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”人生100年時代の年金戦略”読みました。

 
 ”人生100年時代の年金戦略”(2018年11月21日 1版1刷)を読みました。

 190902_田村さん年金本

 著者は日本経済新聞社 編集委員兼紙面解説委員でCFPをお持ちの田村正之さん。
 お会いしたことはありませんが、共通の知り合いが多いようでfacebookやツイッターでお名前やお姿はよく拝見しますし、署名記事も多いので日経web版NIKKEI STYLEの記事もよく見かけます。

 この本は主にツイッターで個人投資家(いわゆるインデックス投資家)さんをはじめとして高評価をもって紹介されているのを目にすることが多かったため手に取りました。


 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。当然ながら引用部は私の独断と偏見によるものです。

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■おわりに

・長寿化時代の最大の支えが(中略)公的年金です(中略)あたかも頼りにならないものであるかのように思われているのは残念なことです。 p260


 この本には「はじめに」がなく「序章」から始まります。序章もなかなかのボリュームです。本の主旨をつかめるのがこの「おわりに」です。先にここから読んでいただきたいです。

 気がついたのですが、ファイナンシャルジャーナリスト竹川美奈子さんの最新著「50歳から始める!老後のお金の不安がなくなる本」と同じ編集者さんでした。竹川さんの最新著の感想記事は何とか2019年内にと思っています。


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■序章 「年金をいくらもらえるか」は自分の選択次第


 先に私の最大の主張を書いておきます。

 なぜここまで踏み込んだ内容の良い本であるにも関わらず、公的年金保険をはじめとする社会保障の大前提「就業者と非就業者」の比率のことに触れていないのか、です。
 田村さんが権丈善一先生のことを知らないわけがないと思います。全体の構成の関係だとしても、最も核心を除外して良いという方針は私には理解できません。むしろp52-53で高齢世代と現役世代の比率だけをさらっと取り上げるという、学術的に意味のないことがはっきりしている内容、報道各社がこれしか書かないよろしくない内容まで書いてしまっておられます。
 これまでに日本経済新聞をはじめ、報道各社において「就業者と非就業者」の比率のことに触れられた記事は私の知る限り出てきていません。今回のように良い意味で重箱の隅をつつくような公的年金保険の良い本なのに、これが書かれていないということは何か取り上げてはいけない口裏合わせが報道機関内にあるのではないかと感じてしまうほどです。せっかくなのにここは残念すぎます。

 ですので、この本1冊では公的年金保険について完結しません。次のリンクの本を前後は問いませんので必ず合わせて読む必要があります。
 ”ちょっと気になる社会保障 増補版”読みました。


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■第Ⅰ章 年金は人生のリスクに備えるお得な総合保険
1 30分でわかる公的年金
2 誤解だらけの年金財政


 章タイトルがすべてを示します。受け取り方など実務の話(第Ⅱ章)だけでなく、重要な背景・前提が書かれています。財政検証の内容は難しいとは思いますし、先週2019/8/27に最新(5年に1回)の財政検証が発表されているとはいえ、さまざまなデータも使われていて「ねんきん定期便」にも触れられており、一般の報道でここまで触れていることはありませんから多くの人に読んでもらいたい内容です。


 だからこそ「大きな世代間格差をどう考えるか」(p47)の項目はもったいないです。さらっとフォローする文章を入れておられますけれど、こういった書き方はやはり記者さんとして避けられないのでしょうか。
 マクロ経済スライドも受給者への課税強化も、いずれは今の現役世代にも跳ね返ってくる仕組みです。今の受給者(高齢者)世代との「世代間格差」(本文ママ)というものの解消とは言いにくいですし、不要な取り上げ方でしょう。

 「【コラム】たくさんの「黒歴史」、それでも大切な公的年金」(p60~)にある通り、確かに不安・不信なこともありました。ただ、過去を振り返れば公的年金だけに不安・不信があったのかという点でいうと、戦後のどのような仕組みにも良いことばかりだったというものは存在しないのではないでしょうか。(なので問題ないというつもりはありませんけれど、公的年金保険だけがいつも悪者にされるのは個人的にどうかと思うんです)

 また、これらにより「不安が高まり」「繰り上げ受給を選ぶ人が、2010年度に基礎年金の新規受給者の3割弱にも達してしまいました」とありますが、これはマイナス面を大きく報道した新聞・テレビに乗じて「年金は破綻するから早く受け取り始めないと損」と週刊誌などが自称専門家を使って大きく取り上げ、それをまっとうであるはずの大手報道機関も火消しに走るようなことをせず放置し、センセーショナルな見出しは使わなくともマイナス報道に乗り合わせるかのように記事で取り上げるという、やってはいけない流れを作ったことが大きいと私は感じます。これは報道機関で社会保障関連に携わっておられるなら、ご自身こそが恥ずべき歴史に感じておられる内容ではないでしょうか。
 なお、当時のあおった自称専門家の方々はもちろん今も反省されているわけでも謝罪があった訳でもありませんから罪深いのは間違いありません。


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■第Ⅱ章 公的年金、フル活用のための実践術
1 繰り下げ受給は老後の大きな安心材料
2 70歳まで厚生年金加入で働くと年金は大幅増
3 パート主婦は「壁」を越えよう
4 別れる前に知りたい離婚年金分割
5 遺族年金は家族の形で大差
6 障害年金の知識があなたを守る
7 自営業者 数多い年金増の選択肢
8 年金生活の手取りを増やす確定申告


 かゆいところに手が届く、とはこの章のためにあるような表現です。受け取り方・遺族年金・障害年金など、これだけまとまって読みやすく各項目や書かれている本は他に少ないと思います。私が知る限り存在しないです。
 受給前・受給時・受給後、いずれでも繰り返し確認することで自分や家族に適した選択ができるものと思います。すばらしくまとまっています。超オススメの内容です。


 ただし、次の点が特にひっかかりました。

 「実はファイナンシャルプランナー(FP)や社会保険労務士でも、年金を繰り下げると一律に加給年金は消えると思っている人は多く」(p108)
 この表現、必要だったのでしょうか。「実は~~多く」という表現は確かなデータを示してこそ使って良いものだと思っています。
 「年金を繰り下げると一律に加給年金は消えると思われた読者もいるかもしれませんが」などで十分ではないでしょうか。統計を取られたのでしょうか。身近なFPや社労士、本書に登場するFPや社労士の方々が詳しくないのでしょうか。難しい使い方だと思いました次第です。


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■第Ⅲ章 運用で堅実に増やす--個人型・企業型DC徹底活用
1 「長期・分散・低コスト」+「資産の置き場」が大切
2 現役時代に税金負担を減らしながら老後資金を作れる「イデコ」
3 企業型確定拠出年金--有効活用が老後を左右
4 NISAもできる限り併用


 シンプルに書かれています。将来の収入の土台となる公的年金保険、その上乗せの仕組みが解説された章です。田村さんならではのデータが随所に散りばめられた読みやすい内容です。
 
 田村さんは過去に次のような本も出しておられます。
 2015年3月 ”老後貧乏にならないためのお金の法則”読みました。
 2016年10月 ””はじめての確定拠出年金”読みました。

 これらから2年~3年半経過していますので、新しい仕組みや情報の解説が必要だったことはわかります。でも、個人的には2冊構成で分けてこの第Ⅲ章部分をもっと手厚くする2冊目を作られるか、第Ⅱ章までの公的年金保険に関する内容をもっと手厚くする方針で1冊だけにし、第Ⅲ章の内容は参考書籍を紹介するなど、どちらかが良かったのではないかと感じました。駆け足でたくさんの内容を取り上げておられ、一般の人には残念ながら消化不良ではないでしょうか。


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 最後に、もう1つだけ残念と感じたことを書いておきます。

 一貫して「もらう」「お得」という表現を使っておられるところです。公的な保険を通じて給付を受けるとき、給付の要件を満たしているからこそ受け取る権利のあるものなんです。「もらう」のではないんです。「受け取る」んです。
 読み進めやすさのために部分的に「もらう」が出てきてしまうのは致し方ないと思います。でも、この本では「受け取る」が出てくることのほうが希少です。ここの表現は絶対です。

 また、公的な保険ですから「損」とか「得」では無いんです。これも読み進めやすさのために一部使ってしまうのはどうしようもないのかもしれません。でも、せっかくここまできちんと「保険」であることを解説しておられる本なので、「得・お得・お得度」などの表現はやめてもらいたかったです。「得」している人がいるということは、どこかで「損」している人がいるのではないかと思わせてしまうと思うんです。公的年金保険は支え合いです。損得ではありません。


 最後の最後にもう一度書いておきます。
 この本はかゆいところに手が届く素晴らしい本です。特に第Ⅱ章は他の本に類似のない、公的年金保険の活用の見える良書です。でも、すべてが諸手を挙げて推薦できる内容ではありませんでしたので、こうして書きました。ご理解ください。

 

 こんな紹介記事もありました。
 「年金不安」に効くワクチン『人生100年時代の年金戦略』
 この経済記者さんのことは存じ上げませんが、この本を手に取るきっかけになりましたら幸いです。

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


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