勉強会「個人の資産形成にどう貢献するのか」に参加しました。


 20(土)午前中、FPを中心とした有志による勉強会へ行ってきました。

 講師はフィデリティ退職・投資教育研究所の所長 野尻哲史さん。共通の知り合いが多いのは把握していましたので、いつの日にかお会いできると思っていました。実現して嬉しかったです。

 さまざまなデータを出しておられる研究所でして、これまで個人的に印象的だったのは資産運用したお金を将来引き出す際に決まった額(定額)で引き出すのか、決まった率(定率)で引き出すのかどちらが良いかというレポートです。たくさんの調査・レポート・白書はこちらからご覧いただけます。

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■個人の資産形成にどう貢献するのか

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・同じことを繰り返し伝えていくことが大事


・「貯蓄から投資へ」とは、既存の預貯金から株式や投資信託に移し替えることではなく、収入から貯蓄をするのと同じように収入から株式や投資信託へ振り分けること。いわば「収入から投資へ」であり、資産形成を意味するのが「貯蓄から投資へ」。
・貯蓄(預貯金)は悪者ではなく、また預貯金を潤沢に持つ金持ちの話でもない。金持ちになるための施策。

・確定拠出年金のように、
 拠出時非課税(E)・運用時非課税(E)・受取時課税(T→日本には退職所得控除があるので実質的に非課税に近いケースがあるのでe)
 という仕組みから、世界的にはNISA(少額投資非課税制度)のように、
 拠出時課税(T→所得税の課税後に積立)・運用時非課税(E)・受取時非課税(E)が主流になってきている。


・「老後の豊かな生活には月額35万円必要」と「定年退職時に4000万円の貯蓄が必要」の不毛さ。「額」ではなく「率」が基準であるべき。

・老後の長さは平均余命ではなく生存率20%で考えたい。結果は95歳


・年平均3%の運用は可能か。
 日本で販売されている投資信託は約5800本
 15年以上は546本
 うち年平均0%以上の運用成果を得ている(マイナスになっていない)のは448本
 うち年平均3%以上の運用成果を得ているのは92本


・相続により資産が地方から都市部へ移っている。
 亡くなった人が都市銀行に持っていた資産を引き継ぐ人も都市銀行で受け取るのは約76%
 亡くなった人が地方銀行に持っていた資産を引き継ぐ人も地方銀行で受け取るのは約42%(都市銀行・ゆうちょ銀行で受け取るが各12%)

 亡くなった人が資産を預けていた都市銀行と同じ都市銀行の口座を持っていた資産を引き継ぐ人で都市銀行で受け取るのは約82%。同じ口座を持っていなかったら約61%
 亡くなった人が資産を預けていた地方銀行と同じ地方銀行の口座を持っていた資産を引き継ぐ人で地方銀行で受け取るのは約52%。同じ口座を持っていなかったら約25%

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<所感>

 ホワイトボードへの書き込みをうまく使ってくださり、非常に密な120分のお話でした。今回はファイナンシャルプランナー(FP)向けの勉強会ということで、前提条件を端折ってお話しされたことが多かったのだと思いますので「?」と感じた内容ももちろんありました。

・「FPの皆さんは」という呼びかけを多用されていまして、その多くは金融機関勤務で金融商品の販売をされている方々を対象とされているような表現を感じましたが、有料相談という場面もお話ししてくださったり、難しいですよね…

・「率」の考え方が大事なのはとてもよくわかるのですが、率を具体的に把握するためにはどうしても何らかの「額」情報を当てはめるしかなく、120分とはいえ短い時間で具体的な数字を伝えることの難しさを改めて感じました。

・勤労者3万人にアンケートを取られた2014年4月のデータがあり、退職後に一体いくら必要か?という設問があります。そしてその結果には年収と必要資金額におおよそ相関がありました。年収が低いと少ない額、年収が高いと多い額です。準備が可能かどうかの実現性も答えには含まれていることを加味する必要があると捕捉されていました。そして資料の見出しには「年金以外に3000万円が必要と回答」とあります。
 このアンケートには私が必須と考える事前情報があります。それは「公的年金の仕組みを理解しているのか」もしくは「将来受け取る公的年金額を具体的に試算したことがあるのか」です。メディアのあおられた情報により、公的年金は破たんするのでゼロで考えているという人も少なからずおられるのが悲しい現実です。ごくわずかであれば良いのですが、その情報が加味されていないとこのアンケート結果は取り扱いが本当に難しいです。

・毎月分配型という投資信託があります。仕組みの解説はこの記事でしませんが、「ブロガーの方々はタコ足であることを理由に毎月分配型は否定的だが、将来にかけて資産を取り崩していくことを考えればもっと評価されて良い」(意訳)という表現をされました。
 私はブロガーの方々とツイッターでコミュニケーションを取る機会がありますので、勉強会の後にこの件だけは私からひと言お伝えしました。「毎月分配型の投信は高コストであることが1番のネックであるとブロガーの方々が発信されていると理解しています。仮にタコ足でも低コストインデックス並みの信託報酬であれば、強めの否定は減ると思います」
 分配型は高コストであることや、もう1つ資産残高が継続的・安定的に増えていない(資金が流入していない)こと、この2つが最大のマイナスポイントだと私は理解していますが、そのことに(時間の関係で?)触れておられず単にブロガーの方々が悪者になっただけに感じてしまいましたので、お話しさせてもらいました。

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 所感では重箱の隅をつつくような不満ばかり書いているように見えると思いますけれど、存在のレベルの高さからこのようになってしまわざるを得ませんという意図でお読みいただければ嬉しいです。

 一般向けではなくFP向けだったからこそ踏み込んでお話しくださったと思いますし、120分でもまったく少ない時間であるという悩ましさからです。お金の仕組み・資産運用の考え方・各種制度の活用などの理解は大変な時間が必要だということの表れです。


 野尻さん、ありがとうございました!
 主催の栗本さん、お声がけくださり本当にありがとうございました!


タンス預金と積極的無知


 講義と記事を1つご紹介します。

 いま話題のひふみ投信・藤野英人が熱く語る「僕らのライバルは壺やタンス」

 動画だと26分くらいです。文章にも起こされていますので動画ではなく読んでいただくことも可能ですけれど、登壇者の藤野さんの雰囲気をよく知っていただけるので、動画が特にお勧めです。


 前半部分に出てきたのですけれど、キーワードはタンス預金と積極的無知です。タンス預金の具体例は私も衝撃的でした。あの水災の裏にはそんなことがあったとは…。

 <参照>現金と消費~巨大化するタンス預金の理由~(PDFファイル注意) -第一生命経済研究所-


 投資の基礎となる考え方を知っていただけます。身近に感じてもらえると思います。

 「投資をすることは知的でオシャレな社会貢献」

 これも藤野さんらしい表現だと思います。


 藤野さんが運用責任者を務めておられるレオスキャピタルワークスの「ひふみ投信」「ひふみプラス」「ひふみ年金」だけを推奨しているということではなく、とてもたいせつな考え方であることを知っていただきたいのです。

 もちろん投資や運用は自己責任にてお願いいたします。

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 そして、同じ企画で竹川美奈子さんの動画もありました。

 今日からコツコツ資産形成をはじめよう!(竹川 美奈子/ファイナンシャル・ジャーナリスト)- FROGGY LIVE

 藤野さんも竹川さんも凝縮された30分ですから非常に盛りだくさんです。あくまでもエッセンスだと思ってもらって大丈夫です。でもそのエッセンスを学ぶ機会・知る機会が世の中にはありません。本当にお勧めです。

 東京圏以外ではなかなかこういったセミナーを聞ける機会がありません。便利な世の中に乾杯です。


金融商品の展開ではなく公的な仕組みの理解が本当に必要なこと。


 先日の某紙朝刊の経済・金融面に某超大手証券会社の社長さんのインタビューが掲載されていました。

 気になった部分を赤字で囲いました。

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 ※ 画像をクリックすると全体が表示されます。


 公的年金保険や公的医療保険制度への不安に対して、証券会社の取り扱う金融商品で「我々に求められるのは何なのか」をこじつけないでいただきたいです。

 単に「将来の資産形成への不安を金融商品で解消しましょう」と直球で言われるほうがまだ好印象です。
 制度への不安は、制度をきちんと把握することが第一優先です。運用益などで解消されるのは制度への不安ではないでしょう。

 これは証券会社だけでなく銀行や保険でも同じですけれど、統計データで不安だと言われているとしても何でも背景にすれば良いってものではありません。
 繰り返しになりますが、制度への不安を抱く顧客が増えていると感じるのであれば、制度への理解を深めるための仕組みを「営業モデル」で考えることこそが本当に必要なことだと思う次第です。

 もちろんそんなことは「求められていない」のかもしれませんし、これを民間の大企業が取り組める内容なのかどうかはわかりません。


 インタビュー後半の「投資信託の新商品発売を控え、長期保有を促したり、高齢者向けの取引の見直しを進めたりしている」が実現されることには大賛同です。すでに「経営の本気度は伝わったと思う」には本当にそうなのか気になるところです。

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 重箱の隅をつつくようで私も気がのらなかったのですが、とりあえず公的な仕組みを不安に思わせる積み重ねには1つずつ着実に不快感を示しておかないと、それが当たり前だと思われ続けるのは本当に不毛です。

 私の発信力なんてチリみたいなものですが続けていくことが大事だと信じています。皆さま、いつもありがとうございます。

 <過去参照記事>”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました。


「そもそも社会的に続ける価値があるものですか?」「こうした状況をいつまでお続けになるつもりですか?」


 「資産運用ビジネスの新しい動きとそれに向けた戦略」における森金融庁長官基調講演(平成29年4月7日)
 ※ PDFファイル約340KB注意

 日本証券アナリスト協会 第8回国際セミナーというイベントで、金融庁長官による衝撃的な講演があり、全文公開されていますので少しピックアップしたいと思います。


 主には投資信託について取り上げられています。ぜひリンク先の全文も読んでみていただきたいです。
 
 投資信託は主には証券会社および銀行の担当者から勧められて購入される方々がほとんどかと思いますし、最近は金融仲介業(IFA)といって生命保険でいえば代理店のような形式で提案を受けておられる方々も増えてきているかと思います。

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■共通価値の創造

・顧客である消費者の真の利益をかえりみない、生産者の論理が横行 p1

・2707本ある日本のアクティブ型投信
  設定依頼2/3以上の期間で資金流入超
  ノーロード(購入時手数料ゼロ)
  信託報酬が一定以下
 これらを満たすのは5本 p2


■我が国の投信販売の問題点

・日本の投信運用会社の多くは販売会社等の系列会社
 系列の運用会社は販売会社のために売れやすくかつ手数料を稼ぎやすい商品を作っているのではないか p3


■顧客本位の業務運営に関する原則

・毎月分配型の投信は引き続き多く販売されている
 福利のメリットが享受できないことを理解してもらったうえで投資判断していただくのが顧客本位 p4

・正しい金融知識を持った顧客には売りづらい商品を作って一般顧客に売るビジネス、手数料獲得が優先され顧客の利益が軽視される結果顧客の資産を増やすことができないビジネス
 そもそも社会的に続ける価値があるものですか?
 金融機関・金融グループの中長期的な価値向上につながっているのでしょうか? p4
 こうした状況をいつまでお続けになるつもりですか? p5
 

■金融庁の課題

・金融商品は、その真の価値やコストが分かりにくいですが、「見える化」への努力を行っていく必要がある p6


■最後に

・これまでのやり方を続けていては、今後十年経っても二十年経っても何も変わらず、日本の資産運用業は衰退していくだけではないでしょうか。 p7


 ※ 講演録に出てくる「顧客本位の業務運営に関する原則」のリンクもご紹介しておきます。

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 いやー、すごいです。

 「そもそも社会的に続ける価値があるものですか?」
 「こうした状況をいつまでお続けになるつもりですか?」

 ここまで強い表現が使われている講演録です。しかも金融庁のwebサイトで公開されているんです。


 金融機関の営業担当さんは顧客に損をさせようと思っているわけではないでしょう。だって、損をさせてしまうばかりでは取引を続けてもらえないですから。
 そして、こうした流れでもうまく儲け(収益)を得てきた人が多い事実もたくさんあるでしょうから、一概にすべてがこうして強い表現を使われなければならないとも感じません。

 ただ、現場レベルではそうであったとしても、獲得した手数料でしか評価されない金融機関の制度は好ましいものではないでしょうし、他の比較対象は存在も知らせないままに今はこれを売りなさいという指示が出ているのも実際に耳にします。
 欧米のように低い手数料(消費者にとっては最適!)であれば日本において金融機関は収益を今ほどに稼げないということになるでしょうし、手数料で稼げないのであれば他の収益源を探す必要が出てきます。


 私が資産運用について相談をお受けするケースではプラスやマイナスは結果論としても、提案されている・保有されている投資信託の販売手数料と信託報酬(運営管理費用)は高額なものばかりで驚きを超えて感心してしまうほどです。

 百歩譲って仮に高額な手数料であっても顧客が常に利益を得ているなら、もしかするとここまで問題にならないのかもしれません。でも、こんな時代ですから決してそうではありません。

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 既に退職された元ベテラン銀行員さんから聞かせていただいたことがあります。

 「定期預金を預かってもごくわずかな収益なのに、投信だったら3%も稼げるんよ。保険だったら6%とか。嬉しかった覚えがあるよなー」


 答えは1つだと思います。

 消費者である私たち自身が知識と知恵を得ること。

 そんなことできないとおっしゃる場合には金融商品には手を出さないことです。金融機関の担当さんは良くも悪くも営業のプロです。良くも悪くも言葉は巧みです。


 「よくわからないものは買わない」

 改めて大原則だと感じますが、マイナス金利の時代ですから若い世代が将来に向けて資産を形成していくうえでは、金融商品の活用は必須だと考えます。さじ加減は難しいですし、ポジショントークとなってしまいますが有料のFP相談を対案として検討してもらいたいと願う次第です。
 ただし、気をつけないといけない点もあります。例えば京極・出町FP相談は「投資運用業」や「投資助言・代理業」の登録を受けていませんので、個別具体的な株式の銘柄や投資信託等をご紹介することはできません。ご承知おきください。
 金融商品の種類や手数料の仕組み、何を目的としていつに向けて投資・運用に取り組むのか、資産配分やリバランスの考え方などをお伝えすることは可能です。

 京極・出町FP相談 資産運用相談

 皆さま、いつもありがとうございます。



「これだけ知識があれば、たくさん得しそうで資産運用で儲けられそう」


 日々相談をお受けする中で、時々お聞かせいただく内容があります。

 「(伊藤さんは)これだけ知識があれば、たくさん得しそうですし、資産運用でも儲けられそうですよね」

 直球でこういった表現になるかどうかは別ですが、意味合いはこんな感じです。

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 まず前者の「たくさん得しそう」。

 結果的に「お得」につながるかもしれませんが、どちらかと言えば「損しない」または「損しにくい」という表現が適しているように思います。


 有料相談で家族を養っている立場の専門家として「私程度の知識で」と下に出るつもりはありませんけれど、残念ながら私が持っている情報が日本で唯一とか他の誰にもマネできないというようなものではありません(すみません)。

 基本的に裏技は好きではありません。基礎を忠実に、マイナス面を排除するスタンスが私の大方針ですので、仮に私がいなくなっても継続していただけるシンプルな考え方をお伝えしています。


 もう一度書きます。このシンプルなスタンスが結果的に「お得」なように見えるかもしれませんが、大前提は「損をしにくい」考え方であるとお伝えしたいです。

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 次に後者の「資産運用で儲けられそう」。

 残念ながら私は投資や運用のプロではありません。とはいえ、投資や運用の考え方が根付いていない日本においてはそれなりに知識や知恵を持っているつもりです。前者と同じく、できるだけ「損をしにくい」スタンスであるのは同じです。


 特に資産運用においては「儲けてやろう」「資産を運用で何倍に!」というよりも、分散や管理の面が強いです。

 マイナス金利政策の影響で金利が極端に低いとはいえ、普通預金や定期預金が嫌いなわけではありませんし、唖然としてしまうような投資性商品をつかんでしまわれることに比べれば普通預金や定期預金だけという方々でも特に問題ないと思っています。

 ただ私は遠い将来を考えると、普通預金や定期預金の行きつく先である日本の国債だけへの一極集中投資ではなく、さまざまな場所、さまざまな投資先に自分や家族のお金を置いておきたいと考えているだけです。


 結果として普通預金や定期預金よりも増えていれば嬉しいことですが、こればかりは将来になってみないと何ともわかりません。ただ、今の方針を継続することができれば過去の統計データからはおそらく普通預金や定期預金よりも増えているはずです。

 私には住宅ローンなどの借り入れはありませんが、おかげさまで11歳を筆頭に9歳5歳の子どもたちがいます。教育費の確保も必要ですから、預貯金全体で考えればそれほど大きな割合を投資・運用にまわしているわけではありません。


 また、基本的に遠い将来を見据えての分散や管理の方針を(ゆるく)徹底していますので、まとまったお金を一気に動かす一括投資ではなく毎月の積み立て投資がベースです。これは相場を見ての日々のやり取りではなく、自動的に毎月購入されている仕組みなのでタイミングも何もあったものではありません。(もちろんこんな仕事をしていますので、一部例外はあります)

 でも、それで良いと思っています。私には家族との時間があり、こうして皆さんと接する仕事があり、地域とのかかわりがあり、自分の時間も(今はほとんどありませんが)ある程度持ちたいです。
 買ったり売ったりするタイミングを図るために相場の情報を常にチェックする時間の確保は優先順位が高くありませんし、そういった相談をご依頼いただいてもご期待にお応えできる体制にありません。もちろん相場の情報を常にチェックするスタンスの方々を否定するつもりはありませんし、あくまでも考え方が違うというだけです。

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 人生は長いです。投資や運用はお金をたくさん持っている人だけの領域ではありません。遠い将来を見据え、分散や管理としての投資や運用は誰にとっても重要で、接したタイミングが早ければ早いほど良いです。

 ただし、必ず守っていただきたいことが1つだけあります。よくわからないもの、家族やたいせつな人に説明できないようなものには絶対に手を出さない。これだけは本当にお願いしたいです。


 こんな私ではありますが、お役に立てる機会がありそうでしたら嬉しいです。