「国民年金及び厚生年金に係る財政の現況及び見通し -平成26年財政検証結果-」読みました。


 公的年金財政の健全性の見通しを5年ごとに検証した結果が3日に発表された件、3(火)夜のネット記事から4(水)の朝刊などで、たくさんの報道が出ていました。

年金給付水準、30年後に2割減 経済成長見込んでも
年金制度検証、甘すぎる試算 経済再生なら給付水準確保
公的年金、48年度に現役収入の50% 低成長ケースでは公約危機
<厚生年金>現役収入の50%維持…29年後、2割目減り
<厚生年金>給付水準50%試算、成長頼み

 おそらく5つすべてを読んでも、しっかり理解できる人は少ないと思います。正直に書いて私だって「???」に感じるところはいくつもあります。見出しを見て、何だかよろしくない雰囲気だという程度の方々が多いのではないでしょうか。

 今回の報道の元データはこちらです。
 第21回社会保障審議会年金部会 資料
 主には26ページの資料で、詳細は121ページもの資料です。それ以外にも関連試算があって…もう大変です。

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 とりあえず全体像を把握してみましょう。
 ・出生率高位・死亡率中位が4ケース
 ・出生率中位・死亡率高位が4ケース
 ・出生率中位・死亡率中位が9ケース
 ・出生率中位・死亡率低位が6ケース
 ・出生率低位・死亡率中位が6ケース
 これだけで検証は合計29ケースです。将来の見通しを検証するための条件がたくさん設定されています。他にも7あり、合計36です。もう何がなんやらわかりません。

 メインの検証数29を見てみると、出生率が高くなったり、死亡率が高くなる=年金財政にとって優位な条件となることは可能性として低いので検証数を少なく(計8)し、反対のケースの数を増やしていること(計12)は、現実的で評価しても良いのでしょうか。ただ、実際に使われている数値に現実味がなければ、数を多くしてごまかそうとしているだけとも言えるかもしれませんけれど。

 特に「資料1-1 国民年金及び厚生年金に係る 財政の現況及び見通し(PDF:971KB)」にあるp17~24までのケースA~Hを順にスライドさせると、当然ながら経済条件が悪くなればそれに応じて将来の見通しが悪くなるイメージはつかみやすいかと思います。

 ちなみに経済条件は8ケース設定されていましたので一覧にまとめてみました。この数字の組み合わせがどれだけ可能性のあるものなのかは私にはまったくわかりません。
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 繰り返しますが、当然ながら経済条件が悪くなればなるほどに将来の所得代替率を表す棒グラフが小さくなっていきます。

 100年安心はウソだったのか、将来にわたって平均年収の50%以上(所得代替率)を保証すると約束していただろう。
 普段から政府・国や政治家や公務員さんを疑ってかかる方々が発しそうな意見です。普段から疑ってかかってるのに、都合の良い部分だけは信じてあげあしを取るスタンスは好まれるものではないです。

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 話題を変えまして、「資料1-2 国民年金及び厚生年金に係る 財政の現況及び見通し(詳細結果)(PDF:1,452KB)」から、出生中位・死亡低位・経済条件が最悪のパターン(ケースH)・所得代替率50%を維持した場合(p88~90)という今回の検証の中で最も条件の悪いものを見てみました。
 それでも基礎年金(国民年金)部分の積立金は37年後の2051年までもちますし、厚生年金部分の積立金はまだ100兆円近くも残ってる試算です。こんなに安定している国は世界を見渡しても存在しないと考える私は楽観的すぎるでしょうか。

 良くない見通しが出たから誰かを非難するとか、この国は信じられないとか、マイナス発言は置いておいて、これからどうするのかを考えていくことがたいせつだと考えます。

 出生中位・死亡低位・経済条件が最悪のパターン・機械的に給付水準調整を進めた場合(p85~87)であっても、56年後である2070年以降もその時に予想される平均年収の38.9%の年金が一生涯受け取れる試算だと考えてもよいと思うんです。


 年金制度の何をもって破綻というのかは私にはわかりません。所得代替率50%を割れば破綻なのか、安心が100年ではなくなったら破綻なのか、積立金が枯渇するときが破綻なのか、積立金の枯渇が明らかに現実的となったときが破綻なのか。

 いつも書いていますが、公的年金制度は定年退職後の生活すべてを支えてくれる仕組みとして存在しているのではありません。
 障害者になってしまったときの保障である障害年金、亡くなってしまったときの家族の生活を支える保障である遺族年金、そして、長生きしてしまったときの保障である老齢年金です。

 平均寿命が女性86歳・男性79歳の時代です。現在60~65歳から受け取りの開始する老齢年金が「長生きしてしまったときの保障」とは思えません。
 もちろん今日の明日で、いや来年から3年後から急に開始年齢を変えましょうということではありませんが、受給期間という大前提を変えずして、出生率や死亡率や経済条件を変えて見通しを立てることは、言い方を変えれば数字遊びにも感じられます。

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 今回の検証結果から早期に受給開始年齢を65歳以降に変えるための議論が進むことを願うばかりです。
 長生きしてしまったときでも受け取る期間が一生涯である老齢年金の仕組みは、私たちの世代のためだけではなく、私たちの子どもや孫や、それ以降の世代のためにもたいせつな仕組みだからです。


 ちなみに1つ気になったのは、厚生年金の保険料率と国民年金の保険料月額がともに平成29年度(2017年)から100年後の2110年まで、本当にそのまま変えずに試算しているところです。
 厚生年金は率ですから物価が変わってもそれに応じた保険料が設定されるわけですが、国民年金はどれだけ物価が変わっても定額のままなのはやはり違和感があります。ここはいずれメスの入ってくる部分になってくると予想します。そのときにはまた「約束と違う」という意見が出てくるんでしょうね…。

 繰り返します。検証が甘いとか、そもそもの設定が甘いとか、振り返りは確かにたいせつです。でも、もっとたいせつなのは、私たちの世代のためだけではなく、私たちの子どもや孫やそれ以降の世代のために、これからどうしていくのかを考えていく必要があるということです。

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 長文にお付き合いくださった皆さまに感謝を申し上げます。
 本当につたない文章で申し訳ありません。
 コラムではなくブログということでご容赦をいただければ幸いです。


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