”10万個の子宮 ~あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか~”読みました。


 ”10万個の子宮 ~あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか~”(2018年2月7日 初版第1刷発行)を読みました。

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 著者は医師であり、世界保健機関(WHO)感染症チームなどの経歴もある村中璃子さん。今回の本に関連する内容で、日本人で初めてジョン・マドックス賞(※)を受賞された超専門家です。

 ※ 困難や敵意に遭いながらも、公共の利益のためサイエンスを世に広めた人物に与えられる賞(p4)


 先に書いておきます。私はブログを書いたりツイッターやfacebookも利用しています。最近facebookでは見かけなくなってきていますが、特にツイッターでは「反ワクチン」「ニセ医学」を信じる方々によって発信されている情報に開いた口がふさがらないと言えるような状況がまだ続いています。本当に一部の人なのだと信じたいのですが、拡散しておられる方々が少なくないように感じます。

 私はこのHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンが早く定期接種に戻ってもらいたい立場です。現行の2つの型を対象としたワクチンは全子宮頸がんの約65%を防ぐそうです。海外では2014年から承認の始まっている7つの型に予防効果のあるものは90%以上が期待されるそうです。


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。今回はファイナンシャルプランナー(FP)では専門外ですので引用が多いです。ただ、がんの患者会さんを現時点で6年お手伝いしている立場として感じることが多かったです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。


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■はじめに
■序章 並べられた子どもたち

・マザーキラー p21~

・「いずれもこの年齢の少女たちによく見られる症例ですね」(中略)複数の小児科医・神経内科医・精神科医から寄せられた回答 p26


 こういった類の文章を読むのが苦手な人でもこれらの前段だけでも読んでみてもらいたいです。大事すぎます。


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■第1章 子宮頸がんワクチン問題とは何か

・子宮頸がんワクチンは、わが国において「思春期の少女だけ」に接種されることにあった初めてのワクチンだ。「ワクチンによって患者が生まれた」のではなく、「ワクチンによって思春期の少女にもともと多い病気の存在が顕著化した」、そう考えるのが自然ではないだろうか」 p32


 このでの文章は推測の表現を使っておられますが、以降の内容を読み進めるとしっかりと伝わってきます。


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■第2章 サイエンスが暴いた捏造

・事態がわからないときに、非常ベルを鳴らすのはマスコミの立派な役割。しかし、状況が見えてきたら解除のアナウンスを同じボリュームで流すべきだ。 p72


 「あとがき」の感想部分にまとめています。


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■第3章 子宮頸がんワクチン問題の社会学

・ワクチンを接種した人は約338万人であるから、実際の未回復者はこれを分母にとって「338万分の186」、すなわち「約0.005%」だ。 p176

・子宮頸がんワクチンは、現在、世界約130ヵ国で承認され、71ヵ国で女子に定期接種、11ヵ国で男子にも定期接種となっている(2017年3月31日現在。WHOによる)。男子にも接種するのは、子宮頸がんワクチンは、、肛門がんや咽頭がん、陰茎がんなど男性にも多いがんも予防し、女性の多くが男性のパートナーから感染するからである。 p191

・日本で未曽有の反ワクチン運動が起きている理由 p206~

・アイルランドでも(中略)保健相が、「命を守ろうとする医学的努力が、たわごとを広げる人たちによって妨害されている」と発言して反ワクチン運動を一蹴。(中略)「ワクチンに関するアドバイスをするなら医者になってくれ。医者でないのなら、保健政策に立ちはだかるな」 p217-218


 日本小児科学会のサイトをご紹介します。
 学会の考え方・提言・見解等

 以降のリンクはこの記事を書いた2018年5月時点のものです。
日本小児科学会推奨の予防接種キャッチアップスケジュール(2017年1月改訂版)
日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール(2016年10月版)
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種推進に向けた関連学術団体の見解(予防接種推進専門協議会)(2016年4月18日)(PDFファイル注意)


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■終章 母と子

・わが子の病気の原因を見つけ、治療法を探してやりたいと思う親の気持ちの前に、科学や医者の説明は驚くほどに無力だ、一度信じた被害や効果を信じる気持ちは、どんなにそれを否定するデータを示されても簡単に消えることはない。 p229

・「会(全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会)は、ワクチンのせいって言ってくれないと納得しない親の集まり。子どもはみんなそう思ってる。子どもたちは、親がワクチンのせいだと言ってるし、他に言いようがはない感じだと思う。自分の親を否定できないです…」 p250


 「症状」を発症している子どもたちへの支援・救済が不要と発信している医療関係者は私の知る限り存在しません。HPVワクチンが原因ではないことを明らかにし、そのうえで建設的な動きにしたい立場の医療関係者ばかりです。でも、「反」や「会」の方々(親)は何が何でもHPVワクチンを悪者にしないといけない何らかの事情があるのかと思ってしまうほどのスタンスなんです。

 SNSを見ていて気持ちがしんどくなってしまうので、そういった発信はできるだけ見たくないのですが、真摯に向き合っている医療関係者の方々をフォローしていると目に入ってきてしまいます。それだけがつらいです。


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■あとがき

・「危険だ」はニュースになっても、「安全だ」はニュースにならない。しかし、国民が「安全だ」と知らずに危険を信じ込んでいる状況は、本当に危険でもニュースでもないのだろうか。 p257


 私の専門で言えば社会保障や公的年金がまさにこの状況です。報道機関も営利企業なので致し方ないのかもしれませんが、公共性を自称されるのであれば変わる努力をしてもらわないと将来に向けて足を引っ張る力が強すぎるのは存在そのものに疑問を持つ以外に対処方法がなくなります。


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 2016年8月にこの記事を書きました。
 副作用ではなく症状
 本件に関する私のスタンスは重複しますので、こちらもぜひお読みいただきたいです。

 ワクチン全般についてはこちらでも少し取り上げられています。
 ”「ニセ医学」に騙されないために ~危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る~”読みました。


 ワクチンを好きになれない人が存在するのは致し方ないのかもしれません。とはいえこのHPVワクチンでいえば、否定的な情報を発信する前にせめてこの本を読んだうえでお願いしたいです。ただ、この本を読んでも否定的な発信をする人たちは現代社会の適用力がない人だと思わざるを得ません。

 この年代特有の症状を発症している子どもたちへの症状緩和は急がねばなりません。でも、HPVワクチンとは関連がありません。
 私にも2018年度で小学1年生の娘がいます。接種の推奨年齢は12~16歳です。今は注射の苦手な娘が苦手意識を小学校の間で克服してくれますように…。そして、12~13歳に達するまでには予防効果90%以上のワクチンが国内で承認されていることも願っています。

 

 個人的には本のタイトルだけは他のものにならなかったのか、そこだけです。

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


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