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社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【講演録2】頼りあえる社会


 2018年4月に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成28・29年度版「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」を読みました。

 前回、第8回目の記事はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【講演録1】成熟社会を理解する


 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ(笑)読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。

 前回から講演録です。2番手の井出教授の報告書はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第4章】対人社会サービス

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■講演録2.分断社会を終わらせる~「頼りあえる社会」のための財政改革~
 井出 英策 氏

・1997〜98年に日本経済が大転換(図表3) p69

・アメリカ、イギリス、日本は、アングロサクソンモデル、つまり小さな政府モデルです。基本的な生活は自己責任で、限定的に貧しい人たちの生活を政府が保障する社会では、人々の生活水準が落ちていくときに、低所得層や移民に対する反発が非常に強まります。なぜならば自分たちが負担者であり、低所得層や移民が受益者になっていますので、その人たちを批判すること、叩くことが政治的に意味を持つようになります。だからこそ、そういった国々ではポピュリズムが機能する p71

・「再分配の罠」(中略)私たちの常識で言うと、困っている人を助ければ格差は小さくなるはずなのですが、困っている人を助けている社会は、むしろ相対的貧困率は高く出てしまうわけです。逆にみんながもらっているほうが、相対的貧困率は低く出る p71

・医療であれ、教育であれ、住宅であれ、子育てであれ、介護であれ、これはすべてサービスだということ(中略)あらゆる人々を受益者にしてはどうか。つまり所得制限をつけずに、すべての人を受益者にしたらどうなるのかという提案 p72
・貧しい人が納税者になり、富裕層が受益者になったとしてもなお、格差を小さくすることは可能 p73

・生活保護はなくなるのがいちばん理想的だと思っています。なぜならば、お金を人にあげるという行為は、人間を疑心暗鬼にします。つまり不正受給に対する疑念を生む p74
・社会的弱者のレッテルを張られ、恥ずかしい思いをして救済してもらうというモデルではなく、人々の生活をサービスで保障していくことによって、だれもが当然の権利としてサービスを利用する p75

・これまでのように、困っている人を助け所得を公平にするのではなく、あらゆる人々がサービスの受益者になり、堂々とその権利を行使することのできるような、いわば人間の尊厳を公平化するようなモデルを目指していくべきではないか p75
・「救済型の再分配」「共生型の再分配」 p75

・あらゆる人々が受益者になるからこそ、税を払う。みんなにとって必要なものだからこそ、みんなが税を払う。これが基本ではないのか p76
・人生のなかで極端にお金がかかる山が4つぐらいあると思うのです。そのときに備えて人々は貯蓄をし、そして消費を手控えているというのが今の状況 p76

・目的は将来不安をなくすことであって、成長は手段にすぎない(中略)この成長を手段から分配に置き換えようということです。分配の仕方を作り変えていくことによって、将来不安をなくす。そしてそのことが、結果的に経済成長も導いていくのではないのかと p79

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 引用の最後から2つめの部分がすべてだと思います。原文のp76は全文必読と言い切りたいです。

 例えば子どもの教育費が保育園/幼稚園・小学校・中学校・高校・大学すべて無償(もしくは最低限の一律負担)であるなら、親である比較的若い世代は将来の教育費に大きな負担を感じることなく、今の消費(需要)にお金をまわせます。「頼りあえる社会」です。
 例えば高齢になってからの医療や介護がすべて無償(もしくは最低限の一律負担)であるなら、将来に大きなお金の不安を持ちにくくなり過剰な貯蓄にならず、今の消費(需要)にお金をまわせます。「頼りあえる社会」です。

 その代わりに消費税がもっと高くなったりするわけですが(講演録では例として15%)、個人的には何も問題を感じません。
 医療・介護・教育(保育)などの対人社会サービスが拡充されることで雇用が生まれます。この視点も大事です。


 教育でいえば公立と私立、介護における老人ホームでいえばその施設の差など、比べ始めればきりがありません。現時点で公平性が高いと考えられる消費税が上がったとしても、社会における基本サービスが無償(もしくは最低限の一律負担)となることが大きな分配(需要)の仕組みであると理解できます。

 <次回> 講演録3.全体連関のなかでの社会保障