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同じ公的年金でも活動域が違う / FP有志の集まる勉強会に参加してきました。


 先日、ファイナンシャルプランナー(FP)有志の集まる勉強会に参加してきました。
 おおよそ半年に1回開催されている勉強会で、私は1年半ぶりの参加で通算5回目でした。

 前回の記事でも書いていまして、たまに言っていることですが、普段FPのつながりをあまり重視していない私ですので、この機会は本当に希少だと思っています。

 今回は公的年金相談の経験豊富な社会保険労務士資格をお持ちの女性FPによる公的年金の基礎知識のおさらい+αの内容でした。

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 社労士として相談対応されている公的年金は当然ながらリタイアに近い、もしくはリタイア後の世代の方々です。私が普段対応している中心層は現役世代です。

・在職老齢年金
 公的年金を受け取りながら会社員として働く場合の調整
・高年齢雇用継続給付
 60歳以上65歳未満で賃金が大きく減った場合に出てくる雇用保険の仕組み
・雇用保険の基本手当と公的年金の調整
 いわゆる失業保険の件です。

 このあたりは私の相談ではまずめったに出てきません。在職老齢年金がまれに…くらいです。雰囲気が大きく違うので非常に興味深く聞かせていただき、私もこれまでのいくつかの経験を思い浮かべながら、いろんなケースがあるものだと改めて感じました次第です。

 <過去参照記事>
 ・”お金にもセカンドオピニオンを”の生まれたエピソード
 ・空白だった約10年分の国民年金の記録が認められました。


 気になった点を発表後に質問させてもらいました。

 制度の詳細はとってもよくわかったのですが、「そもそも年金って受け取れるの?」というような質問が出てきた場合はどのように対応されているのか、そういった資料を発表に含めているときはあるのか、この2点です。

 1つめには「義務ですから」で押し通しておられるということでした。時間の限られた相談対応ではそれが現実的かなとは感じます。

 2つめは「公的年金の内容で若い世代向けに講師を務める機会はこれまでになかった」ということで、私との活動域が違うこともよりわかりました。

 <過去参照記事>
 ・「お話を伺って「背景」の説明に50分取られた理由がわかりました。 How to におさまらないお話を伺えてとても勉強になりました」 / ねんきん定期便の読み方を知って将来資金を考える 公的年金1日講座

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 とりあえず年金を受け取ることを「もらう」と表現されていることが多かったのは残念でした。でもこれも、なかなか難しい問題なんですよね…

 同じFP資格を持っていてFPとして活動する場面があっても、専門が違ったり他の士業資格を持っているなどで本当に違いが大きいと感じました次第です。私は私で変わらずがんばらねばです。


 発表者のMさん、皆さま、ありがとうございました!!



各家計に置き換えると考えやすい


 2019年1月に報道記事で取り上げられていました公的年金関連の内容をいくつかご紹介します。



 2019年度は4年ぶりに公的年金受給額が増えます。0.1%ですけれど。

 公的年金の受給額は物価や平均賃金が上がれば増えます。今回は0.6%の上昇があったのですが、平均余命や出生率なども合わせて加味した「マクロ経済スライド」という仕組みで0.1%となりました。

 賃金(給料)が上昇していない(減っている)のに仕送り(年金受給)は同額 = 現役世代がしんどい

 これは各家計に置き換えると考えやすいので多くの人に理解してもらえると思います。
 でも、これまで賃金が下がっているのに仕送りは同額という時期があったんです。それを調整する意味合いから今回の率となりました(厳密にいえばもっと説明が必要ですが、長くなるので省略します)


 結果として、0.1%上がって良かったです。これまでと同額でギリギリ、過去分の調整とはいえマイナスになってしまったら報道各社の根拠のないあおり記事が増えていたでしょうし…。

 ちなみに、この受給額。いわゆる高齢者の受け取っている老齢年金だけれはありません。遺族年金・障害年金も同じように調整されます。
 公的年金は社会保険による保障の仕組みですから、この受給額が減ることで本当に生活が苦しい・しんどい状況になってしまうとすれば、それは公的年金を悪者にするのではなく、早く福祉に助けを求めてください。この流れ、大事です。


 マクロ経済スライドは「受給者から孫・ひ孫への仕送り」です。
 詳しくはこちらの3本がお勧めです → 「次期年金制度改正の課題を考える」記事のご紹介

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 次の2つの記事も良い!です。





 3つめの記事から大事な内容を引用します。

(ねんきん定期便の)見直し後は、「老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方の繰り下げを希望される方は、このハガキの提出は不要です」という一文を入れることにした

在職老齢年金制度だけを取り出して、高所得者優遇というのは視野の狭い議論

生産年齢人口(中略)15歳~64歳という従来の区分けが、実社会とそうとう乖離しているのは確か。この昭和モデルでは対応できない


 私の記録的な意味が強いのが申し訳ないのですが、年金不安をあおったり、よく調べもせず信用できないことを発信してしまう方々には冷静に真っ当な記事を読んでもらいたいです。


「適切に維持」の落としどころ


 少しも調べないまま、公的年金はダメだ破綻するとの投稿が不定期ですがツイッターでは流れてきます。

 しかも、数千も数万もRT(リツイート)されてることが多いんです。数十や数百なら仕方ないかなと思える程度なのですが、数万は悲しくなってきます。

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 社会保険料(特に厚生年金)が高すぎるから自分で貯めるとかそのお金で民間の保険商品に加入するとか主張されている投稿もあります。

 自分自身や身近な人がたまたま公的な保障で助けてもらわなくても大丈夫な状況にあるという良い話であるだけで、大丈夫じゃない状況にならないと理解できないのはある意味で仕方のないことかもしれません。


 数十年以上先の公的年金や健康保険・国民健康保険がどうなっているかわからないので、保険商品である個人年金保険や入院保険に加入しておかねばという投稿もありました。

 国よりも圧倒的に小さな組織である保険会社のほうを強く信じてしまっていることに違和感を持ってもらいたいです。


 現代における社会保険の変遷から、いわゆる社会的弱者には手厚く反対に高所得者には厳しく変わっていることがわかります。社会的弱者を切り捨ててしまうと最終的に全額税の福祉(生活保護など)に行き着きます。国のふところで考えれば被保険者の負担する保険料も含んだ社会保険を維持する方針で当然です。

 将来、国が公的年金や健康保険・国民健康保険などの公的な保障を適切に維持できないような社会に仮になってしまっていた場合、保険会社など金融機関が今と変わらず運営できているのか、固定された保険金額(年金年額〇〇万円や入院日額5000円など)がはたして意味のあるお金になりえるのかという視点も大事です。

 極端に書くと、日本という国が無くなってしまうような事態が起これば公的な保障が維持できるとは思えません。ただ、そんなときに民間の金融機関が何事もなく事業を維持し続けることができているのかという点です。


 もちろん今の公的な保障が万全だとか何も不満が無いってことではないです。ポイントは「適切に維持」の落としどころです。
 現代のような超高齢者向けの過剰な医療(保障)が維持され続けるとは思えません。本当に困難な状況にある若者(現役世代)にはもっと手厚くあってもらいたいです。

 ただ、将来のことはわかりません。それでも特定の用途に縛られた保険商品を含む金融商品の活用は最低限が望ましい姿だと信じています。(不要とは言いません)

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 マイナスの内容を発信してしまう人がある一定数存在するのは致し方のないことです。
 それでも、RTなどで拡散することは恥ずかしいことなのだとわかってもらえるのは何年先になるのでしょうね…


 公的年金についてマイナスな発言をする人には必ずこの本を勧めてください
 ”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました。

 きちんと読んだうえで、それでもなおマイナスな発言を続ける人は公的年金がまともであっては困る余程の事情をお持ちなのだと思います。



後者では読まれませんし、買われませんし、提案できません / 公的年金についてのまとまった記事のご紹介


 10月の連載なのですけれど、今回も公的年金についてオススメ記事のご紹介です。
 前回と同じく3本ともが長文で、司会+2人での対談から司会+3人での座談会となっています。相変わらず中味が濃いです。

 「第3回年金部会・第6回経済前提専門委員会の議論を巡って」というタイトルを見ても、なんのこっちゃわからないですよね。
 とりあえずこれまでと同じく、私のツイートの引用部だけでもまずはぜひ読んでみていただきたいです。





 追加の引用です。

 「人というのは、たとえば企業経営者が20年後の会社はこうなるといくら力説しても信用しないのに、政府に対しては20年後の姿を描けと要求するんですね。政府に対する過剰な期待がある」「予測が可能であるとの思い込みを持ってしまう、特殊日本的な事情」



 こちらも追加の引用です。

 「高校生のときは、公的年金制度はあてにならないと思っていた人は手を挙げて、と言うんです。そうすると、かなりの人数の学生が手を挙げるんですね。でも、30分くらい、これは長生きリスクの保険だとちゃんと話すと、みんな理解してくれます」

 「むしろ、どうして50年後にも年金が支払われるのかということ。それは50年後も日本という国と日本の経済があるからなのです。その時にあなたが生きているから、年金が支払われるだという説明でいいと思う」

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 今回の題材となった資料のリンクはこちらです。

 平成30年7月30日 第3回社会保障審議会年金部会
 ・資料1「諸外国の年金制度の動向について」
 ・資料2「年金額の改定ルールとマクロ経済スライドについて」

 超長文の記事なので3本6ページとはいえ、1ページの文量と専門性から本1冊読んだくらいの読後感あります。でも、めっちゃ大事なことが満載です。会員登録してでもぜひ多くの人に読んでもらいたいです。


 そして、いつも書くことですがやっぱり書いておきます。

 公的年金をはじめとした社会の仕組みについて不安をあおるのは簡単です。一部分だけを切り取って、あれやこれや書くのは本当に簡単だからです。
 それらを間違っているとだけ伝えるのも簡単なのですが、なぜ間違っているのかを説明しようとすると大変な長文になってしまうんです。これは確かに負の部分だと思います。でも、意味のないあおり記事は単に不勉強なだけなんです。


 不安ですよね、心配ですよね、もうダメですよね
 大丈夫ですよ、安心してくださいね、何も問題ありませんよ

 後者では読まれませんし、買われませんし、提案できません。
 これがすべてです。


その条件を当てはめた場合に世の中がそもそもどんな感じなのかも同時に伝えてもらわないと何の信ぴょう性もない


 日経ビジネス2018年10月8日号特集
 「無定年」時代 年金激減後の働き方
 
 ログインしないと全文は読めないのですが(私は定期購読していますので誌面で読みました)、ログインしてまで読むほどの内容ではありません(すみません。

 でもなぜブログで取り上げるのかというと、根拠のないもしくは根拠がデタラメな年金不安・年金不信をあおる記事が10年前に比べると減っているとはいえ、それでもこれだけひどい内容が出てくるのかという残念ながら好例だと感じたからです。

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 本誌に掲載されていた図です。

 181022_02
 ※ クリックすると全体が表示されます。

 公的年金の積立金は約180兆円。これが棒グラフの通り、これから約100年かけて取り崩されていくという厚生労働省の試算です。これは問題ないです。

 白の線グラフ。本誌独自の試算ということで、あっという間にあと40年ほどで枯渇するというもので、タイトルの「年金崩壊カウントダウン」と合わせて、強いメッセージ性のある「あおり記事」となっています。


 私が気になったのは前提条件です。右上に小さな字でたくさん書かれています。

 「物価と賃金の上昇率を2013~2017年平均のそれぞれ0.44%」
 
 厚生労働省による試算の値がそのまま当てはまるかどうかはもちろん将来になってみないとわからないことですが、とりあえず言えることはこれです。


 これからの将来がずっと、物価と賃金の上昇率が0.44%というのは公的年金の心配をするより前に、大前提として日本の社会の景気感がずっと低いままということで、そんな社会だったら公的年金もどうしようもないんじゃないの?という感覚です。

 バブルのときのような好況感やずっと右肩上がりの時代がこれから起こるのか起こり続けるのかでいえば間違いなくNOでしょう。だからといって、悲観的過ぎる条件を公的年金だけに当てはめてあおるのは筋が違うとしか思えません。

 その条件を当てはめた場合に世の中がそもそもどんな感じなのかも同時に伝えてもらわないと何の信ぴょう性もありません。公的年金以外に影響がない!なんてことは考えられません。

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 この雑誌は経済誌です。読者層は(表現が適しているかどうかはわかりませんが)経営者・役員・管理職クラスや平均以上の収入を得ている方々を対象にしているはずです。(私も読んでいるくらいなので実際にはわかりませんけれど)
 そんな方々でもおそらくこういった前提条件は自分自身の専門外であれば確認しないでしょうし、結局はタイトルや見出しに踊らされてしまうのだろうと思います。

 細かな数字の検証はどなたか他の専門家に譲ります。大事なのはこういった記事(見出し)に踊らされない基礎的な知識です。
 小学校・中学校など義務教育課程において公的年金をはじめとした社会保障(社会保険)教育が必須になってもらいたいと願う私です。


 何度でも何回でも次の記事の紹介リンクを貼り続けます。

 <過去参照記事> ”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました。

 公的年金についてマイナスな発言をする人には必ずこの本を勧めてください。