投資教育の大前提は想定利回りの認知です。 / 社会保障審議会 企業年金部会「確定拠出年金における運用について」読みました。


 厚生労働省のサイトに社会保障審議会(企業年金部会)というページがあります。
 私が気になるのは確定拠出年金(DC)です。

 2014年11月18日12月15日の審議会で配付された資料「確定拠出年金における運用について(PDFファイル3.26MB注意)」について取り上げたいと思います。資料は3部構成です。


 この資料には出所として、企業年金連合会のサイトにある確定拠出年金に関する実態調査のページで公開されている「2013(平成25)年度 確定拠出年金実態調査結果(抜粋)(PDFファイ0.57MB注意)」が示されていますので、あわせてリンクを貼っておきます。

 なお、過去分の資料は会員以外は見れなくなるようです。
 前回の感想もblogで書いています。
 「確定拠出年金制度に関する実態調査 調査結果」読みました。

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■1.DCの運用の現状と課題

・DC加入者の運用資産選択の把握状況 p7
 「DC加入者の約3割は、自らの運用資産の状況を把握していない状況」

 「Q.あなたの資産運用はうまくいっていると思いますか」に対する回答である、「うまくいっている28.9%」「うまくいっていない29.4%」まずはここです。
 この調査は2014年8月です。アベノミクス相場です。この時期においてほぼ同数なのは悩ましいところです。もちろん大前提として、掛金ベースで元本確保型57%・投資信託等43%、資産残高ベースで元本確保型59%・投資信託等41%という実態があります。

 それよりも重大なのは同じ質問に対する回答で「まったく分からない」が40.2%を占めていること、そしてその中で「自分の資産がどのような運用商品に投資されているか」が「ほとんど分からない17.8%」「まったくわからない10.0%」だということ。
 運用がうまくいっている28.9%の中では「自分の資産がどのような運用商品に投資されているか」を「おおよそ説明できる19.7%」です。もちろん「おおよそ説明できる」人のうち15.9%は運用がうまくいっていないにもなっていますが、まずは運用のことを知らないと始まらないという結論は間違いないと言い切れそうです。


・DC加入者の資産配分変更の経験の有無 p8

 掛金配分変更やスイッチングについて「何のことかわからない」と回答した人もそれぞれ13.1%・16.1%でした。上の話も含めて、その段階でアンケートに協力されたことが素晴しいと感じるほどです。


・想定利回りに対する認知度 p9

 この資料の中で、本来一番最初のページに取り上げるべきだと私が感じた内容です。確定拠出年金において、なぜ運用が必要なのかという大前提はこの想定利回りです。想定利回りという言葉を「全く知らない」と回答した人が29.9%もおられるのです。「よく知っている」はわずかに3.4%。これはよろしくなさすぎます。
 目的がはっきりしなければ、運用という手段の必要性を知っていただける可能性はなくなってしまいます。

 想定利回りについてここで解説すると長くなってしまいますので、ご興味をお持ちの場合には次の過去コラムをぜひお読みいただきたいです。
 確定拠出年金のことをファイナンシャルプランナーに相談する<1>企業型の商品選びについて

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■2.運用商品を選択しやすい環境の整備について

・(参考)DC法における投資教育(導入時投資教育、継続投資教育)の位置づけ p24

 制度導入時最初の投資教育(導入時投資教育)は努力義務であり、実施率は現状ほぼ100%とあります。
 制度導入後に繰り返し実施する投資教育(継続投資教育)は配慮義務であり、計画中を含めると約45%が未実施、一度だけ実施したのが約30%、複数回実施は約25%です。
 継続投資教育ですから一度では継続とは呼べません。配慮義務だと4社に1社なんです。p34にも書かれていますが、努力義務への格上げを強く望みます。


・継続投資教育を実施する予定がない理由(複数回答) p30

 ここも興味深かったです。「継続教育の費用を確保できないから18.6%」よりも、「継続教育に時間(人員)を割く余裕がないから35.8%」と「営業拠点が散らばっていて加入者を集められないから30.6%」が上回っていたからです。
 人員確保は捉え方によっては費用確保と同義かもしれません。担当者をサポートできる体制を社内で希望することが加入者自身に影響してくると言えそうです。ちなみに「無回答」が31.4%あったのは不安材料です。

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■3.長期の年金運用として適切な運用方法の促進について

・長期の運用における分散投資の必要性 p49~
・長期の年金運用という観点からの課題 ~p53

 資産の分散、時間の分散(ドルコスト平均法)がこういった資料にしっかり載っているのは嬉しくなりました。


・DB・DCにおける分散投資に関する規定について p57
 「確定給付(DB)制度では、分散投資を促すことを法令上の努力義務としている。」
 「事業主等は、積立金を、特定の運用方法に集中しない方法により運用するよう努めなければならない。」
・(参考)DB及びDC(企業型)の運用資産構成 p58
 「DBとDC(企業型)の運用資産構成を見ると、法令や通知で明確に分散投資が位置付けられているDBについてはバランスよく様々な商品に投資が行われているが、DCについては偏りがあることがわかる。」

 勤務先に任せっぱなしで安心の存在だった確定給付年金(DB)において、外国株式・外国債券・国内株式の合計は41.3%を占めます。自分自身の確定拠出年金(DC)では22.4%です。
 さらには、DBにおいて預貯金に近いものは20.4%、DCにおいては保険を含めると58.9%です。投資教育の重要性を何度も認識させてくれるデータです。ここでももう一度書きますが、投資教育の大前提は想定利回りの認知です。


・デフォルト商品として設定される商品 p63

 「デフォルト商品を設定している企業では、預貯金等の元本確保型商品を設定する企業が96%以上」なのですが、「主に外国債券投資商品0.8%」「バランス型2.1%」に驚かされました。日本において、デフォルト商品を元本確保型以外に設定している企業も存在していることが嬉しかったです。担当者さんに握手を求めたいです。

 OECD諸国の情報(p64~)も興味深かったです。「デフォルト商品の設定に政府が関与」という言葉、「※主要国のDC制度において、各国政府が推奨するデフォルト商品として元本確保型商品を設定している例はない。(p76)」、日本ではターゲットイヤー型が一般的でしょうか「ライフサイクル型」と呼ばれる商品がデフォルト商品として設定されている国ばかりです。
 ただ、米国においても法で整備が進められたのは2006年の法律のようですから、日本もこれから徐々に進んでいくものと思いますし、進んでいかねばならないと感じます。

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 最後に、確定拠出年金実態調査結果(抜粋)p12にマッチング拠出(自己拠出)の利用状況が平均21.6%とありました。

 将来に向けた資産形成において第一候補と呼べるものです。もちろん将来に向けた資産形成よりも、今にお金を使わねばならないケースもあり得ますから全員が利用する必要はありません。でも、そこまで考えたうえでの判断ではなく、やはり「よくわからない」が多くを占めるのではないでしょうか。

 マッチング拠出を導入時から活用できる企業は少ないと思います。追加で設定された仕組みは継続教育においての説明がなければやはり「よくわからない」になってしまうと思います。

 継続教育の重要性、後にも先にも結論はここになりそうです。
 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


<過去参照記事>
導入側ではなく加入者側で講師を務める立場でありたい
<過去参照コラム>
確定拠出年金のことをファイナンシャルプランナーに相談する<1>企業型の商品選びについて



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