”「抗がん剤は効かない」の罪”読みました。


 ”「抗がん剤は効かない」の罪 ~ミリオンセラー近藤本への科学的反論~”(2014年3月25日発行)を読みました。著者は日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科医の勝俣範之さん。(ツイッター @Katsumata_Nori

 まず本から引用させていただくと、腫瘍内科医とは「がんを専門とする内科専門医」「抗がん剤を専門とはしていますが、私たちの大事な役割は、がん診療全般について”良いナビゲーター”の役割をすること」「がん患者さんに寄り添い、安心して最善の治療を受けてもらうこと」とあります。

 この本はメディアを賑わせている「抗がん剤は効かない」「(がんの)放置療法」について、「誤った見解を指摘し、医学的に正す」「がん患者さんが少しでも安心して過ごす助けとなること」を目的とされています。

 いつも通りアウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。
------------------

■あとがき

・患者さんが普段、目にすることの多い情報は、「がんに効く免疫療法」「体にやさしいがん医療」「がんが消える食事療法」などであり、医学的にはまったく正当性のないものばかりです。このような情報を、大手メディアも、ろくに医学的な検証もせず、たれ流しているのが現状です。(p195)


 本を紹介するときに私がよくお勧めする方法なのですが、「はじめに」を読んだらそのまま第1章へ進むのではなく「あとがき(おわりに)」を読むこと。
 
 医学・医療と金融を比べるのは間違っていると言われるかもしれませんが、あえて書きます。メディアに載る情報が一般的には信頼性が高い傾向にあるのは同じだと感じます。それを悩ましいと感じるかどうかは人それぞれだと思いますが、日本人は特にテレビや新聞などのメディアから発信されている情報を信じやすい傾向にあるというアンケート結果も見たことがあります。

 わらにもすがる思いを否定するつもりはありません。ただ、専門家に確認するという1ステップがあってもいいと思うのです。

------------------

■1章 ”抗がん剤は効かない”のか?
1 抗がん剤が「効く」「効かない」とは?
 そもそも抗がん剤とは何か(p12~)
・抗がん剤がすべての患者さんに効果があるかと言うと、そうではありません。すべての患者さんを完治させることができるわけでも、すべての患者さんを延命させることができるわけでもありません。だからといって、すべての抗がん剤が100%効果がないというわけではありません。効果がある場合もありますし、効果がない場合もあるのです。


 おそらく今まさに抗がん剤治療を受けておられるサバイバーの方々からすると、不安になってしまう文章かもしれません。世の中には、これをやれば100%の確率で大きな効用を得られるというものも当然にあるのだと思います。
 p22には「各悪性腫瘍に対するがん薬物療法の有効性」の一覧が載っています。がん種によって抗がん剤の役割は違ってくるという事実をそもそも知らない人が多いと思います。A群の治癒が期待できる、B群の延命が期待できるについては、がん情報サービスのサイト「がんの薬物療法」にもありました。リンク先の項目8と9のあたりです。


 私がいつもサポートさせていただいている精巣腫瘍患者友の会の方々は、A群ですので抗がん剤によって「治癒が期待できる」対象です。サポートさせていただいている件は、このブログの右列にあるカテゴリ「がんとFP」からご覧いただけます。 

------------------

■2章 がんには”もどき”と”本物”がある?
3 ”近藤理論”はなぜ医学界で話題にならないのか
 患者さんのための医療を実現するために(p109~)
・医師や研究者による医学論文は、現在、インターネットで簡単に検索することができます。近藤医師の論文は(中略)、「がんもどき理論」「抗がん剤は効かない」「放置療法」に関しては、学術論文としては、ひとつも見つかりません。もっとも、実際に海外の医学誌に投稿されたのかもしれませんが、医学的に全く根拠がないために受け付けてもらえなかった可能性があります。医学雑誌では、冷静かつ客観的な主張が求められますが、一般誌に寄稿された近藤氏の記事は、感情的な表現や誇張的な表現が数多く見られます。(中略)論文の多くの解釈や引用が、医学的・客観的には適切でありません。


 徹底的かつ客観的に論破されている文章に感動を覚えます。25年前の直接的なエピソードがあるからこそ単なる論破ではなく、考え方の根幹を知っておられるからこそ正しく情報発信して欲しいという想いがあふれています。

 医学用語・学術用語を使った部分もたくさんありますので、確かに一般には難解かもしれません。でも、客観的な視点は何事においても共通ですから、とても読み進めやすく、スムーズに理解もできると思います。

------------------

■3章 ”がんとは闘わない”ほうがいい?
3 緩和ケアは誤解が多い
 緩和ケアの”治療効果”(p138~)
・(前略)つまり、早期に緩和ケアを導入すれば、無駄な抗がん剤を減らして生活の質を向上させ、延命効果までもたらすのです。進行がん患者さんに対してむやみに抗がん剤治療を行うことは、生活の質を脅かすばかりか、生存期間を縮めてしまう可能性もある。そのことを、我々がん治療医は常に頭に入れて、患者さんと向き合うことが大切だと思います。

 抗がん剤を続けるのが”見放さない”こと?(p145~)
・進行再発がんの治療目標は、”がんを治す”ことではなく”延命”ということになるのですが、転移のある進行がんの6割から8割の患者さんは、自分のがんが治療可能であると信じているという調査報告があります。


 つい先日感想記事を2本書きました緩和ケア。
 ・”穏やかな死に医療はいらない”読みました。
 ・”家に帰ろう~在宅緩和ケア医が見た 旅立つ命の奇跡~”読みました。
 ここに書かれているのは、患者と医師のコミュニケーション不足であると読み取りました。どちらが悪いということではなく、お互いに踏み込めていない部分があるということなんだと思います。語弊があるとまずいのですが、医師にとっては受け持つ患者 数十人~数百人(?)のうちの1人なのです。患者本人にとっては唯一1人の命です。遠慮なく医師と話をする、気になることを聞く、これがベター(better)であるように感じます。

------------------

■4章 がん治療 何を信じればいい?
1 正しい情報を得るために
・インチキ医療の見分け方:「がん患者を食い物にするインチキ療法」を見分けるコツ(p162~)
・情報を正しく判断する方法は:「ガイドライン」のつくり方(p166~)
・ブランドに惑わされるな:情報のランク付け(p170~)

 
 基準を知れば、世の中にあふれ自分自身に近づいてくる情報の大半は「信頼性が低い」ということがわかりますし、わかっておかねばならないと感じます。

 同じことを書いてしまいますが、これは金融においても同じだと感じざるを得ません。「世の中にあふれ自分自身に近づいてくる情報」は自分自身にではなく、その情報を持って来る相手にとって優位なものであるケースが多いということです。もちろんこの本と同じ主張となりますが、すべてがそれに当てはまるとも言えないのが人生の難しさなのでしょう。

------------------

 自分自身の病気・治療と向き合うという視点では、もう3年以上も前ですが感想を書きました「最高の医療を受けるための患者学」、こちらの本もお勧めです。くしくも著者は同じがんの専門医でおられます。

 がんに限らず、どのような病気・治療と向き合うことになっても、自分自身の方向性を定める際に軸となる考え方を得ることのできる本だと思います。2冊ともオススメです。
 

 <参照過去記事>「医療者が知っておくべきがん治療におけるお金の話」講師を務めました。

 長文を読んでいただいてありがとうございました。

コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)