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社会保障ワークシート【発展】公的医療保険って何だろう?


 厚生労働省webサイトで紹介されている社会保障ワークシートを読みました。

 私は常々「投資教育・金融教育よりも社会保障教育を」と発信しています。難易度が高いとはいえ、義務教育の教科書に”ちょっと気になる社会保障 V3”が採用されてほしいと思うほどです(リンク先は増補版の感想記事)

 前回、第5回目の記事はこちら。
 社会保障教育のワークシート【発展】政府の役割と社会保障


 7種類のワークシートを順に取り上げる第6回目です。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。主には「指導者向け活用マニュアル」の文章を紹介しています。

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■ワークシート【発展】公的医療保険って何だろう?

・「公的な医療保険制度がなぜ必要なのか」をテーマに、幅広い議論が展開できるように作成 p1
・指導者も自説を押しつけることなく、ともに議論を深めるようなスタンスで取り組んでいただくようお願いします p1
・社会保障制度の意義や社会の仕組みなどに関する基本的な考え方を養うことができれば、大きな学習の成果であると考えられます p1


1.知ってる?日本の医療保険

・正確な解答は必要ない p3
・病院にかかった際に領収書を確認すると、いくら分の医療サービスを受けて、いくら負担したのかが分かる p3
・自治体によっては、子どもの医療費負担をさらに軽減するために財政支出をしている p3


2.公的医療保険の意義とは

・リスクに応じて保険料を変えたり、加入制限を設けることは、利益を追求する民間会社では当然のことであり、市場経済原理が展開された素直な姿であることを理解させる p5
・この設問の設定のような社会は、いわゆる「格差社会」につながるものということを認識させる p5
・ここまでの流れを認識させた上で、「こういう社会をどう思うか」など問いかける。様々な意見があってよいが、次の設問に移る上では「こんなに弱者に厳しい社会は大変だ」という見方があるとよい p5
・「弱者に優しい」という特徴を持った会社が、市場経済原理に任せた社会の中で、どのような経過をたどるかを考えさせることを通じて、公的な制度の役割を認識させる p7
・「民間の会社では公的部門と同様の役割を果たすことは難しい」という事実を認識させる p7
・世界でもさまざまな考え方があり、各国により制度は異なっていることに留意 p8
・結果として、「格差社会」ではなく、お互いに支え合う「全員参加型社会」に近づく p8
・公的な制度だからこそ所得再分配の機能を組み込み、社会的弱者を排除せず、皆で支え合う仕組みができる p9
・医療保険制度は一人ひとりの生活の安定に資するとともに、社会全体の安定を支えているという側面もある p9
・これらを理解した上で、これからの社会や、それを支える制度がどうあるべきかを考えることができるようになることが望ましい p9


<ファクトシート>

1. 「生涯にかかる医療費はいくら?」

・「貯金しておけばいいんじゃないの?」という考えに対しては p11
・自分が大きな病気やケガに見舞われるかどうか、そしてそれがいつか、ということは誰にも分かりません。もちろん、全ての人に貯金を義務付けることも困難 p11


2.「医療保険制度の負担のイメージ(サラリーマンの場合)」


3. 「日本とアメリカの医療保険の違い」

・社会保障制度は、その国・その社会の価値観を反映する、という側面があることを理解する p15


4.「日本とアメリカの医療費比較」

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【発展】には第4回・第5回も含めて、「指導者も自説を押しつけることなく、ともに議論を深めるようなスタンスで取り組んでいただくようお願いします」(p1)とあります。
 学校の先生方(ここでは高校の公民科の教員)は社会保障の専門家ではありません。教員自身も社会保障をしっかり学んでいるケースはほとんどないわけですから、深くまで詳細を理解できていなくて当然です。となると一般の人と同じで報道で目にする情報で印象を持ってしまっているケースもあって当然です。なのでこの文章はとても大事です。

 生徒への配布1枚目(リンク先「ワークシート・ファクトシート」)の設例があったうえでの計10個の質問。他の回と同じことを書くことになってしまいますが、社会保障(今回でいえば公的医療保険)の仕組みを学ぶ機会のなかった大部分の大人・社会人こそ、しっかり読んで考えてもらいたい内容です。


 公的年金保険だけが高齢者や社会的に支えの必要な方々(いわゆる社会的弱者)を支える仕組みではありません。今回の公的医療保険だけが社会保障というわけでもありません。1つを議論するためには他の仕組みとの兼ね合い・整合性・バランスが重要ですので、切り貼りされた報道に一喜一憂することなく、あおられることなく社会保障の本来の役割を認識しておきたいものです。

 今の医療の仕組みが最適でベストで何も問題がないというわけではありません。公的医療保険についてさらに深く知ってみたいという場合には(感想は書けていませんが)権丈先生のこちらの本が超絶にお勧めです。

 

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 注文をつけるとすれば次の3点です。

・活用マニュアルp9「各国の医療制度の例」で英国(イギリス)は「医療は国の制度として原則無料で提供(保険制度ではない)」とだけ情報提供があります。全額税でまかなわれていることのメリット・デメリットの情報を加えてもらいたいです。日本の仕組みより優位に見えるだけなのはよろしくないです。(医師に診察してもらえるまで相当な日数かかるなど聞いたことがありますが、実際に私が直接入手した情報ではありませんので控えます)

・毎年とは言いませんが、数年に1回はデータを更新してもらいたいです。国民医療費・健康保険料率・人口や米国の医療制度などが2011-2012年の情報です。

・高額療養費の仕組みも2015年以降区分が増えています。「一般的な所得」より低かった場合には負担がさらに小さくなっている情報も大事だと思っています。

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 第6回目として取り上げましたのは社会保障教育ワークシート【発展】社会保障って何?です。

 私は義務教育におけるまっとうな社会保障教育が強く必要だというスタンスです。

 <次回> 社会保障ワークシート【発展】公的年金