逸失利益の運用


 数年前に大きく報道され、今も目にする交通事故事件の件で裁判が進んでいまして、その裁判で使われる資料の作成を弁護士さんから依頼を受けまして提出しました。

 弁護士さんからの依頼はこうです。
 例えば事故による賠償金額が5000万円だったとします。
 
 これはあくまでも仮定の数字ですが、事故によって命が奪われていなければ得ることができたであろうお金を積み上げた額です。
 すでに成人であればその時に得ていた収入等が基準になるようですが、まだ未成年であったりすると全就業者の平均収入が基準になるそうです。

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 さらにそのお金の総額を「複利5%」で運用できるものとして現在価値に計算されます。
 わかりやすい数字を使いますので実際とは異なります。

 総額5000万円を30年間、複利5%で現在価値に計算すると約1157万円です。
 仮に20年では約2078万円です。

 さまざまに試算して積み上げられた5000万円というお金を実際に遺族が受け取るのはこのような額になってしまうということです。


 バブル崩壊以前の高い金利が継続している時代ならこれで良いかもしれません。でも、経済成長は大きな右肩上がりではなく、マイナス金利まで導入されている現代社会において「複利5%」を長い年数を続けるという計算式は現実的ではないと考えます。
 

 仮に「複利3%」では30年で約2060万円、20年では約2768万円です。

 仮に単利にしてみましょう。
 「単利5%」では30年で2000万円、20年では2500万円です。
 「単利3%」では30年で約2632万円、20年では3125万円です。

 これまでの試算はすべて税や手数料は除いています。


 私はこんな仕事をしていますから、実際に複利5%かそれ以上の運用成果を得ている普通の会社員や自営業の方々を確かに知っています。あえて「普通の」と書いたのは、いわゆるデイトレーダーと呼ばれるような立場ではなく、毎日相場を見て売り買いをしているような立場でも無い方々だからです。でもこういった方々はほんのごくごくひと握りです。現代社会において一般化できるものではありません。

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 命を金額で表したいわけではありません。
 より多くの金額得るための裁判ではないとも聞いています。

 幼いわが子の命をはかるものが数字にならざるを得ない場合、せっかく導き出された総額を前例や踏襲があるとはいえ現代社会に即していない大きな割引が適用され、その額が驚くべき小さなものになってしまう現実。

 10歳・8歳・4歳の子どもがいる親の立場として、また、ファイナンシャルプランナー(FP)資格を使って日々相談を受け生計を立てている専門家として、現代社会で一個人や一般家庭の多くが保有資産すべてを利回り3~5%かつ複利で何十年も運用し続けることは現実的に不可能であることを強くお伝えしたいです。

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 裁判結果は秋から冬ごろに出ると聞いています。少しでもお力になれたのであれば嬉しいですが、何よりも遺族の方々が納得できる経緯や結果が得られることを願ってやみません。



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