容がすべて網羅されているのか疑問


 今回の一連の「老後2000万円」報道の件、ブログでは初めて書きます。でも、本質はまた別の記事で書きます。
 この時期に当ててきたのは明らかに意図的ではないのですが、こんな調査結果が民間からも出てきています。

 報道記事はこちら。
 還暦の貯蓄額25%が百万円未満 2千万円に遠く届かず

 調査の元データはこちら。
 2019年の還暦人(かんれきびと)に関する調査

 保険会社による2000名調査です。
 「還暦人の貯蓄額 平均2,956万円 一方4人に1人が「100万円未満」」という不安のあおり方です。

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 調査対象は今年還暦を迎える1959年生まれの男女ということで、退職金を受け取る直前というケースも多いことでしょう。同じ回答者へ1年後にも同じ質問に回答してもらいたいと感じます。

 日々相談をお受けするなかでも貯蓄額を確認すると出てくる情報は、預貯金や有価証券(株式・投資信託など)です。
 財形貯蓄、企業型確定拠出年金(DC)や最近だとiDeCo(個人型確定拠出年金)、保険商品の解約返戻金などの手元ですぐに見えない資金はカウントされていないのではないかという視点です。

 また、それぞれの貯蓄額区分ごとに住宅ローンの有無や残額、教育資金の負担額や残年数も合わせて確認しないと、何のデータなのかさっぱりわかりません。


 決して目に見えやすい範囲での貯蓄が少なくても何も問題ないと言いたいわけでもありません。
 

 こんなケースもありますから、結局は何事も世の中の平均や見出しに踊らされることなく、自分自身や家族はどうなんだと確認することでしか何も前に進まないということなんです。

 京極・出町FP相談では「家計の資産表」という企業におけるバランスシート(B/S)を家庭にも当てはめる視点で資産情報をまとめるお手伝いをしています。資産と書くと、いわゆるお金持ちが対象と感じてしまわれるケースもあるようですが、私が日々相談をお受けしているほとんどのご家庭はいわゆる普通のご家庭です。普通の家庭にこそ、この視点は大事だと考えます。

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 今回の2000万円の問題。あおられた見出しや切り取られた報道にまどわされることのないよう、元データにあたることの大事さを多くの人が改めて感じるきっかけになっていてほしいと願う次第です。

 

 報道各社の皆さまにおかれましては、今回の報道は不適切でした、内容を理解せず報道していました、今後の社会保障では内容を理解したうえで報道します、これくらい発信してもらいたいものだと切に願う次第です。


定年退職年齢の変更とそれに伴う継続雇用の仕組みが変わることでの従業員さん向けの相談会


 5月下旬と6月上旬のとある2日間、京都市内にある創業50年を超える企業さんで従業員さん向けの相談会を対応してきました。

 定年退職年齢の変更とそれに伴う継続雇用の仕組みが変わることで、資金計画やライフプランの相談を希望する従業員さん向けの相談会です。1人1回1時間で、件数や相談内容はここで書けませんが対応させていただきました。


 こういった取り組みは私としても初めてで、この企業さんの制度を事前に確認するなかで早期退職した場合と通常通り定年退職した場合での金額の違いや、それに伴う将来受け取る年金額の情報などの質問が多いかなと思っていましたが、実際には違いました。

 確かにきっかけは定年退職と継続雇用ではありましたが、60歳前後になられたことでの日々疑問に感じておられる点や誰に聞いて良いのかわからなかったという内容が多かったです。

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 アンケートでも「とても良かった」「疑問は解決できた」を選んでくださった方々が非常に多かったこと、こういった相談会が開催された場合に「同僚にも勧めたい」を選んでくださった方々も非常に高率だったこと、そしてファイナンシャルプランナー(FP)に相談したことは無料・有料を問わず全員が「今回初めて」だったこと、とても嬉しかったです。

 自由記述の感想の1つをご紹介します。

 「的確なアドバイスで迷っていた事柄を後押ししてもらった感が有る」

 後押し、大事だと思います。もちろん無条件での後押しではダメです。ご自身でもよく考えておられいろいろ調べておられたこともあって、方向性を見極めるのはとても早くできました。もちろん前提としては、何歳まで働くのか、その場合の退職金の見込額や公的年金の受給額は、このあたりもざっくりと明確にしたうえです。


 依頼事業者側の担当さん御二方も「アンケートの結果からも伊藤さんにお願いできて良かった」とのお話をいただけて、初めての企画でうまくいかなかった(不評だった)場合には困られたでしょうから私としましてもひと安心でした。
 FP選定の過程もお教えいただき、ご縁ってすごいものだと感じました次第です。

 相談会を利用くださいました皆さま、担当くださった皆さま、裏方の皆さま、この度はありがとうございました!またの機会を楽しみにしております!


教育資金の積み立て、2割を投信?残りは預金?


 こんな記事が日経に出ていました。



 このリンク先は会員登録が無いと読めないのですが、後日こちらで誰でも読めるページになっていました。

 教育資金の積み立て術 2割を分散型投信、残りは預金

 費用で気になったことはツイートで取り上げていますので、見出しについてシンプルに書いておきたいと思います。

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 「積立資金の2割程度を運用に回すのが妥当」

 この件、皆さんはいかが思われますでしょうか。

 記事とは異なる金額例を出してしまって恐縮ですが、子どものために月15000円積み立てているとします。
 生まれてすぐから大学に入るまで18年間とすると、総額は約324万円です。
 この月15000円の2割、3000円を投資信託、残り12000円を預金ということです。
 総額で言えば64万8000円を投資信託、残り259万2000円を預金です。


 この割合が妥当かどうか私にはわかりません。
 ほとんど増えないといっても学資保険も否定はしません。途中で親に万が一のことがあった場合、投資信託だとそこまでの積立額ですけれど、保険だと積み立てがストップしても保険金額が教育資金として出てきます。死亡保障は別途きちんと加入して備えておくことで積立と保障は切り離して考える必要があるという選択肢もあります。何が正解かは将来になってみないとわからないわけです。

 でも、これだけはお伝えしておきたいです。
 目的別に積立額を決め、それぞれで預金と運用の割合を決めるようなやり方だと管理が複雑になり、訳が分からなくなる傾向を感じます。私のお勧めは家計の資産(貯蓄)全体で考えるということです。

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 お金に名前はついていません。名前を付けて確保しておきたいのは緊急予備資金(生活防衛資金)です。それ以外は自由で良いんです。

 投資信託をはじめとする運用商品だって苦手な人、多いでしょう。この日経の記事だけ読んで(判断する人は多くないと思いますけれど)、自分で調べても継続性の望めない投資信託を選んでしまうことがあるかもしれませんし、金融機関やファイナンシャルプランナー(FP)に相談しても勧められるがまま自分では理解できていないものを持ってしまうことになるかもしれません。実際に教育費として使う直前にリーマンショックのようなことが起こってしまった場合、理解できていない商品だったらその時にどうして良いか困ってしまうことがあるかもしれません。


 いつものポジショントークとして書きます。
 教育資金、確かに大事です。老後資金、まあ大事でしょう。住宅購入資金、考えないといけないですよね。
 でも、何を優先したいのかの交通整理が1番大事だと思うんです。

 複数の人(専門家)に相談してみて自分や家族に合った選択肢を見つけてもらいたいんです。1つ(1人)だけの相談は勧めません。
 繰り返します。正解は将来になってみないとわかりません。
 でも、さまざまな選択肢を知ったうえで選んでもらいたいと思うんです。

 お役に立てる機会がありましたら幸いです。


”消費低迷と日本経済”読みました。


 ”消費低迷と日本経済”(2017年11月30日 第1刷発行)を読みました。

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 著者は大阪大学特任教授・名誉教授の小野 善康(おの よしやす)さん。
 小野先生を知ったきっかけは朝日新聞の不定期コラム「ミダス王の誘惑」です。いつもものすごく興味深い内容です。


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■はじめに
■序 ギリシャ神話・ミダス王の教訓
■おわりに

・現代の日本では、人々が本来の目的である物やサービスよりも手段であるお金を欲しがり、物が売れずに長期不況を招いている p14


■第1章 がんばっても豊かになれない本当の理由

・現役世代を家に縛りつけている介護や保育の負担を和らげ、心身両面を快適にする観光や文化サービスなどを充実させた方がいい p25


■第2章 「物よりお金」が経済を狂わす

・お金への執着は、物の購買意欲を減らして企業活動を阻害し、失業を生む。さらに財政縮減の大合唱を生んで、政府を機能不全に陥れる p40
・金銭欲と大衆迎合 p52~
・経済政策の究極の目的は、いまも昔も、企業の金もうけ最大化でも、国際競争での勝利でもなく、人々の幸せの最大化である p58


 日々、メディアから発信されている情報は何なのかと思えてしまいます。私たちはこの日本という1つの国において1億2000万分の1でしかありませんが、その1人ひとりの考え方が大事なのだと気づかされます。
 そのわずかな1人が自分や家族のためにより良いと感じる手段を取ることは当たり前のことです。ここでの「より良い」とはできる限り貯蓄に励むということでしょう。でも、何事にも限度や適性水準というものがあり、過剰であってはいけない。今の日本は過剰に貯め込んでいる(層がある、または層が多い)ということなのだと読み取りました。


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■第3章 資本主義の限界を乗り越えるには

・物を買うことは、自分が楽しいのと同時に新たな雇用と所得の増加にもつながるのに、節約志向が高まり物が売れない(中略)こういうときこそ、再分配や社会保障の充実が景気拡大に結び付き、自分に返ってくる p71
・格差を助長する年金制度 p79


■第4章 金融緩和が作り出す虚構の世界

・人々の購買意欲が減退し(中略)消費も増えず投資機会も限られているため、日銀がいくら金利を下げ、量的な金融緩和を行っても、景気は刺激されない p108
・ほかならぬ自国民がいくら金持ちになっても消費を増やさず、金をため込んでいる p117
・マスメディアは手遅れになる前に、正しい情報を伝えるべきだ p124


 蓄えゼロで使いまくるのが良いとは私も思えませんけれど、公的年金をはじめとした社会保障の不安を過剰にあおることで1人ひとりが「よくわからない」不安を感じ、節約に励みお金を貯めているが社会全体で考えれば良くないことなのだと気づかされます。
 人生で使い切れないほどのお金を貯め込み(実際には使い方がわからないことで結果として貯まってしまう)、余れば次の世代が引き継ぐのですが、引き継ぐ世代も若くないため結局消費にまわらないわけです。

 私はいわゆる富裕層専門ではありませんから、日々の相談を受ける立場として消費したくとも消費できない家族があることも知っています。なぜ消費できないかといえば、子どもの教育費のため自分たちの老後(リタイア後)のために貯めておかないと選択肢が限定されてしまうからです。
 だからこそ若い世代への再分配や社会保障がもっと手厚くならないといけない。でも現代の社会保障(社会保険)は公的年金・公的医療保険ともに若い世代からリタイア後世代への資金移動が大きすぎるんです。お金をたくさん持っているリタイア後世代に手厚い保障は不要なのに、それを補足する手段がない。いえ、あるんですけど実行できない。ああっ、悩ましいです。


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■第5章 増税と囚人のジレンマ

・増税延期で失ったもの p136~


■第6章 善き社会を作る財政の使い道

・誰にも幸せにしない忍耐・倹約 p155~


■第7章 グローバリズム経済を生き抜くには

・”爆買い”を喜べない経済学的理由 p180~
・国内外での企業の活躍が日本経済の豊かさにつながらないのは、日本の消費者が稼いだお金を消費に回さないからだ p188


 本当にとにかく一貫しています。供給ではなく需要(消費)です。まだ感想を掛けていませんけれど、権丈先生のちょっと気になる社会保障のシリーズ本「ちょっと気になる政策思想」にもこのことは耳にタコができるほどに書かれています。

 私たちは適切にお金を使っていかないといけないんです。


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 適切にお金を使っていくにあたっては社会保障(社会保険)を知り、支出の見通しをたて、大小を問わず資産を把握・管理していくことです。それをお手伝いできる専門家がファイナンシャルプランナー(FP)であることに間違いありません。(ただし、金融商品販売に特化したFPは除外せねばなりません)

 FPの役割は資産を増やしていくお手伝いではないと私は考えます。過剰に貯め込みすぎず使っていくこと、これが資産を適切に管理していくとことであり、このことこそがFPの最大の役割だと信じています。


 身近で接しやすい情報からは得られない切り口です。お勧めの本です。

 

 2018年4月の医療政策会議報告書「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」(PDFファイル注意)にも本書著者の小野さんが講演録(p58~成熟社会の経済と処方箋)で登場されていました。
 ちなみにこのリンク先のトップバッターは大好きな権丈先生(p1~医療政策会議における基本認識)です。


 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


医療費と公的医療保険についての記事のご紹介


 今回は公的医療保険(健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療制度)についてです。

 とても真っ当な記事が出ていましたのでご紹介します。





 2つめの記事の引用です。

日本の社会保障給付費の対GDP比が2040年で24パーセントという水準は、日本よりも高齢化率の低いフランスやスウェーデンが現在負担している水準よりも低いもの

そもそも技術的に最後の1ヶ月なんて、誰にもわからない

だいたい私の経験では、「This Time is Different(今度こそ違う)」と言うのは、不勉強だけれども、傲慢な人の常套句




 3つめの記事の引用です。

『健康寿命』という概念は、認知症や重度の障害者、病気を持っている「健康ではない個人」の生存権を侵害する危険があります


 健康寿命という用語に違和感があって使ってこなかったんですけど、こういうことも1つだったのかなーと気づけました。

病気が自己責任と誤認させる「生活習慣病」という用語の見直しを検討すべきであると主張し、とりあえずは「生活習慣関連病」への変更が現実的と判断


 生活習慣関連病、これから使っていきます。


 3つめの記事の中で紹介されていた参考資料です。

 喫緊の課題、「医療介護の一体改革」とは 忍びよる「ポピュリズム医療政策」を見分ける
 ※ PDFファイル注意

 リンク先のp3の前提は議論するためには大事ですし、p4~は権丈先生の著書「ちょっと気になる医療と介護」が詳しいです(感想記事は書けていません…)し、p8~「戯言への論破」を知っていれば根拠のない不安をあおる情報にまどわされなくなります。

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 今回も私の記録用記事の位置づけが強いのですが、本当に大事なことなのでこのブログをご覧くださっている希少な皆さんと共有できれば嬉しいです。

 新聞・テレビ・雑誌などで、明らかに解釈の違う信ぴょう性のない社会の仕組みではなく、実際の社会の仕組みを事細かに把握している必要はありませんが、適切な概要を知っていることは大事であることは間違いありませんし、このことこそが義務教育で社会保障を学ぶ機会があってほしいと何度でも書く私の主張の根幹です。