公的保険を知れば、生命保険が売れる?


 Financial Adviser というファイナンシャルプランナー(FP)の業界専門誌があり、私も定期購読しています。

 1月号の裏表紙にこんな広告が掲載されていました。

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 公的保険アドバイザーという民間資格があるそうです。
 少し前から広告を目にする機会がありましたので存在は知っていました。

 公的保険とは「健康保険、介護保険、雇用保険、年金保険」と示されていましたが、あえて「社会保険」と言っていないところが民間資格の悩ましいところです。ちなみに社会保険では他に労災保険も対象です。


 画像に戻ります。

 FP資格保有者であっても特に公的年金をはじめとした社会保険は苦手な人が多いと耳にする機会がありますので(実態はわかりません)、名称は何であれ社会保険の知識を得る人が増えることは望ましいことです。
 なので、この企画「マスターセミナー」は好感をもって目にしました。

 が、、、セミナーのサブタイトルにあぜんとしました。

 「公的保険を知れば、生命保険が売れる!」です。


 あえてリンクをつけませんが、このアドバイザー資格の説明webにこんな記述がありました。
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 何をもって「縮小」なのでしょうか。
 いつと比べて「ぜい弱」なのでしょうか。
 何を基準に「これまでにないリスクにさらされているということになる」のでしょうか。

 縮小・ぜい弱・リスクを押し出して「公的保険を知れば、生命保険が売れる!」なのでしょうか。

 
 近年の社会保険の改正は間違いなく、低所得者は負担減・高所得者は負担増です。高所得者にセーフティーネットという言葉はあてはまりにくいことは想像してもらいやすいと思います。(高所得者向けに「生命保険が売れる!」なのでしょうか)

 社会保険ではなく福祉において、主に高齢者向けの保障に手厚さがなくなっていると感じる部分がある点は、初期導入時に手厚すぎる内容だったからこそ時代に即して是正されているイメージしかありません。
 これは社会保険(ここでは公的保険)を学んでもすぐに答えの見つかる問題ではありませんし、ましてや保険商品を使った民間保障を上乗せして解決する問題でもありません。

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 日々の相談で感じる社会保険とは、知れば知るほどに民間の保険商品は必要最低限で良いという存在です。もちろん断じて「不要」と考えるわけではありません。

 「ねんきん定期便」を元に死亡保障や医療保障を話したとき「保険商品はこんなにも要らないですね」とおっしゃるケースばかりです。必要最低限が「売れる!」セミナーではないでしょう。


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 セミナーの参加対象も直球ですし、もう一度冒頭の画像も合わせてご確認いただきたいのですが、セミナータイトル下の説明文章もびっくりです。

 「ねんきん定期便」から得られる情報を元に「老後の資産形成」として、第一に貯蓄性のある生命保険(個人年金保険を含む)が存在するとはどうしても解せません。


 一般生活者の皆さまにおかれましては「公的保険アドバイザー」資格保有者から保険営業を受けられる際にはぜひこんな文章が発信されていることを知ったうえで最終的な判断をしてもらいたいと切に願います。



ライフプランという表現


 「ライフプラン」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持たれますでしょうか。

 ファイナンシャルプランナー(FP)で学ぶところのライフプランを日本語に直すと、人生設計や生涯設計などかなと思います。
 資格を得るための課目(領域)の1つとして「ライフプランニングと資金計画」というものもあり、ライフイベント表・キャッシュフロー表・バランスシート・教育資金・住宅ローン・リタイアメントプランニング・健康保険・介護保険・雇用保険・労災保険・公的年金・企業年金などといった内容を学びます。
 FP資格を名乗り、その専門性で家族を養っている立場からは、人生計画において主たる大事なものという印象を持っています。

 
 では、「ライフプラン相談」と聞けば、どんな相談ができそうに思われますでしょうか。

 すごく曖昧な気がします。人生設計相談・生涯設計相談、具体的にどんな相談ができるのかイメージしにくいように思います。先に私の書いた説明を見ておられれば、相談できそうな内容もイメージしてもらえるかもしれません。

 最近はFPへの相談、お金に関する相談という意味合いで「ライフプラン相談」「ライフプラン相談会」というような名称も使われているようです。ですので、FPに相談できるイメージという意味ではそれで良いのかもしれません。


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 今回ブログで取り上げたのは、「ライフプラン相談会を実施します」という生命保険の代理店のチラシが新聞の折り込みに入っていたからです。

 相談無料の「ライフプラン相談会」の内容を要約すると、このように書かれていました。

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・既にその代理店の保険商品に加入している人向け

 保障内容・満期日等を、わかりやすくご説明します。
 この機会に、ご契約内容や保険金の受け取り方法等も再確認できます。


・その代理店で加入していない人向け

 保障内容が一目でわかる「ライフプランシート」を無料でお作りします。
 保険にご加入されている方、ご質問だけの方、どなたでもお気軽にご相談いただけます。


・ご来所の際には現在ご加入の保険証券などをご持参ください。

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 個人的にものすごく違和感がありました。
 これは「ライフプラン相談」ではなく「生命保険相談」ですよね??

 この違和感を覚えるのは私の職業病だと言ってしまえばそこまでなのですが、こうして「ファイナンシャルプランナー(FP) = 保険だけ」の印象がますます強くなってしまっているようにも感じます。


 よくよく考えてみると、自社の営業担当を「ライフプランナー」という肩書で表している生命保険会社もあります。

 生命保険は「 life insurance 」ですから、ライフプラン相談もライフプランナーも「生命計画相談(?)」「生命立案者(?)」という意味合いで使われている面からは私の違和感は必要のないものだったというわけです。

 表現とは「受け取る側がどう思うか」ということだとはわかっているつもりでも、本当に難しいことだと感じる次第です。
 私は私のポジショントークをこのブログで書き続けていきますので、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。



”生命保険は「入るほど損」?!”読みました。


 ”生命保険は「入るほど損」?! ~検討すべき商品はたったの3本!~”(2015年11月21日第1刷)を読みました。

 著者は保険相談室 代表の後田亨さん。
 ブログはこちらです。

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 ※ 左は自分で買った分、右は著者の後田さんよりお送りいただいてしまった分です。

 まず始めに書いておきます。後田さんとは友人(すみません!)ですので、ひいき目があります。ご承知おきのうえ以降をお読みください。

 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■第1章 「医療保険」はギャンブルより不利な賭け?
■第2章 「がん保険」は宝くじより不利?
■第3章 損が大きい?「貯蓄性」がある保険

・お客様が「医療保険」を解約した理由 p49~
・入院経験者には、確率の問題ではなく「100%の事実」だが p57~
・宝くじで備えるほうが安心? p75~


 後田さんの文章をしっかり読んでいただくと必ず気づいてもらえると思います。一文一文の表現が非常に独特でありこだわりがあり、配慮があります。本文中にもありますが、「感情」で書かれているのではありません。具体的な「理屈」を突き詰めておられるんです。
 ですので例えば、「自分には当てはまらない」「自分に近しい〇〇さんはそうではなかった」ということではなく、考え方を知るための視点で読んでいただきたいです。


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■第4章 保険会社は「贅沢」し過ぎ?
■第5章 「セールストーク」「CM」「キャッチコピー」のツッコミどころ

・「持病があっても入れる保険です」 p138~
・「いつもの銀行で『保険のプロ』に相談してみませんか」 p144~


 「真のプロフェッショナル」の教育担当者からヒアリングされた内容が衝撃的です。私もいつも書きますが、「保険販売のプロ」が良いとか悪いとかではありません。あなたの保険の担当者である人がどういった立場でアドバイスをしてくれているのかを把握しておくことこそが、あなたの将来を考えるうえで適切な選択肢を得るためにたいせつなことだと思います。
 繰り返します。すべての事象を良いものと悪いものに二分できるほど単純なことではないと私は考えます。


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■第6章 「おいしい客」になっていませんか?
■第7章 「(余計な)損をしない」保険活用法(実践編)

・「儲」という字は信者に似てる!「布教家」タイプ p167~
・Q 誰に相談したらいいのでしょうか? p180~
・お金が貯まる人の特徴 p190~


 「使命・信念・涙・感化」まさにその通りだと感じる言葉が並びます。皮肉や悪意はありません。純粋にその道を邁進しておられる方々はそれはもうすごい存在です。一歩間違えば誰しもその域に踏み入れてしまうと思います。これもまた選択肢です。

 p180からの3ページは「まさに!」の部分です。無料相談と有料相談のメリットとデメリットがしっかり書かれています。たくさんの人に読んでもらいたい部分ですし、私も「独立系のファイナンシャルプランナー(FP)」と自称している方々には注意が必要だと感じることがあります。個人的に、私自身としては「独立系FP」ではなく「開業FP」という表現がしっくりきています。


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■第8章 「検討に値する保険」は3本だけ?

・死亡保険(収入保障保険・定期保険・団体保険) p200~

 
 私のイチオシはここです。なぜなら私がデータ提供した遺族年金に関する資料が1ページを独占しているからです。資料の注釈文章も一言一句そのまま掲載されていましたので、本当に自分の本のように嬉しいです。

 本には
 ・男性会社員(厚生年金の被保険者)
 ・女性会社員(厚生年金の被保険者)
 この2パターンが掲載されていますが、実際には
 ・男性自営業者(国民年金の被保険者)
 ・女性自営業者(国民年金の被保険者)
 ・母子家庭・父子家庭(厚生年金の被保険者)
 ・母子家庭・父子家庭(国民年金の被保険者)
 この4パターンを加えた計6パターンの遺族年金資料を作成し、提出しています。
 当然ながら紙幅の関係がありますので、なかなか難しいものです。

 なお、本文中やあとがきには私の名前は出ていません。掲載されるかどうかは後田さんにお任せしましたし、掲載されるとしても名前や屋号は伏せて欲しいと依頼していました。代わりに、後田さんのblogにて「知人」として登場しています。後田さん、ご配慮に感謝を申し上げます。

 書いて欲しくないのにblogで書いているのはどういう意図かと思われることもあるかと思います。以前、東洋経済に匿名で掲載されたときと同じです。私のことを知ってくださっている人が今回の内容を知ってくださるのは問題ありません。私のことを知らない人が私のことを知ってくださるきっかけとして本や雑誌になってしまうのは望むところではありません。もう少し踏み込んだ内容を東洋経済掲載のブログ記事で書いていますので、よろしければぜひです。


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■まえがき
■序章 損をしやすい保険の仕組み
■終章 「手強い客」になろう
■あとがき


 後田さんからは「伊藤さんには特に序章とあとがきを読んでほしい」と言われていました。
 一文だけ引用します。

・(生命保険は)必要最小限の利用にとどめることが、余計な損をしないための鉄則です。 p25

 主旨はこれなのです。本のタイトルはいわゆる「あおり系」ですが、後田さんも生命保険の仕組みをすべて否定されているわけではありません。必要なものは必要なんです。ただし、必要なものを準備するにあたって妥当な商品が世の中に少ないという実際をなぜなのかと明らかにしたいという探究心と「仮説を立てて物事を見てみる(p237)」を実践されているのです。このスタンスを私は大応援しています。(えらそうにすみません)

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 後田さんの別の本の感想を書いた時の私自身の文章を引用します。

 「後田さんの本を読んだからと言って、自分や家族に合った保険加入の方法がつかめるわけではありません。自分や家族に合った保険加入の方法をつかむためのヒントがちりばめられているわけです。」

 このヒントは生命保険に限ったことではないと感じます。
 生活していくうえでの視点を得られる本だと思っています。

 2016年2月12日時点で、「3刷」が決まったと書かれていました。おめでとうございます!!

 

 後田さんの本の感想は何本か書いています。
 ・”保険会社が知られたくない生保の話~保険嫌いは意外に正しい~”読みました。
 ・”保険外交員も実は知らない生保の話~「お得な保険」なんて、存在しない~”読みました。
 参考になりましたら幸いです。
 
 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


自らの家計管理ができていないFP資格を持った営業マン


 KINZAI ファイナンシャル・プランという国家資格であるFP技能士に向けた業界誌があります。
 FPジャーナルという民間資格であるAFPとCFP向けの業界誌もあります。
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 たまたま同じ7月号に同じ執筆者による内容があり、いずれも生命保険の関係で少し気になった部分がありましたので取り上げてみたいと思います。
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 まずは、KINZAI ファイナンシャル・プランの「保険販売お悩み相談室」です。
 タイトルは「職域開拓 高額療養費制度の改正と医療保障からのアプローチ」。

 職域とは、比較的大きな企業で多いと思いますが、生命保険会社の職員さんが企業の職場で営業活動をされている件です。最近はセキュリティーの関係でオフィス内まで入っておられるケースは減っているようですが、お昼休み等に声をかけておられる件です。


 部長職と係長職の人を相手にしたロールプレイング的な内容で、気になる部分の1つめはサンプルとして取り出しているおおよその年収が770~1160万円の方々の例です。

 1ヶ月入院した際の自己負担の例が取り上げられています。
 ・医療費 17万1820円
 ・差額ベッド代 60万円(1日2万円×30日)
 ・食事代 4万1400円
 ・合計 81万3220円
 差額ベッド代が1日1万円の場合の合計51万3220円の例も挙がっていますが、あたり前に1~2万円の差額ベッド代を加えるのは何とも言えないです。もちろん差額ベット代がかからないケースもあり、その場合には21万3220円です。繰り返しますが、この例は年収が「770~1160万円」の方々の例です。


 その他にも前提条件として、

 ・長期入院して月50万円請求されたら
  →長期入院の場合は4ヶ月目から多数該当が適用され、
    医療費負担は9万3000円に減少します。自己負担の大部分はやはり差額ベッド代です。

 ・預金が0円だとしたら
  →預金が0円にならないようアドバイスするのがFPだと感じます。

 などが取り上げられていました。矢印以降は伊藤のコメントです。


 そして、極めつけをまとめた概要です。
 ・アドバイスしているFPも以前は医療保険に加入していたが解約した。
 ・解約した分の保険料を貯蓄していた。
 ・でも、外食が1回増えて貯蓄にならず家計は改善されなかった。
 ・何のために解約したのか自分でもおかしな選択をしてしまった。
 ・月1回の外食を控えてでも医療保険に加入するほうがいいと思っている。

 個人の感想ですが、ここの家計管理を自らができないFPって大丈夫なのでしょうか…。医療保険の加入や解約は個人の自由です。個人的には優先順位は決して高くないというスタンスではありますが、要るか要らないかは家庭によって異なりますので通り一辺倒な答えはありません。

 専門家でさえも貯めることができない=不安だから加入しておこう

 こんな図式を恥ずかしげもなく例に挙げるのは、同じFP資格保有者として悲しい気持ちになります。


 まとめとしてこんな記述もありました。
 ・保険商品の説明ではなく医療保障のニーズを掘り起こす。
 ・その際に社会保障費が増大していることは押さえる。

 このコーナーに関して感じるところは以前のblogで数回書いています。
 言葉1つで違いを出せるのが営業トークです。

 私の主張は1つです。
 これはFP技能士の業界誌であって、生命保険募集人だけを対象にした業界誌ではないということです。
 保険営業を受けられる際には、ぜひ複数の意見を得ていただきたいと強く願います。


 <過去参照コラム>ファイナンシャルプランナー(FP)の役割とは

 私の書いた生命保険に関するコラムの一覧はこちらです。
 何かの参考になりましたら幸いです。

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 当初の想定より長くなってしまいました。
 FPジャーナルの件は来週取り上げたいと思います。


 10(金)午後は毎月恒例の精巣腫瘍患者友の会ピアサポートにアドバイザーとして参加してきます。私の参加は37回目です。


お客さまサービス部という肩書


 新聞紙面で目に入った記事です。

学資保険新契約、かんぽ一人勝ち 昨年度、シェア3分の2
かんぽ学資保険、一人勝ち 昨年度の新規契約3分の2

 掲載タイトルが違うだけで記事内容は同じようです。

 この内容に対して思うところは何もありません。販売力というか営業網の素晴しさだと思います。教育資金積立として学資保険・こども保険を使うのかそうでないかの判断はぜひそれぞれ皆さまにお願いしたいところです。


 私が書きたい気になったことは、この記事を見た前後に、妻がか〇ぽ生命の学資保険の勧誘を郵〇局の名刺で受けていたことです。

 自宅の外観(自転車等)から子どものいる家だとは誰にでもわかることですので、飛び込み営業が来られるのはよくあることですし、致し方ないことだと思っています。
 でもインターホンで「郵便局です」と名乗り、出てきた家人(妻)に対して郵便局の名刺を渡し、か〇ぽ生命の立場を見せないままに、保険を勧める行為は業法的に大丈夫なのでしょうか。

 「夫がいろいろ調べて(教育資金積立を)していますので結構です」とはっきり伝えているにもかかわらず、食い下がらずに話を続けるスタイルは営業の鑑として素晴しいことなのかもしれません。
 でも、最後には普段着で玄関先に出ていた妻に対して「その服似合ってますね」など言い始めたとかいうことで、記事タイトルにある「一人勝ち」の裏には大変な営業努力があったんだろうなと、それはもうしんどい気持ちになってしまいました。

 お客さまサービス部という肩書の営業職員さん全員がこんなスタイルではないとは思いますが、保険の営業を始めるときには郵便局の立場ではなく生命保険会社の肩書で勝負してほしいものだと感じる次第です。(提案書を渡す段階では名刺を出されるのかもしれませんけれど。


 この記事は商品性に関して是非を書いているものではありません。教育資金積立はたいせつです。将来に向けた準備は漏れなく進めていただきたいです。私の立場としては金融商品を活用される際にはぜひ他の商品との比較や、そもそも保険という金融商品を使うことで良いのかということも考えてみていただきたいです。


<過去参照記事>物語調でお読みください。
<過去参照コラム>生命保険の有料相談と無料相談