”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました。


 ”ちょっと気になる社会保障 増補版”(2017年2月10日 増補版第1刷発行)を読みました。

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 ※ こちらは裏表紙です。クリックで拡大します。


 著者は慶應義塾大学教授の権丈(けんじょう)善一さん。権丈先生を知ったのは2016年末の日本経済新聞での公的年金保険の連載です。感動的でしたので、最新著であるこの本を手に取ったという経緯があります。念のために書いておきますが、私はもちろん面識がありません。でもいずれどこかで一度お会いしてみたいです。


 先に結論を書いておきます。

 この本は中学または高校の教科書として採用されてほしいと強く願いたいほどの内容です。そして、公的年金についてマイナスな発言をする人には必ずこの本を勧めてください。きちんと読んだうえで、それでもなおマイナスな発言を続ける人は公的年金がまともであっては困る余程の事情をお持ちなのだと思います。

 私もおかげさまで公的年金についてはさまざまに学んできましたし情報を得てきたつもりですが、この本はすべての根本です。久しぶりに感動レベルの本に出会えたといえるほどです。大大大大大お勧め、過去最大級にお勧めです。


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■はじめに ---社会保障なんか信用ならん!?

・公的年金は,賦課方式でしかその目的を達成することはできないんです. p xiii


 痛烈な皮肉で幕を開ける本書です。途中から経済学の話も出てきますので、苦手な人はここで挫折してしまう可能性も否めませんが、そういう場所はとりあえず飛ばして読み進めても問題ないです。


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■第1章 少子高齢化と社会保障

・日本の年金を世界がうらやましがっている理由 【知識補給】p168~


 少子高齢化を私はよく「少子”超”高齢化」と表現します。高齢者を支える日本の仕組みは、昔が胴上げ型、今が騎馬戦型、将来的には肩車型という説明はどこででも出てきますし、だからこそ今の仕組みはもつわけがないというストーリーは本当によく目にするかと思います。
 これをたったの7ページ弱で論破です。「就業者1人が支える非就業者の人数」という情報です。なぜこの情報が当たり前として報道に出てこないのか不思議でなりません。

 そして早速の【知識補給】です。補給といっても本編7ページに対して4ページもの補給です。ボリュームたっぷりです。
 公的年金は今の高齢者が受け取って終わりではありません。今の現役世代が高齢者になってからはもちろん、今は子どもであったりこれから生まれてくる子どもも受け取っていく必要のある仕組みが公的年金保険なんです。なので、現時点において単に高齢者vs若い世代と設定しても何も解決しません。
 

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■第2章 社会保障は何のため?

・Output is central という考え方 p18~


 日本語では「生産物こそ重要」(p20)と書かれています。

 この考え方は冒頭で紹介した連載で出ていて私も初めて知ったのですが、公的年金保険においてこれだけ重要な根本となる考え方がメディアから発せられる情報から見聞きしたことがないだけでなく、私もそれなりに(一般の人が手に取る程度の内容ですが)公的年金の本は目を通してきていますけれど、なぜ載っていないのか不思議でなりません。大事すぎる基礎であり、根本です。


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■第3章 社会保障は誰のため?
■第4章 社会保険と税
■第5章 社会保険と民間保険

・救貧機能と防貧機能 p38~


 ここの表現も(恥ずかしながら)私は初めて接しました。社会保障(福祉)は救貧、社会保険は防貧。
 「貧困に陥るのを未然に防ぐ(防貧)機能を持っている社会保険」
 わかりやすすぎます。


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■第6章 保険のリスク・ヘッジ機能
■第7章 長生きリスクとは
■第8章 年金が実質価値を保障しようとしていることを説明することの難しさ
■第9章 結局,民間保険,社会保険,税の違いとは
■第10章 社会保障がはたす3つの機能

・年金が保険だということを,みなさんすっかり忘れてしまう環境が整いすぎていたんじゃないかと思う p68-69
・年金は保険であることを忘れさせた原因 p69~

・人生,70年,80年,90年というタイムスパンの中で起こる不確実性に個々人で対応することは極めて難しくなりました. p79~


 すみません、この部分の感想、私の思いは以前のコラムに代えさせてください。
 年金という用語は公的年金保険だけに使って欲しい


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■第11章 建設的な社会保障議論を阻んできた悪気のないストーリー
■第12章 もちろん留意すべき世代間の問題
■第13章 社会保障規模の国際比較と財政

・少子高齢化にとって非常に残念だったことは,(1989年の合計特殊出生率)1.57ショックと同時にバブルが崩壊したことです.さてこれから少子化対策に国を挙げて取り組むぞっと「1.57ショック」キャンペーンが張られたまさにその瞬間から,まったく財源を得られなくなりました. p124
・初めから,日本の政府の規模は小さい,日本の公務員は少ない,そして日本の国民負担率は低い,ところが,どこをどう間違えたのか,日本人の常識はすべてが逆方向で刷り込まれているわけです. p126
・将来の話は名目値で論じてはいけないという話 p126~


 制度を把握するためには客観的に歴史および国際比較を知ることも大事です。
 なぜこうした現状になってしまっているのか不思議でたまらないと思える実際のデータと切り口です。


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■第14章 今進められている社会保障の改革とは?
■おわりに

・年金改革 p151~

・バカ発見器?のひとつ ---スプレッドへの理解 【知識補給】p205~

・もし,あなたが最後までたどり着いた生存者でしたら, p162


 この本で1つだけ残念なことを挙げるとすれば、過剰な演出(あおり言葉)です。ただし、新聞・テレビ・雑誌などのメディアのように世の中(私たち)をあおっているということと同じではなく、公的年金保険制度を把握していない(把握しようとしていない)にもかかわらず適当なことを発信している方々へのあおりです。

 これらの表現によって、きちんと読めば理解してくれるかもしれない公的年金不信論者の方々が反発してしまわれることだけが唯一の悩ましいと感じたところです。反対に言えば「よくぞこれだけ言ってくださった!」という内容です。


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 繰り返しになりますが、公的年金の本で口語体や顔文字が使われていて、さらには痛烈な毒も盛り込まれているという驚くべき体裁の本です。何とかして読み進めやすいように意識されているのではないかと推察しました。「おわりに」で書かれている皮肉も致し方ないのかもしれません。

 そしてもう一度繰り返します。内容は少し難しいかもしれませんが、中学または高校の教科書として採用されてほしいと強く願いたいほどの存在です。
 日本で生活していくうえで社会保険とは密接にかかわります。表現が難しいのですが、逃げられないですし逃げないで良い素晴らしい仕組みです。だからこそ、すべての人がこの本を読んでもらって良いとさえ感じるほどでした。
 これ以上の表現を書き出せないのですが、これまで感想を書いてきたどの本よりも、もう本当にお勧めすぎます。「こんな人に読んでもらいたい」「興味のある人に読んでもらいたい」ではなく、「すべての人に読んでもらいたい」こうならざるを得ません。


 この本で多く出典が出てきているこちらの専門書も購入してしまいました。
 感想を書けるように読み込んでいきます。

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 ※ 2つめ(右側)の画像は裏表紙にある帯の解説です。いずれもクリックで拡大します。

 

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


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