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社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第6章】分配なくして成長なし


 2018年4月に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成28・29年度版「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」を読みました。

 前回、第6回目の記事はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第5章】生活の質を豊かにする需要の創出


 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ(笑)読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。

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■第6章〔国民経済と経済学〕 医療と介護、民主主義、経済学
 権丈 善一(慶應義塾大学商学部教授)

・これまで幾度となく見てきたように、社会保障に関する政治的な公約は、国民経済との関係を抜きにすれば、なんとでも書くことができる。そしてなんとでも書かれた公約の実行可能性、持続可能性を見抜き、日本医師会自らが両可能性を備えたあるべき姿を描ききるためにも、国民経済、特に財政金融政策に対する正確な情報を押さえておくことは不可欠 p42

・世論7割の壁 p42
・今日の金融財政運営のあり様を普通の人が理解できず、ほとんどトンデモ論に値する論が跋扈する原因の源は、この問題を理解する上で必要となる最低限の知識の難易度が、かなり高いことにあるのではないかと考えられる p43
・必須の知識であっても難易度が高いと、その知識は普及しない。この問題が障害となると、民主主義は機能しなくなるおそれがある p43
・このような情報を、普通の投票者の耳目まで届け、理解してもらうのは、おそらく無理である p44

・圧倒的多数である普通の人たちに、そうした勘違いをされてしまう運命にあるのが、給付先行型福祉国家であるとも言える p45
・結果、「給付先行型福祉国家」というものは、必然的に世の中にヒステリーを引き起こし、財政を再建するための財源を得ることが永遠にできずに「給付だけをしてしまった福祉国家」のままであり続けるおそれはある p45

・成熟社会である現実(中略)左側の経済学は、投資は主に期待収益率の関数とみなして金利を下げても投資はあまり反応せず、社会サービスを充実させたり、所得再分配や賃金の引き上げで所得分配の平等化を図れば経済の活力は増すと考えることになる。つまり、左側の経済学に基づけば、「分配なくして成長なし」なとなる p52

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 真打登場です。

 権丈先生の文章を理解するうえでの前提は次の区分けです。

・右側の経済学
 国民のほとんどが生活をしていく上で必須となる必需品や利便品が不足している時代(p49)

・左側の経済学
 その時代時代の技術水準に依存して生産される財・サービスの需要が消費者の間で飽和に近づき、彼らの中では消費をするよりも貨幣を持つことから得られる効用の方が大きくなって貨幣を保蔵(中略)する成熟社会(p49-50)

 今は明らかに後者(=左側の経済学=成熟社会)です。
 成熟社会では引用の最後の文章にシフトしないといけないんです。


 まさにこの記事を公開した2日後が選挙です。
 政権党絶賛支持というわけではありませんが、公的年金保険をはじめとした社会保障と経済を考えたとき、政権党から出ているマニフェスト(公約)と各野党から出ているものは、比べることが不可能なほどに後者がひどすぎます。対案になっていません。(繰り返して書きますが、政権党絶賛支持というわけではありません)

 私たちが生きる現代社会は(戦後やバブル崩壊までに比べて)高度に進展した仕組みに到達しているようです。当たり前に全員が多くのモノを消費する時代ではないんです。成熟社会なんです。
 何かよくわからないけど勝手に国が進めているというのは良くないのだと思います。何かで歯止めが利かなくなればSFや映画の世界が現実になってしまうことだってあるのかもしれません。でも、もう一部の根幹においては、こういった政策会議などに委ねてしまうほうが良い社会になるのだろうと感じてしまいます。これは決して思考停止と呼ばれるものではなく、私を含めて一生活者が理解できる簡単な仕組みではないということなんです。わかりやすい簡単な仕組みでは成熟社会は安定的に維持・発展しにくいのだろうと読み取りました。


 「分配なくして成長なし」だけを読み取れば、もっと高所得者に負担を求める流れになってしまうかもしれません。高所得者の比率は極めて小さいんです。少ない人からたくさん集めても総額は小さいんです。みんなが少しずつ負担することで多くのお金が集まります。いつも書きますが、この負担で生活が困窮してしまう場合には支援(救貧)が必要です。お金で配るのかサービスで配るのかその比率は、についてはこれまでの章もぜひ参照してください。

 一連の報告書の序章である冒頭とまとめであるこの章に権丈先生が登場されているのは、この会議の副議長を務めておられるからかと思います。
 まっとうすぎる論のまとまっている今回の報告書、(とても軽い表現で申し訳ありませんが)すごいのひと言です。

 <次回> 講演録1.成熟社会の経済と処方箋



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