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今まで負担した分は返してもらう?今後の強制徴収もやめてもらいたい?


 参議院選挙前に報道でにぎわっていた「老後2000万円」の件、報道記事もひどかったですが、それをきっかけにツイッターでの誤った理解がこんなにも広がっているものかと感じました。
 いまだにそれを題材に告知をしている無料セミナーなどもありますが、1つだけ書いておきます。

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 公的年金保険の老齢給付(将来受け取る年金)について「今まで負担した分は返してもらい、今後の強制徴収もやめてもらいたい」との発信を何度か見かけました。
 報道や専門家ではなく、一般の人(匿名)のツイートです。あおるつもりはありません。よく考えてみてもらいたいんです。

 公的年金保険は全世界的に賦課(仕送り)方式が主流です。今払っている保険料は自分たちの将来のために積み立てているのではなく、今の受給者(高齢者)に渡されています。現役世代(被保険者)が受給者を養っているんです。

 ちなみにその対象には遺族給付・障害給付も含まれます。

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「今まで負担した分は返してもらう」?

 「今まで負担した分は返してもらう」ということは、これまで年金を受け取っていた受給者(両親や祖父母)から返してもらう必要があります。

 自身の両親や祖父母は受け取っていた年金相当額を返せそうでしょうか?
 どこまでさかのぼって返してもらうのが良いでしょうか?
 保険料は労使折半ですので、一緒に負担していた企業にも返すのでしょうか?


 遺族給付や障害給付の受給者からも返してもらう必要があります。身内や身近に該当する人がおられるかわかりませんが、受け取っていた年金相当額を返してもらえそうでしょうか?
 1人暮らしのおばあちゃんはおじいちゃんの遺族年金で生活している人がそれなりにおられるはずです。問題なく返してもらえそうでしょうか?

 該当する受給者のうち一定数の方々が仮に問題なく返せる資産をお持ちだとして、返せない方々はどのように救済すれば良いでしょうか?税金?
 ということは税負担が今以上に大きくなってきそうです。

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「今後の強制徴収もやめてもらいたい」?

 「今後の強制徴収もやめてもらいたい」ということは、これまで年金を受け取っていた受給者(両親や祖父母)が受け取れなくなります。自身の両親や祖父母を養っていくことは可能でしょうか?

 企業の保険料負担もなくすのでしょうか?なくすとしたら企業の保険料負担分も自身で両親や祖父母を養っていくことになります。可能でしょうか?
 企業負担をなくさないとしたら、どのような割合で受給者へ渡すのが問題にならないでしょうか?


 仮に問題なく養っていける資産や稼ぎをお持ちだったり兄弟姉妹がたくさんおられて1人あたりの負担が小さいとして、両親や祖父母を養っていけそうにない方々はどのように救済すれば良いでしょうか?

 自分自身や身内が遺族給付や障害給付を受ける事態となった場合も問題なく生活していけるだけの資産と稼ぎをお持ちでしょうか?
 遺族給付や障害給付を受ける事態となった場合に生活していくのが困難となった方々はどのように救済すれば良いでしょうか?
 いずれも税金?ということは税負担が大きくなってきそうです。

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上の世代を養いながら自分の資金を確保?

 厚生年金保険料・国民年金保険料は、社会保険料控除として全額が所得控除の対象です。これが無くなったとすると、手持ち資金が増えるとしても所得税・住民税の負担が増えます。所得税・住民税が差し引かれた後のお金で自身の将来資金をある程度確保し、両親・祖父母を養うわけです。

 遺族給付と障害給付は残して老齢給付だけ無くせば良いというような投稿も見たことがあります。
 平成29年度の国民年金と厚生年金の年金総額のうち、遺族給付と障害給付の合計は全体の約15%でした。厚生年金保険料・国民年金保険料から15%相当分の負担が減ったとして、残りの85%から所得税・住民税を引いた額で両親や祖父母を養うわけです。


 自分が高齢となったとき、子どもや孫は自分のことを養ってくれそうでしょうか?子どもや孫に頼らないという方々は、現在両親や祖父母を養いながら自分自身の将来資金すべてを確保できそうでしょうか?
 できそうにない人はどのように救済でしょうか?税金でしょうか?

 というように、自己責任という言葉では済ますことができない状況になってしまいそうです。今よりも極端に消費が少なくなる社会になりそうです。だって将来が不安で仕方なくなってしまいますものね。消費が少なければ景気は悪くなりそうです。給与も伸びにくいように思います。税収は増えないでしょう。何もかも訳がわからなくなりそうです。

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経済と社会保障は表裏一体

 このように経済と公的年金保険をはじめとした社会保障は表裏一体です。社会保障が安定しているからこそ、私たちは(比較的)自由な経済活動を営めるんです。(比較的)経済活動が安定しているからこそ、公的年金保険をはじめとした社会保障を維持できるんです。


 元の投稿を発信している人はおそらく「自分は問題ない」という視点だと思うんです。健康で稼ぎがあって資産をお持ちで不自由なく生きていける知恵もお持ちのはずです。

 でも、現代社会において「自分は問題ない」だけの視点はよろしくないです。両親・祖父母・子ども・兄弟姉妹、手の届く範囲に視野を広げるだけでも、本当に問題ないのか気づける点があると思うんです。
 最近はさまざまな家庭環境があると思いますので、身内のことを考える必要がなく自分1人のことだと思われるようでしたら、友人や職場の同僚やお隣さん・ご近所さんを考えてみてもらいたいと思うんです。

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 公的年金保険は幅広い社会保障のうちの1つでしかありません。医療・介護・雇用・福祉、さまざまな保障の整った先進国だからこそ、全体として(世界を見渡せば圧倒的に)安定した生活を送れているのが日本という国だと感じます。

 不安を口にするのは悪いことではありません。よくわからないけれど批判するというのも一定は仕方ないです。すべてダメだとされたらそれこそ表現の自由がどうのとなってしまいます。
 でも、それだけ不安があってよくわからないのであれば学んでみる一歩が必要だと信じています。ネット検索したり、他の人や専門家に聞いてみるのもいいでしょう。でも、1人の意見ではダメですし、それらの意見の根拠に信頼性があるのかの確認も必要でしょう。


 私はまず社会の仕組みを正しく知ることが大事だというスタンスです。もちろん私もまだまだ知らないことだらけです。一緒に少しずつでも前に進んでいきましょう。

 公的年金保険についてマイナスな発言をする人には必ずこの本を勧めてください。
 ”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました。

 <参照ブログカテゴリ> 社会保障(主に公的年金保険以外)

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。