社会保険で負担の小さくなる例を出さずに解説するのは誤解を招くことにつながりかねない


 先日のblog記事「自らの家計管理ができていないFP資格を持った営業マン」の続編です。

 前回はKINZAI ファイナンシャル・プランという国家資格であるFP技能士に向けた業界誌から1記事を取り上げました。今回はFPジャーナルという民間資格であるAFPとCFP向けの業界誌です。


 特集タイトルは「三大疾病とその後のファイナンシャル・プランニング」です。こういった特集の際には導入部として、死因別死亡率や死亡数、5年生存率やがん種による医療費の平均額などのデータが多くのケースで取り上げられます。

 確かに世の中に出回っている公式な科学的なデータはこれら以外にはありませんから数字として知っておくことは必要です。でも、こういったデータをどのようにして見せるのかという視点は発信する側がとても優位に立っているという事実を知ってもらいたいのです。

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 例えば最もポピュラーな「日本人は2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡している」というデータ。間違いないです。うそではありません。でも、だからといって若い世代が過剰に不安をあおられる必要はありません。

 がんになってしまう人の大部分、がんで亡くなってしまう人の大部分は高齢になってからです。もちろん若くしてがんになってしまったり、がんで亡くなってしまう方々はおられます。私は20~30代が好発年齢である精巣腫瘍患者友の会ピアサポートに3年以上アドバイザーとして毎月参加していますので、若い世代のがん患者をそれなりに知っているつもりです。
 だからといって、過剰な不安のあおり方は好きではありません。最低限の備えは誰しも必要です。過剰な備えは不要です。過剰にあおられないようにご注意をお願いしたいです。

 詳細なデータは依然に記事にしていますので、ぜひ一緒にご覧ください。
 ・2014/5/17 がん罹患者数と罹患率を35年前と比べました。
 ・2014/7/22 死亡数とがん死亡数を32年前と比べました。

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 次に、がん種別・ステージ別の医療費データも紹介されています。出所はこちらです。

 一覧資料の中で最も平均が高額な「直腸の悪性新生物」を例に挙げてみます。
 1入院費用は105万3766円で、1日単価が6万5343円となっています。(症例数489名)

 がんで治療費は100万円以上かかるのか、1日あたり6万円以上なんて払えない。
 という印象を持たせることも簡単です。
 確かに本文中でも「高額療養費などで負担をカバーできます」とあります。
 具体的に見てみましょう。

 1入院105万円で、1日単価が6.5万円ということは、単純に入院日数は16.2日です。
 2週間と少しですから1ヶ月の中に収まるわけです。

 この入院16日が同じ月に収まったとしましょう。
 高額療養費で試算してみると、自己負担額は次の通りです。
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 ・区分ア 標準報酬月額83万円以上(年収の目安:約1160万円以上)
   1入院25万4718円、1日あたり1万5723円

 ・区分イ 標準報酬月額53万~79万円(同:約770~1160万円)
   1入院17万2368円、1日あたり1万0640円

 ・区分ウ 標準報酬月額28万~50万円(同:約370~770万円)
   1入院8万7968円、1日あたり5430円

 ・区分エ 標準報酬月額26万円以下(同:約370万円以下)
   1入院5万7600円(定額)、1日あたり3556円

 ・区分オ 被保険者が市区町村民税の非課税者等
   1入院3万5400円(定額)、1日あたり2185円

 ※ 高額療養費の詳細はこちらの過去記事をご覧ください。

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 他にも心筋梗塞や脳卒中のデータも出ていましたが考え方は同じです。
 どのように感じられるかは人それぞれです。正解はありません。

 もちろんこれは「医療費」ですから、別で食費は必ずかかりますし、差額ベッド代がかかるケースもあるでしょう。でも、医療関係者が数字をそのまま出してしまうのではなく、ファイナンシャルプランナー(FP)という肩書を持った人が社会保険で負担の小さくなる例を出さずに解説するのは誤解を招くことにつながりかねないと感じます。

 この情報が掲載されているのはFPの業界誌ですので、そういった確認は各自がしなさいということなのかもしれません。でも、多くのFP資格保有者は相談実務(金融商品販売実務を除く)を経験していないように感じます。そういった方々の数字の受け取り方は一般の生活者と何ら変わりがないように思うときもありますので、丁寧な解説を加えてもらいたいです。

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 新聞・テレビ・雑誌などから発信される情報も、実際にはどうなのかという視点で自分や家族に置き換え、一度立ち止まって考えてみていただきたいと日々感じる次第です。

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 14(火)午前は事務所、午後は打ち合わせで外出、夜は京都リビング新聞社カルチャー倶楽部「FP3級資格取得講座(全13回)」の第8回目です。


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