FC2ブログ

社会保障教育のワークシート【発展】政府の役割と社会保障


 厚生労働省webサイトで紹介されている社会保障ワークシートを読みました。

 私は常々「投資教育・金融教育よりも社会保障教育を」と発信しています。難易度が高いとはいえ、義務教育の教科書に”ちょっと気になる社会保障 V3”が採用されてほしいと思うほどです(リンク先は増補版の感想記事)

 前回、第4回目の記事はこちら。
 社会保障教育のワークシート【発展】社会保障って何?


 7種類のワークシートを順に取り上げる第5回目です。私による勝手な引用だけでもぜひ参考になりましたら幸いです。主には「指導者向け活用マニュアル」の文章を紹介しています。

-----

■ワークシート【発展】政府の役割と社会保障

・政府の果たしている役割を大づかみで理解した上で、その中の「社会保障」をテーマに、幅広い議論が展開できるように作成 p1
・政府や社会保障制度の意義、税や社会保険料の意味・違いなどについて自ら考えるきっかけとなり、社会の一員としての自覚を身に付けることにつながれば、大きな成果であると考えられます p1


1.政府の役割

・政府が役割を果たしていくためには、財政の問題が不可分であることを理解させる p3
・政府が財政を通じて果たしている3つの機能 p3
 所得再分配・資源配分(公共財)・経済安定化


2.社会保障の役割

・(公的年金保険について)「若い世代の負担ではなく、最初から自分で積み立てて老後にもらえる仕組みにすればいい」という意見が出た場合は、これまで高齢世代を支えるために負担してきた現在の勤労世代は、自分の年金を積み立てている訳ではないので、その人たちが高齢世代になったときの年金の負担をどうするかという問題も出てくるなど、長期的な視点で年金をどう支えていくのか、「世代間の公平」の問題も含めて、国民みんなで考えることが必要ということを説明 p6


3.税や社会保険料について知ろう

・税に比べるとなじみが薄いと思われる「社会保険料」について、基本的知識を身につける p9


4.社会保険料と税の違いとは

・社会保険料と税の違いについて考えさせ、社会保障のサービスを行っていく上で、税と比べて社会保険の優れた特徴である「給付の権利性」について理解させる p11
・税の使途として、公平性・効率性を担保する観点から、給付に際して、所得制限や資産調査(ミーンズテスト)による受給者の限定が行われやすい。結果、社会福祉制度の利用に際して、恥辱感(スティグマ)が付きまとうこととなるため、制度を利用すべき人が利用を控える事態が発生しやすい p11


<政府の役割と社会保障に関するファクトシート = 正確な議論のために>

3. ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ

・社会保障は遠い将来のことではなく、一生を通じて深く関わっている p19
・持続可能な社会保障制度を構築するために、「社会保障と税の一体改革」が進められている。具体的には、年金、医療、介護など既存の仕組みにも手を加えつつ、子育て支援を中心とする若者世代への給付を手厚くすることや、高齢者にも応分の負担をしてもらうために税制や保険料、利用者負担のあり方を見直すなど、幅広い視点での改革が検討されている p19


4. 統計でみた平均的なライフサイクル

・例えば、年金などでは「世代間の不公平」として、現在の高齢者が過去に支払った保険料・給付の水準と、現在の現役世代が支払う保険料・給付の水準の違いを比較する議論があるが、その際は、年金制度による「社会的な扶養」の側面のみを見るのではなく、現在の高齢者の世代は、社会保障が充実していく前の「私的な扶養」によって、その当時の高齢者を支える役割を果たしてきていた側面にも留意が必要 p21

-----

 いやー、【発展】はすごいですね。

 公的年金保険の積立方式論破から、所得再分配・給付の権利性・ミーンズテスト・スティグマまで登場し、メディアでもまだまだ登場する公的年金保険の世代間不公平という的外れなあおりについての正しい理解まで解説があります。

 最終7回目の後に番外編として取り上げる予定だった内容に権丈先生のお名前が出てきますのでそこまで伏せておこうと思いましたけれど、今回の活用マニュアルからはひしひしと権丈先生の存在を感じさせられ、もうお名前を書かざるを得ません。同時に、すばらしい内容を高校で学べるように準備されているのだと改めて気づかされました。

 高校在学中にこの教材で学ぶことができている生徒は何割(何%)くらいいるのでしょうか…。勝手ながらそこまで高い比率とは思いにくいので、これらのテキストを使って大人こそ学ぶ必要があります。


 配布2枚目の「政府の役割と社会保障に関するファクトシート = 正確な議論のために」として「3.ライフサイクルでみた社会保障の給付と負担のイメージ」は第2回目「【基礎】身近な社会保障を学んでいく」と同じ資料が使われています。この資料、良いです。(高校の授業だと配布は白黒かもしれません。先生方におかれましてはこの資料はカラーでお願いしたいです)

 そして、「4. 統計でみた平均的なライフサイクル」も良い資料であり、たいせつな視点です。大正時代に「60歳で夫引退」という線引きがあったのかどうかはわかりませんが、イメージは大事です。時代が変わっているんです。

---

 注文をつけるとすれば次の4点です。

・配布版p1左側下「社会保障の役割」の資料で、あえて国民年金に限定しているのはなぜなのでしょうか。
 ここを国民年金に限定せず厚生年金も加えれば、被保険者の説明として「20~59歳の国民」に限定することなく、70歳までの会社員を入れることができるので、公的年金保険の被保険者は「現役世代」ではなく「就業者」のイメージを持ってもらいやすくなると感じました。

・配布版p1右側上「税や社会保険料について知ろう」の解説で、p9では「年金と医療という代表的な社会保険制度」とされている続きで、医療には「医療保険」と必ず「保険」が付けられています。反対に年金は「年金保険」「公的年金保険」とならず、すべて「年金」だけです。第4回目「【発展】社会保障って何?」の配布資料と同じく他の社会保険との一覧表であればせめて「年金保険」と記載をお願いしたいです。保険なんです。

・統計でみた平均的なライフサイクル(配布版p2右側下)
 1920年・1961年・2009年の例について、女性の年齢を基準にした比較資料を見てみたいと思いました。自分で作ろうかと思いましたが、excelでもややこしそうでとりあえず諦めました(すみません

・毎年とは言いませんが、数年に1回はデータを更新してもらいたいです。国の一般会計や社会保障給付費の全体像は2012年度、公的年金保険の制度改革として挙げられいる情報が2004年でした。

---

 第5回目として取り上げましたのは社会保障教育ワークシート【発展】社会保障って何?です。

 私は義務教育におけるまっとうな社会保障教育が強く必要だというスタンスです。

 <次回> 社会保障ワークシート【発展】公的医療保険って何だろう?


コメント

コメントの投稿

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)