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社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【講演録5】最適保障と財源


 2018年4月に日本医師会から発表された医療政策会議報告書の平成28・29年度版「社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~」を読みました。

 前回、第11回目の記事はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【講演録4】社会保障モデルから生活モデルへ


 本当は報告書を読んでいただくほうが良いのですが、よほどのもの好きでなければ(笑)読み込むのはしんどいと思います。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。

 講演録5番手の二木教授の報告書はこちら。
 社会保障と国民経済 ~医療・介護の静かなる革命~【第2章】無邪気な(naive)誤り

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■講演録5.今後の超高齢・少子社会と医療・社会保障の財源選択 ―『地域包括ケアと福祉改革』序章をベースにして
 二木 立(にき りゅう)氏

・特に私がここで強調したいのは、今や国民皆保険制度は、医療の枠を越えている、つまり国民医療を守るというだけではなく、日本国民の一体感、統合性、日本社会の安定・統合性のためにも、決定的に大事であるということ p106
・社会保障のうちでも特に生活保護などは「最低限保障」であるのに対して、医療、それから介護もそうだと思いますが、それは「最適保障」、必要で十分で最適な保障なのだということを確認したい p106

・日本の医療満足度の他国に比べての低さの理由の1つは、生活満足度が低いせい p106
・日本国民の医療の平等意識がものすごく強くて、これは一貫しています。7割の国民が平等な医療に賛成。お金がある・なしで違う医療でもよいという人が2割。あと大事なのは、アメリカなどと違い、日本は所得階層間での意見の違いが少なく、階層間の違いはたった5%(中略)医療に関しては、日本はまだまだ分断されていないことが分かる p107


【添付論文1】

・1960年には、65歳以上の高齢者(大半が国民健康保険加入)の医療機関「受療率」は現役世代(健康保険本人が多い)のそれを大幅に下回っていました。同年の65~74 歳の受療率(人口10万対)は4317であり、現役世代のうちもっとも受療率が高かった45~54歳の6121より、30%も低かった p112
・1973年の「福祉元年」には、国レベルでの老人医療費無料化、高額療養費制度の新設、健康保険家族の医療給付率7 割化が実現(中略)医療保険間の受療率格差はほとんどなくなり、高齢者の受療率も急増(中略)同じ期間に、日本人の平均寿命も急上昇 p112

・一般には、医療・社会保障費の財源としては消費税が真っ先に上げられますが、私は日本の現行の医療保障制度が社会保険を主体としており(中略)主財源は社会保険料であり、公費(消費税、所得税・企業課税等)は補助的に用いるべきと考えます p115
・社会保険料引き上げの中心は、他の医療保険に比べて低すぎる組合管掌健康保険の保険料(特に国際的にみて非常に低い事業主負担分)の引き上げ p115

・患者の自己負担割合の引き下げ(中略)受診率が上昇することは確かですが、私の知る限り、その受診率上昇が「無駄な受診」であることを実証した研究は国際的にもありません p116
・高額療養費制度の改善


【添付論文2】

・保険料(正確にはそれの基礎となる標準報酬月額または所得の賦課限度額)の上限は、被用者保険だけでなく、国民健康保険でも引き上げるべき p118
・アメリカ企業の社会保険料水準は日本より低いが、アメリカの(大)企業が負担している民間医療保険料は日本よりはるかに高額 p118
・現行の制度・政策の下では、消費税の引き上げの大半は、年金の国庫負担率引き上げや少子化対策に使われ、医療費増加の主財源にはならない p119

・よその分野の財源に依存するのは「情けない主張」 p120

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 上にリンクを貼りました報告書の記事と同じ図をこちらでも紹介されています。p109の図1です。これは権丈先生の「ちょっと気になる社会保障 増補版」のp4で登場する超重要データです。この理解がすべての大前提です。

 医療への意識の持ち方の傾向や、受診時の負担割合が変わることでの変遷など、興味深い情報です。「最適保障」大事な用語だと思いました。


 医療に関して主たる財源が社会保険料なので、大企業の組合健保の負担を上げることを書かれています。国民健康保険や協会けんぽに比べて保険料率の低い組合健保は確かに多く存在しますし、その負担を企業側も含めて上げていくというのは至極当然の論調に見えます。
 ただ、大企業ほど従業員の健康管理や福利厚生に費用を掛けてきたからこそ現在の平均的な健康状態の良さと保険料率の低さを維持できているという自負もあろうかと思います。そのバランスがどのあたりが適正なのか私にはわかりませんが、これが大きな改善につながるとしても、そこに解を求めることが適正なのか私にはわかりません。

 医療について割合的に多くの恩恵を受けるのは高齢者です。賦課方式である公的年金保険と同様に現役世代の負担を増やすのは全体として更なる世代間扶養につながるのではとも思います。
 何回も書いていますが、高齢者でも負担できる人には負担してもらいたいんです。低所得でも高資産の方々にも等しく負担してもらう。高所得者だけを狙い撃ちにする手法には限界があるのではないでしょうか。


 消費税は上げにくい、でも社会保険料は上げやすい。(ちなみに公的年金保険料は2017年度より固定(国民年金は16900円×改定率、厚生年金は被保険者負担9.15%)なので、ここで言う社会保険料とは健康保険・国民健康保険)

 結局は時世なのでしょうか。消費税一択に感じますが、正解は将来になってみないとわかりません。ただ、こういった発信が社会保障を考えるきっかけになってもらいたいという主旨で感想記事をこうしてまとめていますし、どちらかといえば財源の話は今後の改善に向けた応用編です。基礎情報を得ることのほうが圧倒的に大事なのは間違いありません。


 <次回> 講演録6.医療政策会議報告書案と社会保障政策に関する若干の捕捉…


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