平成31年度税制改正大綱を独断と偏見の塊で書き出しました。
2018年12月14日に自由民主党のサイトで公開されました。
12月10日あたりが通常なので、3年連続でイレギュラーなしだったようです。
平成30年度 税制改正大綱
原文はPDFで122ページです。今回もさらにボリューム減ってます。
この大綱はほぼ確定の内容であると言えますが、あくまでも現時点における改正見込みであって、現時点においては確定していないものもありますのでご注意ください。
実際に改正された内容は財務省のwebにまとまっていますのでご参照ください。
各年度別の税制改正の内容
このblogでは私の個別相談で特に関わりそうな内容のみ、独断と偏見で抜粋します。
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【平成31年度税制改正の基本的考え方】
いわゆる前段で気になった文章の引用です。
・今こそ、少子高齢化という構造的な課題への対処に踏み出していく必要がある
・消費税率引き上げ分の税収については、教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等と財政再建に、概ね半分ずつ充当する
今更「今こそ」と言われても…というところです。しかも税制で「少子高齢化という構造的な課題への対処」と言われても…です。
特に今回の改正内容で言えば、関連するのは消費税収を振り分ける先であるというだけです。縦割りをではない横断的な旗振りをお願いしたいです。
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【個人所得課税】
■1 個人所得課税 p18~
(1)住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除
これ、個人的にやりすぎだと思います。消費税の上がる2019年10月1日から2020年12月31日までの1年3ヶ月で住宅を取得した場合、これまでの内容(10年目まで年末借入残高の1%)にあわせて、11~13年目は
・年末借入残高の1%
・住宅購入額から消費税を引いた額の2%÷3
いずれか小さいほうが還付されます。
例を挙げてみます。
建物2000万円(税込)
土地2000万円
諸費用は自己資金で、建物・土地の合計は期間35年・変動0.525%(大手都市銀行)の住宅ローンで2019年10月1日に借りたとします。金利変動なし・繰上返済なしでの試算です。
年末借入残高の1%(概算)は次の通りです。
1年目 397300円
2年目 386900円
3年目 376400円
4年目 365800円
5年目 355200円
6年目 344500円
7年目 333800円
8年目 323000円
9年目 312200円
10年目 301300円
これまではここまでです。合計349万6400円の税還付です。
ちなみに返済利息の総額は約186万円。他の費用を一旦無視すると、借りたほうがお得すぎるという計算です。
そして今回は次の2つを比べます。
11年目 290300円
12年目 279300円
13年目 268200円
合計で83万7800円です。
そして比べる相手は建物1818万円(税抜)と土地の合計3818万円の2%÷3ですので254500円。このケースではこちらのほうが少ないですね。
というわけで、これの3年分の合計は763500円。年末借入残高の1%の3年間と比べると還付が74300円少なくなりますが、この3年間の返済利息の総額は約45万円ですし、そもそもこれまでは還付の対象ではありませんから、十分に大きな効果です。
さらにちなみに、建物1818万円で消費税8%だと約1964万円ですので、約36万円の諸費税負担が大きくなっています。でも、76万円戻ってくるわけです。
手持ち資金とのバランスや総返済額などは厳密に試算すると数限りないパターンが考えられますけれど、住宅ローンを借り続けていることが大事という結論かと思います。
購入者への利点なのか、住宅ローンを貸し出している金融機関への利点なのか、何なのかわからなくなってきます。
あと、この追加3年分の件も当然ながら所得税で引き切れなければ住民税からという記述もありました(p23)。自治体の税収は減りません。国費(国税)から補てんされます。
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■2 金融・証券税制 p26~
(1)NISA(少額投資非課税制度)
①一時的な出国への特例措置
②2023年1月からは18歳以上が開設可能
(2)ジュニアNISA
①2023年1月から18歳未満へ
2018年度に中学1年生(13歳)の私の長男は2023年度に18歳です。
すぐにNISA(つみたてNISA)を開設するようにと思っています。
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■3 森林環境税(仮称) p32~
前回30年度の税制改正で前振りがありました。
平成36年(2024年)度から年1000円が住民税と一緒に課税されることになるようです。住民税が1000円増えても気がつかない人多そうですよね…。
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■5 その他 p36~
国税(6)
給与で年末調整を受けて、確定申告する際に年末調整のときと所得控除が変わらないものは確定申告で記載しなくてよい?とありました。ちょっとした手間の省略ですね。
個人住民税(11) p40~
子どもの貧困に対応。【検討事項】の寡婦控除ともつながりますが、婚姻歴のないひとり親を対象に住民税の非課税となる基準が変わり(下がり)ました。
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【資産課税】
■2 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し p45~
■3 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し p46~
とりあえず両方とも2年延長して2021年3月末まで。
2019年4月以降、受け取る人は合計所得金額(所得控除を差し引く前、分離課税所得を含む)1000万円を超えると不可。
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■4 租税特別措置等 p46~
〔延長・拡充等〕
・登録免許税 p48
(3)土地売買の所有権移転登記の軽減税率
とりあえず2年延長して2021年3月末まで。
・固定資産税・都市計画税
(17)新築のサ高住の減額措置 p53
こんなのもあったのですね。同じく2年延長して2021年3月末まで。
参考までに京都市の土地に係る軽減措置
「サービス付き高齢者向け住宅である貸家住宅に対する固定資産税の減額措置」はリンク先の真ん中の少し下あたりです。
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■5 その他
〔国税〕 p69~
(1)相続税関係で現行20歳対象の項目を18歳へ変更 p57
2022年4月1日以降に発生の相続・遺贈・贈与から適用
成人が20歳から18歳に変わると、こうしてさまざまに変わっていきます。
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【検討事項】 p121~
■1 年金課税
昨年と比較して2ヶ所違いがありました。
「貯蓄商品に対する課税との関連」
が
「貯蓄・投資商品に対する課税との関連」
へ。
「今般の公的年金等控除の見直しの考え方」
が
「平成30年度税制改正の公的年金等控除の見直しの考え方」
へ。
5年間ほぼ同じですは、「投資」という言葉の追加は今後の伏線なのかもしれません。
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■4 寡婦控除
前回「平成31年度税制改正において検討し結論を得る」となっていましたが、今回「平成32年度税制改正において検討し結論を得る」のように、なぜ所得税だけ1年先送りになってしまったのか…報道によると保守的な議員さんたちの影響だそうですが、こういう場面で「保守」という言葉の使い方も悩ましいです。現代的な保守が正しいのでしょうか。
前回と同じ文章を書いておきます。いわゆる母子家庭は低収入のケースが多いのが実態です。税制でいかに対策を取られたとしても、そもそも所得税を納める域に達していないケースや納めていても多くないケースのほうが多いはずです。ここを税の観点からどのように変更を加えるのか。
税制改正大綱には記載がありませんが、2019年度から基準を満たすと児童扶養手当に年(月じゃないですよ)17500円上乗せとなるようです。もっと手厚い給付が当たり前の社会であってもらいたいと思う次第です。
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なお、平成30年度の税制大綱を取り上げたblogはこちらです。
平成30年度税制改正大綱を独断と偏見の塊で書き出しました。
長文を読んでくださり、ありがとうございました。
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