特集「マンガでわかる 家を買うお金入門」の雑感。


 SUUMO関西 新築マンション2017.4.18号「マンガでわかる 家を買うお金入門」という8ページの特集を読みました。

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 特に気になった点を2つ取り上げます。

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 「年収で分かる!無理のない毎月のローン返済額の計算式」として、

 「年収(額面) × 25% ÷ 12カ月」 このように解説されていました。

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 よく私がお伝えする例を書いておきます。

 ・年収500万円と1000万円で同じ考え方で良いでしょうか。
 ・共働きで世帯年収1000万円あったとして、産休・育休やその後の働き方を考えた場合、年収は変わらない見込みで問題ないでしょうか。
 ・独身の年収500万円と子どものいる年収500万円の場合で、同じ考え方で良いでしょうか。

 もちろん考え出してみると答えはありませんし、正解もありません。一律にこういった指標のあるほうがわかりやすいですし、深く悩まずに進められることを望まれるケースもあるでしょう。

 でも、です。

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 「頭金を決める計算式」として、

 「貯蓄 - 引越し代など - 生活予備費 - 諸費用」 このように解説されていました。

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 2016年7月に取り上げた例から「引越し代など」が増えています。監修者が異なることで、変わってきているのかなと感じます。
 車の買い替えや子どもの教育資金など、想定されることがあるかどうかの確認は必須ですので、「5~10年程度以内に考えられるまとまった支出」を追加するのはいかがでしょうか。

 まとめるとこうです。
 「貯蓄 - 引越し代など - 生活予備費 - 諸費用 - 5~10年程度以内に考えられるまとまった支出」

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 「資金計画概算書」に記載されている修繕積立金が最近の傾向と比べるとしっかり高めに設定されていたり(反対に修繕積立基金が少し小さめ)、極端に低い変動金利だけでなく固定金利の情報が出ていたり、繰上返済の効果を丁寧に解説されていたり、このあたりは好感が持てました。

 とはいえ「変動金利のリスクとして5年後に金利が1%上がる場合」では、変動金利が1%上がることで世の中がどんなふうに変わっていることなのかわかったうえで書いておられるようには思えなかったり、年収700万円の例なのに年収510万円以下の人が対象のすまい給付金を取り上げて「わーっいろんなおトクな制度がある!」とコメントを入れていたり、なかなか悩ましいものだと感じました次第です。


 すべての人に厳密な資産計画が必要かと聞かれれば必ずしもそうだとは思いませんが、世間やネットに飛び交う情報や不動産販売や金融機関の担当さんのトークをうのみにするだけでなく、自分自身に当てはめてみて本当にそれで間違いなさそうか考えてみるというワンステップをぜひ加えてみていただきたいです。

 手前味噌ではありますが、不動産販売および住宅ローン契約に直接的にかかわらない第三者的なアドバイスを求めてくださるのであれば、お役に立てることも多いかと思います。

 京極・出町FP相談 住宅購入資金計画相談

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 今回も特集の前後にあった「駅徒歩数分で探すのはもうやめよう。」という郊外型マンションの宣伝特集も興味深かったです。
 駅近物件はそろそろ飽和状態ということでしょうか。いろいろ考えさせられます。
 
 ブログ内検索で「SUUMO」と入力して検索いただくと、これまで7回ほど取り上げている記事が出てきます。何かの参考になりましたら幸いです。


不動産投資ではなく不動産事業です。


 先日、某新聞の朝刊に不動産投資の広告が大きく掲載されていまして、気になることをツイッターで書き出してみました。





 ※ 「1億総有価証券投資」です。 



 ※ 「社会保障教育」です。 

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 不動産投資という表現がよろしくないと思うんです。正しくは不動産事業です。

 株式投資(有価証券投資)のことを株式事業(有価証券事業)とは言わないですよね。
 株式や投資信託を購入するのと不動産を購入するので大きく異なるのは日々の手間です。

 株式とは出資です。出資した後はもちろん事業の行く末に対して常にアンテナをはり、市場の動向も常にチェックし続ける必要があるとは思いますが、不動産のように入居者や修繕や確定申告などにかかる手間と時間は圧倒的に異なります。

 株式は企業が成長すれば価値も上がりますが、基本的に不動産(建物)は日本において年数が建てば下がっていくしかありません(もちろんメンテナンスやオフィスビルなどでは一概には言えないと思います)

 不動産投資は事業です。ぜひ知っておいていただきたいです。

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 知り合いが「空き家を買って不動産投資で収益を得る」スキームの本を「もらったけど読まないので参考になれば」ということでくださいました。著者の肩書は収益不動産経営コンサルタントと書かれていました。

 ざざっと読んでみたのですが、とてもお勧めできる内容ではありませんのでいつものような感想記事にはまとめません。


 とにかく設定がおかしい、変で、あり得ないんです。

・2015年の本なのに住宅ローンの金利は3%(マイナス金利導入前とはいえ高すぎる)
・25歳同士のメガバンク勤務夫婦、子どもが3歳と0歳の小さなときで既に年収1200万円
・妻は結婚時に退職し、以降は専業主婦。小遣いは夫5万円・妻3万円
・5年ごとに500万円の新車購入
・子ども2人は小学校からずっと私学かつなぜか私立の医学部
・それでいて、収入(所得ではない)のうち58%は貯蓄にまわす

 などなど、、、これを「親友のファイナンシャルプランナー」と試算したそうです。


 この”理想的な生活”に必要な生涯年収は8億円を超え、なので不動産投資をしましょうという、笑えない内容でした。

 他にも老後70歳から夫婦豊かに楽しく暮らすには毎月60~70万円は必要だそうで、1億円あっても14年弱で食いつぶす、これも「親友のファイナンシャルプランナー」と試算したそうです。なぜか公的年金の存在にさえ触れられていません。

 さらには70歳から毎月100万円の家賃収入を得られる物件を保有し続ければ、110歳まで長生きしても安泰だそうです。安定的に家賃収入を得るための賃貸物件をそんな高齢で維持し続けることができるのでしょうか…。

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 この本に登場するファイナンシャルプランナー(FP)が実在するのか架空の存在なのかわかりませんが、こんな助言をしている時点でFP資格を名乗らないでもらいたいとさえ感じます。

 そして、私の中で不動産投資を推奨するFPは「無い」存在です。もちろん不動産投資のすべてを否定しているわけではありません。普通の会社員さんが一念発起して安定的な不動産事業家に登り詰められた例は本当にあるでしょうし、ご両親をはじめとして親族から引き継がれた不動産を有効に活用されている例は日本全国多々あるわけです。
 信頼できる不動産業者さんも何名も知っていますし、つながりもありますので、不動産を勧める人=お勧めできないというわけではありません。

 でも、誰もが簡単に株式や投資信託を始めるような感覚で、不動産投資(事業)を始めてみるというのは絶対にお勧めしません。


 繰り返します。不動産投資とは不動産事業です。
 始めてみるのであれば、それ相応の心構えが必須です。

 京極・出町FP相談では、普通の会社員・普通の自営業者(私を含む)に対して、不動産事業は基本的にお勧めしていません。


”「持ち家」という病”読みました。


 ”「持ち家」という病 ~不動産と日本人・「これまで」と「これから」の経済学~”(2016年12月5日 第1版第1刷発行)を読みました。

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 著者は株式会社三友システムアプレイザル創業者で現在は相談役の井上明義氏。

 今年で80歳という不動産鑑定士の大ベテランさんのようです。念のために書いておきますが私は面識ありません。ネット上で信頼性の高い(と私が思っている)不動産業界の専門家さんが勧めておられたので手に取ってみました、という経緯です。


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■はじめに
■第一章 日本人はいつから「持ち家病」にかかったのか

・二〇一三年一〇月一日現在の日本の総住宅数は六〇六三万戸(中略)一九九八年からの一五年間で総住宅数が一〇〇〇万戸以上増えている。 p61


 東京都在住で家の購入を検討している35歳の「青年」と不動産の「先生」の会話形式で、とても読み進めやすいです。青年もかなり知識があって、なかなかあなどれません(笑)
 詳細は本書を読んでいただきたいのですが、身近な表現だと感じる「方荘棟番」(p31)といった昭和40年代当時のトレンドから難解な不動産業界ことなど、歴史が詳しく書かれています。

 ただ、舞台の中心は東京(関東)です。もちろん地方を含めた日本全体の視点もしっかり書かれているわけですが、自分自身や家族に当てはめた場合にどうなのかという視点を持つことも大事です。


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■第二章 バブル崩壊とともに消えたはずの「土地神話」
■第三章 「持ち家病」を後押しした不動産金融

・四度の地価上昇で染み込んだ土地神話 p72~

・住宅の需要を支えた住宅金融公庫 p112~
・バブルの一翼を担った金融機関と不動産鑑定士 p121~
・持ち家志向を支えた住宅金融 p134~


 本当に歴史がよくわかりますし、ある意味で金融の罪深さにも衝撃的です。


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■第四章 地方の不動産はすでにマイナス資産である
■第五章 オリンピック後に始まる東京のスラム化

・公共サービス被放置ゾーン p168~

・憧れのスイートホームの今 p202~
・生産緑地が地価下落の引き金を引く p218~


 都市(町)の「砂漠化」という刺激的な表現も使っておられ、地方都市の悩ましい実情も書かれています。
 砂漠化とは「人口が減少し街は急速に衰退していく。すると公共サービスの受けられる範囲も限定されていく。そのようなところを砂漠という」(p192)と定義されていました。

 p177あたりからの地方における市街化区域(街づくりを進めるエリア)と市街化調整区域(自然を残すエリア)の話も衝撃的です。
 この区分はファイナンシャルプランナー(FP)資格の課目「不動産」で出てきますし、基礎的な知識となるのですが、地方の実態は今後注意深く見守る必要があることを知らせてくれます。


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■第六章 新たな変動要因
■第七章 「持ち家病」から解放された社会
■おわりに


 賃貸にとても期待感のある主張が特徴的です。裏返せばそれだけ所有に対する負の経験と今後の負の見込みが大きいということなのだと感じましたが、だからといって日本中どこでも賃貸が良いのか、誰でも賃貸が良いのかは別の話です。

 1つだけ確信として言えるのは、もう確実に現代は「家を買うのが当たり前の時代ではない」ということを、もっともっと広く一般的に周知されている必要があるという点です。


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 相続の相談も増えてきている中で、数年前の相続講座でも地方の不動産について質問は何件も出てきていました。

 戦後は住む家の数が少なかったのでどんどん増やされた。それが景気対策にもなった。現代においてはその家の引き継ぎがどんどん始まっています。始まっているにもかかわらず新しい家が建て続けられ、新しい世代は新しい家を買い、古い家を中心に空き家と化しています。空き家も相続で引き継がれるわけです。

 この本で解決策がすぐに見つかるわけではありませんが、歴史を知ることで今が既にどういった状況であるのかを把握することができますし、短絡的に「持ち家=NG」ではなく、把握しておくことこそが重要で関係するのであればどうするのかどうしたいのかを早急に考えておく必要があるのだと思います。


 不動産売買におきましては自己責任でお願いします。

 

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


毎月13000円積み立てておく / 一戸建て修繕の実態調査結果


 2016年8月にネットに出ていた調査結果記事です。

 一戸建て修繕の実態、平均築年数35.8年で修繕費556万円 アットホーム調べ

 例えば10年後にはこんな補修が必要と見込まれるというような記事は検索すれば出てきますけれど、具体的に「これだけかかった」というデータは珍しいのではないでしょうか。


 詳細なデータはリンク先を見ていただきたいのですが、平均を単純に計算すると、35.8年で556万円ということは1年平均15.5万円、月あたりに均(なら)すと約13000円です。

 この調査には平米数の情報がありませんので本当にざっくりという言い方になってしまいますが、結論としては一戸建てに長く住まうために修繕を目的としたお金を毎月13000円積み立てておくと良いということになるかと思います。

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 リンク先のさらにリンク先にPDFファイルもありまして、築年数別の費用分布というグラフもあります。

 これを見てみると、極端な費用負担の発生している1500万円以上という比率が、30~34年で5.4%、35~39年と40~44年でそれぞれ7.5%あるわけです。

 これを例外として除外し、分布の中央値で試算してみたところこんな結果となりました。
 ・30~34年 全体平均 495万円 試算平均 約440万円(差 約45万円)
 ・35~39年 全体平均 583万円 試算平均 約490万円(差 約93万円)
 ・40~44年 全体平均 602万円 試算平均 約490万円(差 約112万円)

 大きな数字が平均を押し上げてしまうのはどんな統計でもあり得る話です。

 だからといって毎月の積み立てが少なめで良いと言いたいわけではありませんので、毎月13000~15000円を目安としておくことが将来の安心につながるように感じます。

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 調査対象の条件は、新築で購入して30年以上住んでいることですから若くても50代以上の方々ということですが、すでに退職金を受け取っている人も365名おられ、そのうち退職金を修繕費に使った人が239名、率にして約68%おられました。

 そして、その平均修繕額は394万円。
 将来それなりの心づもりが必要だということかと思います。


 個人的に驚いたのは雨漏りの件。
 雨漏り経験者が約45%もおられるということ。ほぼ2軒に1軒です。

 おおよそ屋根・外壁・壁紙/内壁が対象かと思います。
 それぞれ1回あたり平均で100万円・110万円・64万円という結果でしたので、合計すると374万円。大きな割合を占めますね。


 小ネタとして感じたのは給湯器。
 1回目修繕時の築年数平均が19.1年となっていました。

 一般的には10年くらいが寿命と聞きますので、かなり長持ちしていますよね。
 昔の給湯器は長寿命だったのでしょうか。

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 とある設計士さんに聞いたところによると次の情報をいただいたことがあります。

 ・最低限の修繕のための毎年積立金 建物価格の1%
 ・超長期にわたって維持していくための毎年積立金 建物価格の2%

 毎年2%ということは50年で100%ですから1軒分です。
 何か目安をと言われれば、このあたりの情報を参照していただくことになります。


 2016年の今、30年前の家は1986年建築、40年前は1976年、50年前は1966年です。
 これらの建物とこの10年ほどで建てられている現代の建物でどのように違うのかは、別途専門家の方々に確認してみる必要があると考えます。答えは聞く相手によって変わってくるのか、それとも同じなのか。いろんな専門家に聞いてみたいと思っています。

 一戸建を購入・建築される際には、その工務店さんや不動産業者さんに必ず将来の修繕目安(期間と金額)を確認してみていただきたいです。


 <参照web>
 ・2016/7/6 目安は月3万円 戸建て住宅でも「修繕積立金」 日経電子版
 ・2015/9/28 一戸建てにも「修繕積立金」が必要な時代がやってきた SUUMOジャーナル



特集「マイナス金利でどう影響?今の給料で変える額」の雑感。


 SUUMO関西新築マンション2016.7.19号「マイナス金利でどう影響?今の給料で変える額」という4ページの特集を読みました。

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 僭越ながらこれまでこのblogで取り上げてきた特集に比べると安定感のある内容でした。拝見すると監修にベテランFPさんのお名前がありました。
 住宅ローン返済だけでなく、管理費・修繕積立金・固定資産税など毎月別でかかってくる費用のことの解説も含まれており、「金利上昇に備えた変動型利用のテクニック」なども評価できます。

 とはいえ、2点書いておきます。

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 現在の住居費+住宅資金の積立-管理費・修繕積立金・固定資産税など
 =毎月返済額

 このように解説されています。

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 共働きで子どもなしのケースで、10万円+5万円-3万円=12万円
 片働きで子どもありのケースで、11万円+2万円-3万円=10万円

 このような試算が掲載されていました。

 まず2組とも「住宅資金の積立」をきちんと5万円・2万円もしているところが大きく評価できるところです。


 勝手ながら「住宅資金の積立」をしっかりできているケースをあまり見たことがありませんので、除外してみようと思います。

 共働きで子どもなしのケースで、10万円+ゼロ-3万円=7万円
 片働きで子どもありのケースで、11万円+ゼロ-3万円=8万円

 現実的な数字はこうかなと感じますが、いかがでしょうか。

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 もう一度、共働きを見てみます。
 
 共働きで子どもなしのケースで、10万円+5万円-3万円=12万円

 さらにボーナス返済も1回あたり10万円、年間20万円という設定です。


 このケースで怖いのは、妻が妊娠・出産することで一時的に収入ダウンしてしまうことであり、さらに復職したとしても時短勤務等で元の収入に戻るまでそれなりの年数がかかるケースの方が多いのではないかというところです。

 その期間も毎月12万円+ボーナス返済年間20万円で問題ないのかを考えていただきたいところです。

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 次に頭金の考え方です。

 貯蓄-諸費用-手元に残すお金=頭金

 このように解説されていました。

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 手元に残すお金については「6ヶ月~1年分の生活費・レジャー費・趣味のためのお金など」と書かれています。

 この「など」には教育資金が含まれているのかどうかが不安です。

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 というように書いていると、住宅ローンおよび住居費に密接に関わるような項目の費用だけで住宅購入の資金計画を考えることに難しさを感じます。

 「今の給料で買える額」として「生活レベルを落とさない」「週1の外食続行」という小見出しも目に入ります。


 不安をあおるつもりはありませんし、いわゆる住宅ローン破綻してしまう人というのはごくごく一握りの方々であるのも間違いないと思っています。多くの方々は多少の苦しい時期があったとしても何の問題もなく返済が完了するものと思っています。

 大事なのは返済完了までよくわからない状況が続いてしまうことをさけ、おおよそ見通しを立てることができておくことの安心感でしょうか。その安心感だけのために相談料をかけるのかという視点があっておかしくないとは思いますが、専門性を持ってその安心感を提供できるのが有料の個別相談であると信じています。

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 特集の前後にあった住み心地鑑定という企画おもしろかったです。
 
 ブログ内検索で「SUUMO」と入力して検索いただくと、これまで6回ほど取り上げている記事が出てきます。何かの参考になりましたら幸いです。