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社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第5章】生活の質を豊かにする需要の創出


 2018年4月に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成28・29年度版「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」を読みました。

 前回、第5回目の記事はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第4章】対人社会サービス


 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ(笑)読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。

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■第5章〔国民経済と経済学〕 成熟社会の経済と処方箋
 小野 善康(おの よしやす)(大阪大学社会経済研究所特任教授)

・経済活動は供給と需要がそろってはじめて実現される p37

・高度成長期の日本のように供給力不足の発展途上社会では、生産力の拡大こそが重要であり、それには無駄の排除、効率化、倹約と貯蓄による資本の蓄積が有効であった p37
・現在の日本は巨大な生産力を手に入れた成熟社会を迎え、人々はお金を使うよりも貯めることに関心が向かった結果、需要が不足する事態が続いている p37
・成熟社会では、個々の家計や個々の企業が発展途上社会の時代に行って成功した無駄の排除、節約、効率化を推進すると、失業が増え、かえって無駄が広がる。これが成熟社会の特徴 p37

・お金を貯めるといっても、かつてのように具体的な使い道は念頭にない。将来不安のような曖昧な理由をつけて、具体的な使い道もないまま、さらにお金を貯めようとする p38
・将来不安について言えば、介護や医療の制度やインフラが今よりはるかに貧弱だった高度成長期の方が、将来不安は大きかったはずだが、そのときには人々はどんどん物を買っていた p38

・1980年代までは、日銀がお金の発行量を増やすにつれて物価もGDPも比例的に上がっていった(中略)90年代初めに、この関係が突然崩れ、いくらお金を増やしても、物価もGDPもまったく上がらなくなった p38
・世界各国の一人あたり家計金融純資産のランキング(中略)過去20年を見ても常に5 位前後からそれ以上を維持(中略)日本の家計は世界有数の大金持ちであることがわ
かる
・日本の1人当たりGDPは(中略)最近は30位近くにまで大きく落ちている(中略)日本はこれだけ大金持ちであるのに、物やサービスを買わず、生産活動は低迷しているために、(1人当たり)GDPは30位にまで下がっている p38-39

・需要が不足して経済が停滞しているのであるから、人々が物やサービスを買うようにすればよい(中略)人々にお金を渡しても貯めるばかりなら、政府が直接国民にサービスを提供すれば需要が生まれる。介護、医療、保育などはその好例 p39
・ただお金を渡すよりもよい方法があり、それは、仕事を作って、その人たちに働いてもらい、お金を給与として渡すことである。お金の再分配は同じであり、それに加えて、それまで仕事のなかった人たちが新たに働くことによって、それが生み出す物が、直接、社会の役に立つ p39
・社会保障費としてではなく、公的な事業をして給料として払った方がいいということ p39

・需要が不足している状況でやるべき事業は、生活の質の向上に結びつくものであり、介護や医療はその代表 p40
・その事業で安定した雇用を創出することである。雇用を作っても、それが今年だけであれば、そこで働く人は安定した雇用が得られない。それでは、賃金上昇にも消費意欲刺激にもつながらない。恒常的な仕事を作るとすれば、芸術・観光インフラ・教育・保育・医療・介護・健康などの分野が考えられる p40
・金融緩和で増えたお金であろうが、輸出で儲けたお金であろうが、日本人がそれを消費に使わないかぎり、景気は低迷し続けることになる。日本人の生活の質を豊かにする需要の創出をしないかぎり、景気も回復せず、日本人の生活も豊かにならない p40

・医療も含めて、公的な事業を充実させようとすると、それには費用がかかり、資金を確保するために社会保険料や税金を引き上げると、景気が悪くなると言われる。しかし、これまでの議論で明らかにしたように、景気は悪くならない p40
・日本は、お金の量が少しばかり増減しても、景気への影響がない状態に来ている。そのため、増税しても消費が変わるわけではない p40

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 6番手の小野教授といえばこの本です。
 ”消費低迷と日本経済”読みました。
 この本もインパクトが強かったです。

 この章は他の章よりも文量(ページ数)が少ないですが、読みやすいので全文の読み込みを多くの人にお勧めしたいです。「経済」の概念が変わると思います。良い意味で私も変わりました。
 もちろん私は経済の専門家ではありませんので、この内容が本当に正しいのかどうかはわかりません。でも、経済の話が社会保障につながっていることは明らかで、ここに書かれている需要を創出する(景気が良くなる)方法で社会保障が充実する流れはものすごく正統な実現性を感じますし、文化的なことや保育・教育など子どもたちにしっかりお金が使われる社会だったら良いと思えますし、そのための社会のお金の流れも見えやすいです。


 需要と供給、負担と分配。大事な視点です。絶賛政権党支持というわけではありませんが、高所得者から大きく所得税・住民税を集めたり、相続時に負担感が大きく見えやすい相続税を増やしたりするよりも、全員が当たり前に買い物するときに一律に負担する消費税であれば高所得・低所得も高資産・低資産もみんな変わらず負担するものですし、それにより低所得・低資産の方々が苦しくなるならそれは補われる分配も出てくるはずです。(軽減税率なんて愚の骨頂です)

 高所得者に高負担を求めるだけでは高所得者も消費(需要)を増やさないことになってしまいます。低所得でも高資産の方々(主に高齢者?)が適正に負担する仕組みが経済と社会保障にとって大事なのだろうと感じる次第です。もちろん正解はわかりませんが、報道や野党の方々から発信されてこず、一般的に目にする機会の無いこういった報告書の内容は強く腑に落ちます。


 <次回> 第6章〔国民経済と経済学〕 医療と介護、民主主義、経済学


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