”「持ち家」という病”読みました。


 ”「持ち家」という病 ~不動産と日本人・「これまで」と「これから」の経済学~”(2016年12月5日 第1版第1刷発行)を読みました。

 170310_01

 著者は株式会社三友システムアプレイザル創業者で現在は相談役の井上明義氏。

 今年で80歳という不動産鑑定士の大ベテランさんのようです。念のために書いておきますが私は面識ありません。ネット上で信頼性の高い(と私が思っている)不動産業界の専門家さんが勧めておられたので手に取ってみました、という経緯です。


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

-----
■はじめに
■第一章 日本人はいつから「持ち家病」にかかったのか

・二〇一三年一〇月一日現在の日本の総住宅数は六〇六三万戸(中略)一九九八年からの一五年間で総住宅数が一〇〇〇万戸以上増えている。 p61


 東京都在住で家の購入を検討している35歳の「青年」と不動産の「先生」の会話形式で、とても読み進めやすいです。青年もかなり知識があって、なかなかあなどれません(笑)
 詳細は本書を読んでいただきたいのですが、身近な表現だと感じる「方荘棟番」(p31)といった昭和40年代当時のトレンドから難解な不動産業界ことなど、歴史が詳しく書かれています。

 ただ、舞台の中心は東京(関東)です。もちろん地方を含めた日本全体の視点もしっかり書かれているわけですが、自分自身や家族に当てはめた場合にどうなのかという視点を持つことも大事です。


-----
■第二章 バブル崩壊とともに消えたはずの「土地神話」
■第三章 「持ち家病」を後押しした不動産金融

・四度の地価上昇で染み込んだ土地神話 p72~

・住宅の需要を支えた住宅金融公庫 p112~
・バブルの一翼を担った金融機関と不動産鑑定士 p121~
・持ち家志向を支えた住宅金融 p134~


 本当に歴史がよくわかりますし、ある意味で金融の罪深さにも衝撃的です。


-----
■第四章 地方の不動産はすでにマイナス資産である
■第五章 オリンピック後に始まる東京のスラム化

・公共サービス被放置ゾーン p168~

・憧れのスイートホームの今 p202~
・生産緑地が地価下落の引き金を引く p218~


 都市(町)の「砂漠化」という刺激的な表現も使っておられ、地方都市の悩ましい実情も書かれています。
 砂漠化とは「人口が減少し街は急速に衰退していく。すると公共サービスの受けられる範囲も限定されていく。そのようなところを砂漠という」(p192)と定義されていました。

 p177あたりからの地方における市街化区域(街づくりを進めるエリア)と市街化調整区域(自然を残すエリア)の話も衝撃的です。
 この区分はファイナンシャルプランナー(FP)資格の課目「不動産」で出てきますし、基礎的な知識となるのですが、地方の実態は今後注意深く見守る必要があることを知らせてくれます。


-----
■第六章 新たな変動要因
■第七章 「持ち家病」から解放された社会
■おわりに


 賃貸にとても期待感のある主張が特徴的です。裏返せばそれだけ所有に対する負の経験と今後の負の見込みが大きいということなのだと感じましたが、だからといって日本中どこでも賃貸が良いのか、誰でも賃貸が良いのかは別の話です。

 1つだけ確信として言えるのは、もう確実に現代は「家を買うのが当たり前の時代ではない」ということを、もっともっと広く一般的に周知されている必要があるという点です。


----------

 相続の相談も増えてきている中で、数年前の相続講座でも地方の不動産について質問は何件も出てきていました。

 戦後は住む家の数が少なかったのでどんどん増やされた。それが景気対策にもなった。現代においてはその家の引き継ぎがどんどん始まっています。始まっているにもかかわらず新しい家が建て続けられ、新しい世代は新しい家を買い、古い家を中心に空き家と化しています。空き家も相続で引き継がれるわけです。

 この本で解決策がすぐに見つかるわけではありませんが、歴史を知ることで今が既にどういった状況であるのかを把握することができますし、短絡的に「持ち家=NG」ではなく、把握しておくことこそが重要で関係するのであればどうするのかどうしたいのかを早急に考えておく必要があるのだと思います。


 不動産売買におきましては自己責任でお願いします。

 

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)