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”35歳から創る自分の年金”読みました


 ”35歳から創る自分の年金”(2020年3月17日 1版1刷)を読みました。

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 著者は大和総研金融調査部研究員の是枝 俊悟(これえだ しゅうご)氏。
 社会保障や金融関連の専門家の方々から発信される情報からよく是枝氏のレポートを目にします。直接の面識はありませんが、おそらく共通の知り合いが多そうで、しかもタイトルの通り30代中盤でこんなに重厚な本を出しておられてすごい(語彙力なくてすみません…)です。

 この本を手に取ろうと思ったきっかけは著者と権丈先生の対談記事です。

 いつも通り、アウトプットとしていくつかポイントを引用させていただいての所感を書くスタイルです。

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■はじめに
■おわりに

・35歳前後の同世代の皆様が、公的年金制度の現在と未来の姿について見通すことができ、それを踏まえて、少しでも生涯賃金を増やすために今後の働き方を見直したり、公的年金にプラスするための資産形成を行ったりといった、前向きな行動を考えられるようになれば p006


 本の意図を理解するのが最初の大事な一歩です。

 結論を先に書きます。「35歳前後の同世代の皆様」が読むには難易度が正直かなり高い内容です。
 ものすごく詳細に書かれている本です。計247ページで文字も少し小さく、ボリューム満点です。おそらく一般の人でこれをきちんと途中省略せずに最後まで理解して読み込める人は少ないと思います。最低限の知識があって細かな数字にもしっかり興味がある人には良い本だと感じました。


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■第1章 私たちにも「公的年金」は支払われる

・そもそも「公的年金」は何のためにあるのか p018~
・少子高齢化でも年金制度が維持される仕組み p033~


 この第1章は誰でも読みやすいですし、たくさんの人に読んでもらいたいです。基礎知識・背景が書かれています。
 公的年金の給付を受けることをきちんと「受け取る」としておられ、「もらう」という表現はいくつか項目タイトルに使われている程度だったのも好印象です。


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■第2章 「自分の年金」の金額はどのようにして決まるのか

・夫婦単位の「生涯賃金」でみるとまだまだ上がある p057~
・年金はもらうものではなく、「創る」もの p094~


 たくさんのシミュレーションが掲載されています。イメージをつかむためには大事なことなのだと思いますが、個人的には取り扱いが難しいです。
 日々相談をお受けしている立場から言えば、多くの人の関心は「で、自分はいくら受け取れるの?」です。平均や傾向の情報は充実していなくてもそれほど問題ではないんです。この本が専門家向けであればこの内容で良いんです。なぜこんなことを書いているかと言えば、冒頭に書きました通り「35歳前後の同世代の皆様」に向けた本というところが引っかかる難易度です。


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■第3章 「共働き」で創る自分たちの年金

・「35歳」、今なら共働きを続けられる p115~


 第2章から同じ設定の使われている「目標シナリオ」「国力維持シナリオ」「衰退シナリオ」という3つの区分。もちろん1つずつ条件も丁寧に説明されています。
 ただ、これはいつも私が言うことなのですけれど、特に悲観的な衰退シナリオをしっかり語る人には仮にそんな悲観的な数字が今後長きにわたって続いてしまった場合の公的年金以外の社会の状況がどんなふうになっているのかの例を示してほしいということなんです。もちろんこの条件は国が出している1つです。でも、経済成長率マイナス0.5%が2040年まで続く条件で現実的ではありません。良い条件・無難な条件だけだと報道がうるさいので致し方なく作られているように感じるほどです。
 「衰退シナリオ」が達成してしまった場合、どんな将来の社会になっているのか私にはイメージできないんです。どなたかお願いしたいです。


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■第4章 多様な生き方、ライフスタイルと年金

・現役時代の保障は遺族年金と生命保険の組み合わせで p151~
・ケアは専業主婦が担うものから、プロによる効率的な供給へ p173~


 同年代に向けてさまざまな設定が取り上げられています。生涯独身・配偶者との死別・若いときの死亡・繰上受給と繰下げ受給・自営業者(フリーランス)・専業主婦のパターンです。細かいところまで行き届いた内容です。


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■第5章 豊かな人生を過ごすための資産運用との付き合い方

・政府が発表している所得代替率とは何か? p184~
・老後のためにどのくらい積み立てたらいいの? p212~


 「所得代替率」は正しく知っておくほうが報道に振り回されにくいです。
 ご参考までに過去ツイートです。

 そして「必要な貯蓄率」という「大胆な仮定を置いた上でざっくりとした目安を示したい」、日々相談をお受けしている立場としてこの情報を鵜呑みにするのは本当に危険とお伝えしたいです。前提を理解して結論を出せる(珍しい)人は惑わされないと思いますけれど…


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■第6章 「35歳」は年金改革をどうみるべきか

・マクロ経済スライドの無条件適用を p222~
・厚生年金に入っていない給与所得者が1260万人いる p224~


 ほとんどの人は「マクロ経済スライド」と聞いても何のことかわからないと思います。この本ではp043に詳しい説明が書かれています。私がわかりやすいと思っている表現は「公的年金受給者から孫・ひ孫への仕送り」です。皆さま、よろしくお願いいたします。

 そして最後に超重要な「適用拡大」にも触れられています。詳しくはぜひこちらもご参照ください。
 <過去参照記事> 適用拡大は「一石七鳥」の年金政策 / 第15回年金部会「社会保障審議会年金部会における議論の整理」を巡って


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 公的年金保険について一般的に読みやすくわかりやすい本って無いんですよね…
 社会保障も含めた概念でいえば絶対的に「ちょっと気になる社会保障」です。

 他には手前味噌ながらこのブログのカテゴリー「ねんきん」でしょうか。でも体系立てた構成・並びにはしていませんのでわかりにくいですよね…今回で130記事になりましたのでまとめ記事を作っても良いかもですね!


 広く皆さんにお勧めしたい!と言いにくい難易度の本です。とはいえ専門家の端くれとして間違いなく言えるのは、是枝氏から発信される公的年金保険関連の情報は信頼性が高いということです。

 

 長文をお読みくださり、ありがとうございました。


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